※高城未来研究所【Future Report】Vol.397(2019年1月25日発行)より
今週は、柳川にいます。
福岡の中心部天神から西鉄に乗って南下し、およそ50分。
福岡県南部の城下町、柳川があります。
旧藩主立花氏の掘割が、街中を縦横に流れることから「水の都」と呼ばれ、いまも川下りが有名な筑後地方を代表する観光地でもあります。
かつて藩主だった立花宗茂は、関ヶ原の戦いで西軍に参加したため所領を没収され流浪しましたが、のちに徳川氏により取り立てられ、陸奥国棚倉で1万石を与えられて大名に返り咲いた珍しい人物として知られます。
大坂の役で戦功をあげ、1620年、関ヶ原の戦い以降に筑後柳川32万石を支配していた田中氏が絶家したのをきっかけに、この柳川に10万9千石を与えられ、旧領に戻りました。
関ヶ原で改易された武将が再び「大名」として復活できた例は少なく、その中でも旧領に戻ることができたのは、立花宗茂ただ一人だと言われています。
この立花宗茂より数奇な人生を送ったのが、妻の立花ぎん千代です。
ぎん千代は、先代立花道雪に嫡男が不在だったことから、7歳で家督をすべて譲られました。
これにより「おんな城主」どころか、「少女城主」が誕生したのです。
あらゆる史書によれば、後にも先にも史実に残る「おんな城主」は立花ぎん千代だけで、のちに婿養子となる宗茂と結婚するまで、その役目を全うします。
その後、立花家は柳川藩主として明治維新まで続き、維新後は華族に列して伯爵を授けられました。
現在の立花家は、柳川市の自邸立花氏庭園(松濤園)を改装した料亭・旅館・宴会場「御花」を経営しています。
と、ここまで歴史的解説と一般的な観光案内ですが、僕にとって柳川の魅力は、なんと言っても西日本を代表する「うなぎの街」。
今週、数日滞在しながら、名店を巡る日々を過ごしています。
柳川に限らず、日本全国「うなぎの街」は多々ありまして、その大半は、湖や川沿いに位置しており、これは、冷蔵庫もなかった江戸時代に、生簀の代わりに近隣の川を利用したことや、養殖地だったことに由来するもので、関東を代表する「うなぎの街」川越や浦和など、地名に「川」や「浦」が多いのは、そのためです。
現在、人口7万人にも満たない柳川には、鰻屋が30軒以上ひしめき合っています。
一般的にうなぎ料理といえばうな重やうな丼ですが、柳川のうなぎの特徴は、せいろ蒸し。甘めのタレを絡めて味付けしたご飯の上に、蒲焼きにしたうなぎ、錦糸玉子を乗せせいろで蒸したものがデファクトスタンダードで、うなぎ好きの僕でも、1日二食が限界です。それほど、パンチがあります!
さて今回、およそ5年ぶりに来訪しましたが、驚いたのは価格で、なんと、うなぎのせいろ蒸しの価格は、5年前の1.5倍-2倍。
この背景には、以前もお伝えした「うなぎマフィア」の存在もありますが、どうやら、ここまでの高騰は、美食ブームにも要因があるようです。
インターネットの普及により、飲食店情報が平準化したため美食へのアクセスが容易になり、「あたらしい食欲」が、多くの人たちのなかで膨らみました。
名店の駐車場を見れば、他県ナンバーも多く、年齢層も多岐にわたっています。
美食に明け暮れると、少子化になるのは、70年代のフランスを鑑みた歴史家のレポートと忠告ですが、なぜか、このふたつの関連性を話す識者が、日本にはほとんどおりません。
合計特殊出生率の低下と、うなぎの価格の高騰。
うなぎが絶滅危惧種指定されるように、いつの日か、日本人も絶滅危惧と騒がれる日が来るかもしれません。
何百年と江戸時代から続く古い街並みは変わりませんが、人間の生態系は、急速に変わってきていると感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.397 2019年1月25日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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