最新刊『SOLO TIME (ソロタイム)「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』が話題の精神科医の名越康文先生は、大の旅好きで知られます。
「旅」には、心をリフレッシュする効用があると言います。
なぜ、すべての旅人は賢者のような眼をしているのか
旅は、ソロタイム(ひとりぼっちの時間)の過ごし方として、最良の方法の一つです。
特急列車の車窓から外を眺めている旅人たちの表情は、どことなく哲学者のように、厳かな空気を帯びます。
目に飛び込んでくる未知の風景、いつもとは違う風の香り。そうしたものと感応するうちに、人は日常の「群れ」に埋没していた時の身体感覚から、少し距離をおくことができます。
普段過ごしている会社や家族、身近な友人など、大小さまざまな「群れ」の空気から離れ、固定化した心の壁を越えていく。旅人が垣間見せる、どこか思慮深く、それでいて緊張感もある表情は、日常生活とはまったく異なる視覚、聴覚、「初めての何か」から無意識のうちに、影響を受けた結果です。
人間は常に、周囲の環境から影響を受けています。身近な人間関係はもちろん、部屋やオフィスの家具、衣服、食事といった、日常を取り巻くさまざまな環境からも、多大な影響を受けている。
旅に出ることによって、あなたの身体は周囲の人間関係や、様々なモノから引き離され、まったく違った「人」や「モノ」から、影響を受け始めます。その結果、あなたの意識は自然と、「群れ」から引き離されていく。
これが、「旅」のもたらすリフレッシュ効果であり、心理学的な効用です。
旅が持つ心理学的な効用(イラスト:伊藤美樹)
旅することをやめた人間は、掃除をするようになった
物を持たない野生動物が、人間のような鬱屈した心を持たないのと同じように、人も、ものを持たず、移動し続けていた頃の人間は、心を軽く、新鮮に保つことができていたのではないか。私はそう、夢想することがあります。
農耕を行い、定住するようになるまでの数百万年という長いあいだ、人類は狩猟採集生活を送ってきました。それはいわば「旅をし続ける生活」であり、彼らは常に「ソロタイム」を過ごしていたと言えるかもしれません。
農耕を覚え、一箇所に定住するようになった人類は、旅の代わりに、「掃除」と「片付け」をするようになりました。
ずっと移動し続けていた狩猟採集民の所有物は「持ったまま移動できるもの」だけであり、そこには「掃除」も「片付け」も存在しませんでした。
定住し、所有するものが多くなればなるほど、私たちは多くのモノから影響を受け、それによって、アイデンティティを強化するようになった。その結果、私たちは、「変わること」あるいは「生まれ変わる」ことが、苦手になったのだと思います。
持ち物を手放し、身一つで旅に出る。そうやって自分のアイデンティティの一部から手を離すことによって、「群れ」に制約され、神経症気味になった私たちの心を、リフレッシュすることができるのです。
「ひとりぼっちの時間」こそが、人生を変えるカギ!
新刊『ソロタイム(Solo Time) 「ひとりぼっち」こそが最強の生存戦略である』
著者:名越康文
四六版並製、256ページ
ISBN:978-4906790258
定価1600円+税
夜間飛行 2017年6月12日刊
ヤフーショッピング→http://store.shopping.yahoo.co.jp/yakan-hiko/906790258.html
honto
→https://honto.jp/netstore/pd-book_28512870.html
■内容
他人の言葉や常識に振り回されず、
納得のいく人生を送るために必要な
新時代のライフスタイルの提案!
5000人のカウンセリング経験から得た精神科医の結論!
「会社や家族、友人や恋人といったさまざまな人間関係を維持していくことだけに、人生のエネルギーと時間の大半を注ぎ込んでいる人は少なくありません。しかし、そのことが、現代人の不幸を生み出しています。
人間関係は大切だけれど、それ自体は人生の目的ではないのです」
「日ごろの人間関係からいったん手を離し、静かで落ち着いた、ひとりぼっちの時間を過ごす。たったそれだけのことで、何ともいえないような虚しさが、ふっと楽になった、という人は、少なくありません」
(本書より)
<<<人生を変える、ソロタイム活用法>>>
部屋を片付ける/旅に出る/古典やSFを読む/大きな決断の前には気分転換をする/他人を変えず自分が変わる/仕事や勉強よりも大切なのは「落ち着く」こと/小さな怒りを払っていく/姿勢を整えてしっかり息を吐く/拭き掃除をする/小さいことから習慣を変える/夕飯ヌキのプチ断食をする/家族や友人、同僚に対して毎回「はじめまして」という気持ちで接する/いつもと違うキャラになる/夜中にひとりで散歩をする
<目次>
第1講 あなたは群れの中で生きている
第2講 本当の自分の見つけ方
第3講 自分の心に打ち勝つ
第4講 身体に秘められた知恵と出会う
第5講 人生を変える習慣の力
第6講 もう一度、人と出会う
(目次より)
<著者プロフィール>
名越康文(なこしやすふみ)
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。
専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)、『『男はつらいよ』の幸福論 寅さんが僕らに教えてくれたこと』(日経BP社、2016)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」、通信講座「名越式性格分類ゼミ(通信講座版)」配信中。
公式サイト
http://nakoshiyasufumi.net/
その他の記事
コデラ的出国前の儀式(小寺信良) | |
今だからこそ! 「ドローンソン」の可能性(小寺信良) | |
「ノマド」ってなんであんなに叩かれてんの?(小寺信良) | |
2022年夏、私的なベスト・ヘッドフォン(高城剛) | |
AirPodsから考えるBluetoothの「切り換え」問題(西田宗千佳) | |
教育にITを持ち込むということ(小寺信良) | |
過疎化する地方でタクシーが果たす使命(宇野常寛) | |
「小池百合子の野望」と都民ファーストの会国政進出の(まあまあ)衝撃(やまもといちろう) | |
「キモズム」を超えていく(西田宗千佳) | |
「Surface Go」を自腹で買ってみた(西田宗千佳) | |
TikTok(ByteDance)やTencentなどからの共同研究提案はどこまでどうであるか(やまもといちろう) | |
野菜はヘルシーフードどころか真逆の毒の塊?(高城剛) | |
夏休み工作、今年の「音友ムック」はQWT型!(小寺信良) | |
石田衣良がおすすめする一冊 『ナイルパーチの女子会』柚木麻子(石田衣良) | |
できるだけ若いうちに知っておいたほうがいい本当の「愛」の話(名越康文) |