※高城未来研究所【Future Report】Vol.425(2019年8月9日発行)より
今週は、熊本にいます。
「月読みレモン」等で知られる「にしだ果樹園」を訪ねるため、モントリオールから東京を経て、九州へやって参りました。
この果樹園の栽培は、よくある自然栽培、有機栽培の無肥料無農薬栽培だけでなく、地球がもっとも影響を受けやすい月の運行にあわせて収穫している点に特徴があります。
以前も本メールマガジンでお話ししたことございますが、活魚や蟹などは、新月と満月ではまったく味が違うのは食通の間で知られた話しで、オンラインや書籍にある飲食店の採点ではなく、実は伺う日こそ、味を決めています。
かつて神社仏閣を建立するときには、新月の日に切られた木しか使いませんでした。
その理由は、新月が引力の影響がもっとも少ないことから、養分と水分が根に向かい、同時に木の中にある不純物も根に集まるため、その状態で木を切ることによってより長く持つ良材となるからです。
同じく果物も、ジャムなど保存を前提にしたものは、新月の日に収穫すれば、不純物が少なく長持ちし、一方、満月の日に収穫すれば、複雑な味と香りが楽しめます。
これは、人智学者ルドルフ・シュタイナーのバイオダイナミック農法に通じる手法で、自著「GREEN RUSH」でも取り上げた「シスター・オブ・ザ・バレー」のCBDの効能が高いのは、このサイクルで大麻を収穫しているからに他なりません。
このバイオダイナミック農法を日本的にアレンジして収穫を行なっているのが、「月読み果実」で知られる熊本の「にしだ果樹園」なのです。
当代で三代目園主にお話しをお聞きすると、元々富士通勤務だったそうですが、実家を継ごうと戻ってきたあと、日々の農薬散布で不調になった自身の体験から、研究に研究を重ねて、いまのかたちに行き着いたとのこと。
その中から「奇跡のりんご」で知られる木村農法をさらに深めた農法を確立し、「奇跡のみかんジュース」を作り上げ、名を知らしめました。
現在では、農協などを通さず、ほぼ100%インターネットを通じて直販し、香港、マレーシア、シンガポールなどのパートナーも多くなり、頻繁に海外に出向いているとのお話しでした。
東京青山のNARISAWAをはじめとするトップ・レストランのテーブルにも、毎月違った果物を提供しています。
お話しを伺っている中、三代目園主は何度も「表現」と話します。
いまや「表現」は、ギャラリーや美術館、ストリートやオンラインを超え、体の中に入って感じるものの時代になったと、強く感じました。
21世紀的美術館とは、僕らの身体そのものなのです。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.425 2019年8月9日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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