
「やるぞやるぞ」と言われて、いままで「まあ、そうは言ってもまだ経済面の競争に過ぎないから」と羽交い絞めのような感じで対応していた米ホワイトハウスも、ついにペンス演説が出てしまいました。
一年ぶりの大演説となったわけですが、いままで「米中対立というのは中国一国を押さえれば済むビジネス上の紛争に過ぎない」としてきた俺たちのトランプ大統領の概念から、一歩も二歩も進んで「中国というのは独裁的な国家体制を輸出する民主主義の敵である」という概念の戦いとする俺たちのペンス副大統領のほうがより大きなアメリカの意志だぞということで、アメリカ議会もそれなりに総立ちで超党派の対中タカ派が勃興、いわゆる武闘的なネオコン派(ネオ・コンサーバティブ)と合体して本格的な覇権争いにシフトしたぞというのが世界の大構造であります。
何がヤバいって、もちろん問答無用で日本もこれに巻き込まれるわけですけれども、メルマガでも他の記事でも何度も書いてきた通り、日本の周辺は中国の外縁部であると同時にアメリカの最前線でもあるため、香港問題、台湾海峡、朝鮮半島問題、尖閣諸島、南シナ海と、日本が何らかコミットしないと民主主義の世間的に収まらないトラブルが目白押しになっておる点です。
なぜかペンス大統領はNBA(全米バスケ)のネタに引っ掛けて中国の検閲や香港まで網羅した避難をするのはこのタイミングしかないと言えばないわけでして、これはもうアメリカが固有で持つDNAの問題であるとも言えます。
一方、中国もあれだけ多くの国民を擁し、激しい権力闘争に明け暮れ皇帝が王朝を建てては滅んで戦乱になるという歴史の繰り返しで揉まれてきたDNAを持ち、国民の自由よりも国家主導で社会の安全を期する風土を持っている以上、これはもう相容れないのです。
アメリカも、ハト派は原則として豊かになった中国は、いずれ国民が力を持ち民主化に進むだろうという美しい未来予想図を持っていたわけですけれども、どうもやっぱり違うじゃないかということで、知的財産の流出や、知識の拠点であったアメリカの大学への集中豪雨的な中国の浸透、さらには13億人の成長市場を完全に管理し外資系を排除し中国国内の内需を独り占めにして得た利益を元に一帯一路を始め発展途上国へのベンダーファイナンスを遂行し重商主義時代の植民地政策も真っ青な政策を繰り返している中国の「攻撃性」と、民主主義の敵である「検閲」に対する抗議を正面から述べるという演説であったのです。
折悪く、香港やウイグル、チベットなどでの人権侵害状況があり、さらにソロモン諸島で往年のイギリスのような最長75年貸与とか平然と中国が決めてくるので、この対立はいずれ不可避なものだったと言えるでしょう。
その結果、過激な大統領だと思われていたトランプさんが、実は貿易のことに執心している実に現実主義的で場当たり的で分かりやすい為政者じゃんということが分かり、より中長期のアメリカの戦略は「トランプに任せられない」という議会有力者たちが勝手に連携してペンス副大統領は「まだマシ」ということで旗頭に立て実に立派にアメリカ外交になっているというあたりにアメリカの強さを垣間見るのであります。
今回メルマガでは中国国内情勢についても解説を書いていますが、この10月25日のペンス副大統領の演説は、今後を占ううえでもとても重要なものであり、民主主義国である日本もこれへの対応を充分に考えていかなければならない立場なのだということも踏まえて、国際ニュースを見ていただければと願います。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.276 いよいよ正念場を迎えつつある米中対立について考えつつ、最近のMicrosoftの動きなどにも触れてみる回
2019年10月28日発行号 目次

【0. 序文】ついにアメリカがペンス副大統領の大演説で対中対立の道筋がついてしまう
【1. インシデント1】Microsoftがスマホ市場へ再参入の妙
【2. インシデント2】ビットコイン相場の急回復、中華「上に政策あれば、下に対策あり」の戦い
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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