やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

「コロナバブル相場の終わり」かどうか分からん投資家の悩み


 一本調子で相場がずっと上がって、日本もアメリカも結構な狂乱状態になっていたんですよね。日本では30年ぶりに日経平均株価が3万円に乗せ、1兆円の赤字で将来を不安視されていたソフトバンクグループも資産の膨れ上がりで3兆円の黒字に転換を見せて、凄く心配されたみずほFGごと飛んで行ってしまう懸念も薄れました。

 一方で、楽観相場の世界で言うならば「コロナは先が見えた」感じです。不安だけど、どうもコロナウイルスの拡大で経済が低迷するのはここまでのようだ、ということで、買い上げられてきた心理面と、同じく各国政府が財政出動を進めることでジャブジャブのマネーが供給されて仮想通貨や都市部商業地のような「限りあるもの」に人気が集まって、価格を押し上げ、資産バブルのような情勢となったわけであります。

 そして、どうも本当に一服しそうだとなれば、一気に「じゃあ、足元の経済の本当のところは?」「各国政府の財務上の問題は?」というところになります。ま、いつか来た道なのですが、正気に返るときは相場の下落と共に市場参加者が一斉に正気に戻るわけでありまして、これはもうどうしようもないなと思うわけです。

 コロナによって目減りした分が順調に回復すれば、世界経済はきっと元の活気を取り戻す、と楽観的に考える投資家も、その目減りした分を改めてみたときに、一定の割合が政府の財政出動によって穴埋めされていて、いずれ各国がその調整のために一斉に増税する恐れもありますよね、となれば、ちょっとみんな浮かれているうちに利確しておこうかという局面がきても不思議ではないのです。

 それがいまなのかどうか、誰にも分からないのですが、いずれ来る一定の調整が、大幅な調整となり、暴落となり、通貨の不信認と共に信用不安へと落ちていく局面があるとするならば、それはいつかという話です。コロナ期間中に巣ごもり需要で有利と目され買われた銘柄が、実は経済合理性の観点から言えばすでに成長の限界まで伸び切っていたと悟った株主から売りに回り始めるタイミングこそが恐怖なのであります。

 一方で、コロナのお陰で進んだもの、合理的になったものもあり、やはり日本社会で言えば通勤通学でみんな苦労して片道一時間かけて通っているような不動産の状況は不合理じゃないかということで、リモートワークのできる付加価値の高い労働者、ビジネスマンほど住みやすさを求めて郊外に物件を求めるようになりました。某ぷんハウスのような、犬を出して郊外に住もうというフレーズがヒットするのは、主に相応の所得と貯蓄のある、妻帯者や子どもの教育に関心を持つ層であって、経済的に一定のパワーを持つ層であることは言うまでもありません。その結果が郊外に狭小住宅を買うような不始末になっては目も当てられないのですが、ただ、湘南逗子方面や軽井沢、幕張といった方面に所得の高い層が移り住み始めている一方、脱子育て世帯やパワーカップルの超都心回帰現象(千代田、中央あるいは湾岸地域)は揺るぎないものになりました。来期早々、横浜周辺がどうなるか次第で、コロナが終わってもずっとこの傾向で行くのかが見えるようになっていくでしょう。

 つまりは、コロナ禍での相場上昇は画一的であって、それこそぴかぴかの国際優良銘柄だろうが微妙な事業で食いつないでいるリミックスポイントもみんな上がっていくわけなんですが、ここから先はかなり明確な業績や事業領域を見た上での選別が進む局面になっていくのではないかと思います。上がるにせよ落ちるにせよ、優勝劣敗が起き、持ちこたえられない企業とまだまだ株価的に上を目指す企業のコントラストが発生し、一方で、全体の基調としては落ち着いた、やや下げ気味で最適化・調整を図るような相場が3月下旬に向けて進んでいくのかなと思います。

 そして、私個人の関心でもある円相場も良く分かりません。質への逃避が進めば円高になるのかなと待ち構えていたら、先にアメリカで金利が上がってしまいドルが高くなっていきました。良かった、まだ仕込んでなくて。しかし米国債がお昼に消化不良で金利が上がるなんて、ちょっと想像もしておりませんでした。あるとしても、もっと先だろうと。

 いつまでもこんな相場は続かないという気持ちで、とはいえグリップ力のない投資家でありたくないとかいうちっぽけな恐怖感が悩みの根源だったわけですけれども、蓋を開けてみれば前例のあまりない何だか良く分からない相場になっちゃったよということで、いまさらのように第一次世界大戦前夜の経済状況などを見返して何かの参考にしようと頑張っておるわけであります。

 米中対立によるブロック経済化の嚆矢として、アメリカも同盟国内でのサプライチェーンの強化と米欧関係の劇的な改善を企図して動き始めた一方、我が国からすれば中華との関係をいまさら悪化させるわけにもいかず、この辺の綱引きをどう考えるべきなのか悩みばかりが先に立つ昨今です。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.325 コロナバブル相場の見極めに悩みつつ、このところのEVビジネス動向やセキュリティ周りがとても不安なマイナンバー政策について触れる回
2021年2月27日発行号 目次
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【0. 序文】「コロナバブル相場の終わり」かどうか分からん投資家の悩み
【1. インシデント1】相変わらず微妙な雰囲気の電気自動車ビジネス界隈
【2. インシデント2】マイナンバー利活用につきまとうセキュリティ問題
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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