名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メルマガ『生きるための対話』より

高いエステはなぜ痛いのか――刺激と退屈の心理学

高いエステはなぜ痛いのか

「高いエステは痛い」理由は、そうじゃないと、お客さんが納得しない、満足しないからだと思います。

おそらく、強い刺激を受けているとき、僕らの心はものすごく生きている「実感」を覚えるのでしょう。エステの場合でいえば、痛ければ痛いほど「納得の強度」は上がっていく。刺激が強ければ強いほど、生きる実感を覚えるんです。

だから、針を刺すとか、しみるとか、刺激が強いエステのほうが、高い料金を取っても納得してもらいやすいのでしょう。

しかし問題は、そうやって刺激によって得られた「生きる実感」が本物かどうかということです。残念ながら、「単に心が刺激に振り回されているだけ」という可能性は高いですよね。

本当は、そんな強い刺激によって振り回されていない時のほうが、僕らは繊細に物事を感じ取ることができるし、何事においても高いパフォーマンスを発揮できるはずです。しかし僕らはついつい、より強い刺激を求めてしまう。

僕らが落ち込んだり、舞い上がって何か失敗をしでかしているときには、たいてい強い刺激によって心が揺さぶられているときです。にもかかわらず、僕らは強い刺激を受けることを好き好んで選ぶ。そうすることによって、静かな心の状態、本来の自分のありようから、どんどん遠ざかってしまうんです。

この悪循環から抜け出すためには、「強い刺激によって動かされている自分」というのは、「刺激に振り回されてしまった自分」であって、本来の自分ではない、ということを繰り返し学ぶ必要があります。

僕らの心が常に刺激を求めていること、言い換えれば、僕らの心は「傷つくことを求めている」という認識から出発することが、これからの時代、すごく重要になってくると思うんです。

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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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