名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メルマガ『生きるための対話』より

高いエステはなぜ痛いのか――刺激と退屈の心理学

高いエステはなぜ痛いのか

以前、とある人から「10万円以上のエステと10万円以下のエステをはっきり分けるのは「痛み」である」という話を聞いたことがあります。

「高いエステほど痛い」

これは、心理学的にも、非常に興味深い話だと思いました。

もちろん、痛いだけで効果がなければお客さんもつかないわけですが、高い料金を取って、お客さんに納得してもらうには、「痛み」があったほうがいいというのは、なるほどな、と思ったんです。

どういうことでしょうか? それは僕らがみんな「刺激依存症」であることと、関係しています。

傷つきやすさには個人差がある

僕らはみんな、本音のところでは「世界でいちばん傷つきやすいのは自分だ」と思っています。でも一方で、「傷つきやすさには個人差がある」というのもまた、実感でしょう。傷つくことによってすごく苦しむ人と、そこからぱっと明るく気分を切り替えることができる人がいる。

僕らの心はそもそも、何によって傷つくのでしょう。人間関係を筆頭に、いろんなことが思い浮かぶと思いますが、突き詰めると僕らは「刺激」によって傷ついているということがわかります。

刺激があるからこそ、僕らは辛かったり、悲しかったりする。もちろん、うれしかったり、楽しかったりすることもある。しかしいずれにしても僕らの心は常に、刺激によって動かされている。

問題なのは、「それがよい刺激なのか悪い刺激なのか」ということとはまったく無関係に、僕らの心は「刺激」を求めるということです。もっといえば、体や心に悪い刺激だとわかりきっていても、まったく刺激がない状態よりは、刺激があるほうを選択してしまいがちなんです。

1 2 3 4 5
名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学、龍谷大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:現:大阪精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『「鬼滅の刃」が教えてくれた 傷ついたまま生きるためのヒント』(宝島社)、『SOLOTIME~ひとりぼっちこそが最強の生存戦略である』(夜間飛行)『【新版】自分を支える心の技法』(小学館新書)『驚く力』(夜間飛行)ほか多数。 「THE BIRDIC BAND」として音楽活動にも精力的に活動中。YouTubeチャンネル「名越康文シークレットトークYouTube分室」も好評。チャンネル登録12万人。https://www.youtube.com/c/nakoshiyasufumiTVsecrettalk 夜間飛行より、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

その他の記事

古い日本を感じる夏のホーリーウィークを満喫する(高城剛)
『冷え取りごはん うるおいごはん』で養生しよう(若林理砂)
ヒトの進化と食事の関係(高城剛)
TPPで日本の著作権法はどう変わる?――保護期間延長、非親告罪化、匂いや音の特許まで(津田大介)
週刊金融日記 第313号【カード自作とSpaced Repetitionによるパワフルな暗記メソッド、トランプさんに振り回される世界経済他】(藤沢数希)
安倍三選と野党支持低迷時代の思考法(やまもといちろう)
人も社会も「失敗」を活かしてこそサバイブできる(岩崎夏海)
2022年夏、私的なベスト・ヘッドフォン(高城剛)
新陳代謝が良い街ならではの京都の魅力(高城剛)
四季折々に最先端の施術やサプリメントを自分で選ぶ時代(高城剛)
インドの聖地に見る寛容さと格差の現実(高城剛)
物議を醸す電波法改正、実際のところ(小寺信良)
ファミリーマート「お母さん食堂」への言葉狩り事案について(やまもといちろう)
飲食業はその国の社会の縮図(高城剛)
ラジオを再発明? ラジオ局が仕掛けるラジオ(小寺信良)
名越康文のメールマガジン
「生きるための対話(dialogue)」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定)
【DVD】軸・リズム・姿勢で必ず上達する究極の卓球理論ARP
「今のままで上達できますか?」元世界選手権者が教える、新しい卓球理論!

ページのトップへ