世の中は、他人の足を引っ張る人であふれている。それは、自分が努力するよりも、他人の邪魔をしたほうが、簡単に競争に勝てると考えているからだ。
『驚く力 矛盾に満ちた世界を生き抜くための心の技法』(名越康文 著)より
「人生は長いようで短い」と言いますが、ひとつの道を何十年も掘り下げて学び、成長を続けている人と、そうでない人とでは、五〇歳、六〇歳と年齢を重ねたときには、人生の豊かさや幸福の質に、大きな差が生じてしまいます。
では、そうした継続的な学びを支える「絶え間ない情熱」は、どこから生まれてくるのでしょうか? 受験勉強や資格試験のために一生懸命勉強した人でも、受験が終わり、学校を卒業すると「新しいことを学ぼう」という情熱がなくなってしまうことも多いようです。
学校教育の場では一般的に、「受験」や「試験」を最終的な目標やゴールに設定しています。こうした学びの最大の問題は、「動機づけが弱い」ということであると私は考えています。
極端に言えば、今の学校制度のなかで「学びの意欲」を邪魔しようと思えば、たった一言で十分なんです。
それは「お前、そんなに勉強してどうすんの?」という一言です。

イラスト:伊藤美樹
皆さんも、小学校のころを思い起こしてみてください。夏休みの宿題を真面目にやろうかな、と思っていると必ず、そうやって茶化してくるクラスメイトがいたはずです。
それは当然なんです。なぜなら、学校の勉強で成績を上げるには、自分が努力するより、他人の意欲をなえさせるほうが一〇〇倍簡単だから。
「競争」で勝つ一番簡単な方法は、他人の足を引っ張ることです。
だからこそ、こういった足の引っ張りあいが、学校だけではなく、日本社会全体で起きているのだと思います。
社会全体が「競争」に軸足を置いている以上、自分が努力するより、他人の足を引っ張ったほうが楽で合理的だと考えるのは当然のことです。これは実は、今の日本社会で生じているさまざまな問題の根本にある、構造的な問題ではないかと私は考えます。
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