名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メルマガ『生きるための対話』より

「親しみの空気」のない論争は不毛です

言葉には射程距離がある

言葉には射程距離があります。

言葉を発する人がそれを意識しているかどうかとは関係なく、言葉にはそれが「届く」距離がある。理屈っぽくいうなら、言葉は辞書的な意味だけではなく、それを発した人が持つ歴史的、心理的、あるいは関係性に基づいた枠組によって規定されるものだということですね。

これは言葉が持っている当たり前の性質なのに、実践的には、しばしば無視されています。そして、それによって失われているものは途方もなく大きいと僕は考えています。

言葉の射程距離は、その言葉を取り巻く枠組みを何となく共有できるかどうかによって決まります。それを共有できなくなった瞬間、言葉はありとあらゆる形で誤読されるようになります。

そして、非常に厄介なことなんですが、この「射程距離」は、発信者の努力だけで広げることはできません。言葉の射程距離は、常にその言葉を受け取る人とともに作りだすしかない。もちろん、それを届かせようという努力とか、力量が発信者に求められるのは当然です。しかしより大切なことは、それが発信され、受信される「場」の力なんですね。それが整っていないことには、言葉は届かない。

それはもう、絶望的に届かないんです。

1 2 3
名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

その他の記事

嘘のこと〜自分の中の「真実」が多数のリアリティによってひっくり返されるとき(川端裕人)
思考実験のための『もし、トランプさんが米大統領になったら』(やまもといちろう)
怒って相手から嫌われることのメリット(岩崎夏海)
ピクサーにみる「いま、物語を紡ぐ」ための第3の道(岩崎夏海)
「キモズム」を超えていく(西田宗千佳)
【動画】不可能!? 目の前に振り下ろされる刀を一瞬でかわす武術家の技(甲野善紀)
経営情報グループ『漆黒と灯火』というサロンらしきものを始めることにしました。(やまもといちろう)
ナショナリズムの現在ーー〈ネトウヨ〉化する日本と東アジアの未来(宇野常寛)
20代のうちは「借金してでも自分に先行投資する」ほうがいい?(家入一真)
「道具としての友人」にこそ、友情は生まれる(名越康文)
世界60か国で定額通信を実現する「Skyroam Hotspot」を試す(西田宗千佳)
ドラッカーはなぜ『イノベーションと企業家精神』を書いたか(岩崎夏海)
『悲劇の誕生』ニーチェ著(茂木健一郎)
フレディー・マーキュリー生誕の地で南の島々の音楽と身体性の関係を考える(高城剛)
「高倉健の死」で日本が失ったもの(平川克美×小田嶋隆)
名越康文のメールマガジン
「生きるための対話(dialogue)」

[料金(税込)] 540円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)
【DVD】軸・リズム・姿勢で必ず上達する究極の卓球理論ARP
「今のままで上達できますか?」元世界選手権者が教える、新しい卓球理論!

ページのトップへ