※高城未来研究所【Future Report】Vol.502(2021年1月29日発行)より
今週も、東京にいます。
移動がままならないこの機に、先週から数週間に渡って「あたらしい領域」へ踏み込んでいきたいと思います。
今週は、まず「あたらしい領域」を俯瞰的に理解するために、また、行き先を迷わないために必要な「地図編」をお届けします。
二十世紀初頭、スイスの精神科医で心理学者だったカール・グスタフ・ユングは、無意識の多重構造を明らかにしようとしました。
ユングの地図によれば、意識の頂点に自我があり、その下に「個人的無意識」と「普遍的無意識」の二層構造の無意識があると説きます。
僕は、この構造をコンピュータやスマートフォンのなかにあるデータ(意識)と、クラウドのなかにある個人領域(個人的無意識)、そして同じくクラウドのなかにある共有領域(普遍的無意識)と捉えています。
また、仏教の唯識学では、人間の意識が8段階に分けられており、最初の5段階が、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚と言われる「五感」(前五識)に相当し、次の第6段が、「意識」と考えらました。
そして、第7段が「末那識」(まなしき)です。
「末那識」(サンスクリット語:manas)は、眼、耳、鼻、舌、身、意という六つの識の背後で働く潜在意識のことで、ここを突破できなければ「空」(つまり、ゾーン)に到達することができない関所のような場所でもあります。
これは、ユングの言うところの「個人的無意識」にあたると僕は考えます。
しかし、人はあらゆることに執着し、誰かと比較したり怒ったりしながら、処理できないほどに押し寄せる情報の波に負けて「パターン」を「末那識」に自分で焼き込んでしまい、抜け出せなくなってしまいます。
これにより、自分でも気が付かない同じミスを何度も繰り返してしまうような「バグ」が生じる場所でもあります。
そして、第8段が、「阿頼耶識」(あらやしき)です。
「阿頼耶識」は、個人存在の根本にある、通常は意識されることのない識(=知覚)で、8つの識の最深層に位置すると考えられています。
「阿頼耶」(サンスクリット語:alaya)とは「倉庫」という意味を持ち、そこには今生で自分が体験したことだけでなく、過去世や先祖、さらには前世も含めたあらゆる記憶が「倉庫」、つまりは「共有クラウド」に保存されています。
これがユングが言う「普遍的無意識」にあたり、ここに入ることをゾーンと言うのです。
アメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイは、ゾーンに入ることを「フロー体験」と呼びました。
仏教では、この全体図を唯識の「八識説」に表しています(https://bit.ly/3cfk5PF)。
この最深層に位置する「阿頼耶識」、ユングが言う「普遍的無意識」、ミハイ・チクセントミハイのいう「フロー体験」、僕がいうところの「クラウドのなかにある共有領域」へのアクセス、つまり、「あたらしい領域」に入っていままでにない感覚を得るのが、今回の旅路となります。
日本では孫悟空の活躍で有名な「西遊記」に出てくる三蔵法師(玄奘三蔵)が、7世紀に「唯識」を命懸けで天竺(インド)から中国に持って帰ってきました。
その後、奈良時代に「唯識」が、日本へと伝わります。
ではいったい、この「あたらしい領域」にアクセスできるようになると、どんな変化が起きるのでしょうか?
それは、混迷のなかにあっても、その人にとっての最適解を得られ、二度と迷うことがなくなります。
そして、多くのアスリートが話すように、時間を超え、多幸感を感じるようになるのです。
次週、あたらしい内宇宙への冒険「実践編」に続きます。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.502 2021年1月29日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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