やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

本当に夏解散? 改造先にやって秋解散? なぼんやりした政局


 岸田文雄政権の支持率が上がっていて、サミット前に景気のいい話ですねってのはあるんですよ。前回から統一地方選挙前半後半を挟んで支持率が多い媒体で8%も上がった背景には、細やかなことは全部置いておいてウクライナ電撃訪問で世界的な話題になるタイミングであったことと、4勝1敗に終わった統一地方選挙中の衆参補選の結果で煽られたものはあるかと思います。

 で、そぞろ各政党も予備的な調査に乗り出しておこうかというモードになってきました。

 というのも、ご存知の通り衆議院は10増10減で区割り変更などあり、投票所に張り付いていた票の流れを出口調査の数字から仕込み直して得票予測や地盤調査をする必要が出ているためです。選挙区内はこまごまと歩いているはずの議員・候補者や秘書の皆さんも割と忘れている穴が放置されていたりして、その意味では余裕のあるうちに区割り変更後の我が区の現状は観ておこうというのも当然と言えば当然でしょうか。

 資金集めも外遊もいろいろできるうちにやっておこうということで、本当に日程繰りの勝負になりつつあるのが現状です。さぼりは許されませんが、今回選挙に先立って、国民の関心事とは何か、争点になりそうな事柄は何で、国民はどう考えているのかといったところに調査の力点が置かれるのも、新しく選挙区に組み込まれた投票箱周辺の有権者が何に関心を持ち、街頭演説などでどの順番で何を言うかに凄く影響されるからに他なりません。

 国政選挙では特に、2000年代後半から従前の「景気・雇用」から「年金・社会保障」が有権者の最大の争点になったのも、もちろん高齢化もあるんですが、そういう高齢者をご家族に抱える若い働き手が自身の負担軽減に資する政策を求める傾向が強いからでしょう。

 他方で、昨今岸田文雄政権が打ち出した異次元の少子化対策に表れているように、正直調査方からすれば少子化対策は票になりません。しかし、未来の日本をどういう国家にし、社会をどう導いていくかが政治であると考えた場合、岸田さんが「このままではいけない」と不退転の覚悟を抱いたのもまたですよねー感のあるところです。なんといっても周囲が総じて反対していた安倍晋三さんの国葬を強引でも取りに行って何とか乗り切り、さらに外務省は要らねえとまで珍しくブチ切れて強行したウクライナ訪問で下落傾向だった支持率を取り戻したという自負を考えると、ちょっと普通とは変わった岸田さんの「こだわり」の部分は「えっ、大将そこにこだわっていたんですか」と思う部分はあるものの、岸田さん特有の、あるいは安倍ちゃん譲りの豪運もあってうまく帳尻が合ってしまう面はあるのではないかとも思うのです。

 裏を返すと、個別の経済政策については岸田さんの得意不得意から言えば不得意に該当するものであって、残念ながら現行は充分な経済対策を岸田さんが主導して打てて、未来に渡って日本の国府が増えるような施策で明るい感じになっているかというとそうでもありません。もちろん、その背景には財務省出身でセンターとしてまずまず以上の活躍をしてきた木原誠二さんがイマイチ信頼を失い、変わって首席総理秘書官として幅広に対応する嶋田隆さんと栗生副とのセットでできる範囲のことはやって、それ以外のことは雑になって税金つかみ取り的なアプローチにならざるを得ない面はあるのかなとも思います。

 調査でも、個別の施策に対する評価という点では有権者はあまり岸田政権を評価しているように見えないのですが(特に政策推進力がある政権とは国民はあまりみていない)、政権に対する安定度は、最長を誇った安倍晋三政権のいかなる期間よりも高いです。特に「他に良い人がいないから」と回答する有権者が消極的な岸田政権支持の姿勢のままずっと推移していくと、このぼんやりとしたまあ生きてるし不満もそうないかなっていう層がそのまま岸田さんに投票することを願って解散まですることになるのでしょう。

 特に少子化対策は子育て世帯にしか響かない政策であり、ここを充実させるための財源として増税するか国債出すか他に回っている予算を削るかしないとできないわけですから、子育てに関心のない層からすれば不人気政策になるのも当然のことです。ただ、ここをどうにかしてこなかったから、それなりに少子化対策の議論はエンゼルプランのころから頑張ってきていたのになにひとつ出生率の改善がなされなかったという反省を政治はツケとして払わされていることになりますので、ここで踏ん張ってどうにかしないといけないよねってことになります。

 また、ネットでは大きな騒ぎになっているLGBT関連は、案の定というか、どの調査でも「関心がない」とか「良く分からない」の回答が圧倒的で、極めてどうでもいい政策ジャンルになっています。これ、アメリカや欧州の政策調査事情からすると日本はダントツに低い数値になっていると思うのですが、同じ傾向として、気候温暖化やジェンダー問題といったメディアや広告代理店が好みそうな話題ほど、国民のど真ん中からするとどうでもいい議論になっているのはまちがいありません。

 一方、徐々にではありますが、関心事として有権者の10%の大台に乗りつつあるのが憲法改正問題で、これは相関として「外交・安全保障」という大カテゴリーに関心のある人の増加と共に憲法、特に9条問題について少しでも、国民なりに考える人が増えてきたことの証左とも言えます。このまま増えていくのかどうかは分かりませんが、全年齢において少しずつ政策課題として関心を持つ人が増えてきているというのは特徴的で、あと15年ぐらいすると議論として普通に論争になるぐらいのテーマになるのかもしれません。

 政治もマーケティングであり、自分とこの選挙区の動向を見ながら自分の名前を書いた紙を投票箱に入れてくれる人を増やすという行動を促すために、所属政党や知名度の確保にどう腐心しながら信頼を勝ち取っていくのかは大事なのは間違いありません。そう考えると、安倍政権や麻生政権でうまく運ばなかった物事が、いったんは死に体一歩手前まで来ていたはずの岸田政権でそこそここなせるようになり、安倍ちゃんに続く国際的な政治家の一人として名前を出して日本を代表できるところまで来てしまったのは、これは岸田さんの顔がいいからなんでしょうか。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.404 なんだかんだと好調な岸田政権の今後を占いつつ、AIとクリエイティブ界隈の関係やジャニーズ事務所問題の落とし所を考えてみる回
2023年5月3日発行号 目次
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【0. 序文】本当に夏解散? 改造先にやって秋解散? なぼんやりした政局
【1. インシデント1】AIとクリエイティブ界隈の微妙な関係
【2. インシデント2】「ジャニーズ事務所問題」はどこまでジャニー喜多川さんの小児男児性愛に引っ張られるべきか
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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