高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

400年ぶりの木星と土星の接近が問う「決意と覚悟」

高城未来研究所【Future Report】Vol.496(2020年12月18日発行)より

今週は、長野県諏訪市にいます。

日本全国真冬並みと言われるほど気温が下り、降雪も多い今週ですが、諏訪も氷点下まで下がり、雪がチラつく日がありました。
いよいよ本格的な冬の到来を感じます。

諏訪は、かつて「東洋のスイス」と呼ばれるほど、時計やレンズなど精密光学機を作る生産地として知られていました。
この地から世界へ出荷された腕時計は、スイス時計産業の6割を廃業に追い込みましたが、人件費の高騰から80年代に生産工場を海外へ移したことから転機を迎えます。
その後、少子化と相俟って、徐々に地域一帯の産業が衰退。
いまも一部の精密な時計生産は続けられていますが、当時の面影は、時計ミュージアムあたりでしか見ることができません。

また、「古事記」によれば、出雲国譲りに反対した大国主の息子タケミナカタが、天津国の使者タケミカヅチとの力比べに敗れ、隠遁した地が諏訪だと言われています。
近年、最古級の遺跡が諏訪湖を見おろす丘陵先端から、続々と発掘。
祭祀のあとなどから、一帯は古くから聖なる地だったと推察されています。

さて、来週月曜は、いよいよ冬至です。
このメールマガジンで何度かお伝えしましたように、僕は太古からの慣わしに従い、冬至を新年として捉えています。

何年かに一度、冬至の朝に奈良の三輪山まで初日の出を拝みに出向きますが、この日が一年のうちでもっとも昼(日の出から日没まで)の時間が短く、太陽が生まれ変わる日と言われており、暦法上でも1年間の干支が切り替わる日でもあります。

天文や二十四節気の平気法では冬至を1年の起点とし、実はクリスマスも、イラン発祥のミトラ教の冬至祭儀や、ドイツ北欧のキリスト教以前のゲルマン人の冬至祭がキリスト教と混淆してできたものです。
サンタクロースの衣装が赤くなったのは、かつてのコカコーラのキャンペーンだったことは何度かお話ししましたが、同じように、キリストの生誕祭もローマ時代の為政者によって書き換えられた暦に過ぎません。
本来、クリスマスとは冬至祭なのです。

実は今年の冬至は、例年と大きく異なります。
冬は都会でも星が見えやすいことからお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、太陽系の2つの明るい惑星、木星と土星がすぐそばに位置しています。
木星と土星がここまで近づいて見えるのはおよそ400年ぶりで、天文用語で「グレート・コンジャンクション」と呼ばれる現象が起きています。

木星は12年で太陽を一周し、土星は30年かけて一周することから、木星と土星は20年に一度接近することになるわけですが、占星術的には、拡大、開放する力を象徴する木星と、責任や義務、試練を課す土星という対極的な惑星が数十年に一度会合するという相反するふたつの星が並ぶことから、社会が混沌とした時代に突入する機運のはじまりとして知られます。
20年前に起きた「グレート・コンジャンクション」では、米国と中東関係の悪化が如実に現れ、結果、米国同時多発テロへと連なり、その後もイスラムとの軋轢は続いています。

僕は普段、まったく占星術に興味がないことから滅多に気にすることはありませんが、木星と土星がここまで接近するのは、1623年以来。
当時、日本ではキリスト教国(スペインとポルトガル)の人の来航が盛んになった頃で、その後、200年以上の長い鎖国がはじまる前夜でもありました。

古い交流の分断と、あたらしい社会システムの到来。
この交差点の真っ只中では、誰もが行き先を見失い、混乱するものです。

現在、多くの人たちが使うカレンダーが、1日24時間年間365日等、天空のスケジュールに沿っているのは言うまでもありませんが、もしそこに、なんらかの巨大なシナリオのような青写真も記載されているとしたら、どうでしょう?

今年の冬至を取り巻く星並びは、かなり特別です。
機会ありましたら、ぜひ、サンセットからはじまる木星と土星の会合をご覧ください。
肉眼で見えます!

蜜月だった人やモノや仕事や環境と別れ、いままで「圏外」だと思っていた「なにか」と出会うことができるのか?

天空はいま、その「決意と覚悟」を問いているのだろう、と考える今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.496 2020年12月18日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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