「もうどうにでもなーれ」とでも言いたくなるようなライドシェア関連ですが、まだ揉めています。
要は、6月に決定する骨太の方針にライドシェア全面解禁に向けて検討する内容を盛り込むにあたり、検討の期限を設けるのかということであって、全面解禁に向けて法制度を含めた事業の在り方を並行して議論するというのは要するに今日こんにちまで行われてきた検討についてはゼロベースになるわけですから「当面やらない」という意志決定になったという風に見ていいんじゃないかとは思います。
ただ、いかんせん期限なしというのは明日やるかもしれないし、岸田政権でこさえた短冊を閣議決定したとして次の政権がひっくり返してすぐやるor絶対やらないとジャッジする可能性もあるわけですから、これはもう単純に昨年8月からのライドシェアネタはあまりのグダグダさに棚上げになったと判断するのが正道だろうと感じます。
国土交通省も物流・自動車局旅客課がさんざん規制としてのハードルや実務上の問題について進言してきており、また、クリアするべき条件についても先般メルマガでも書いた通りPHV方式しかおそらく日本では着地できる方法はないし、タクシー不足といっても一部の都市部や一定の時間帯でしか起きておらず、そもそもタクシー運転手の賃金が少ないから喰えないのでなり手がいないだけだとみんな分かっていたんですよ。
人間迷路 Vol.426 --ライドシェア問題をどうしたものかと思案しつつ、怪しい宗教法人売買の実態や生成AIと知財権利の有り様に触れる回
そのようなタクシーの事情について、一連のハードルについて説明するだけで、やれ「既得権益だ」とか「タクシー利用者を無視している」などと煽った結果、案の定ライドシェア全面解禁で起きるであろうリスクについて政治が丸のみできる判断にはならず、結果的に掛け声だけ高まってみんな斃れるという結論になるのです。
こういう結論になるのはたくさん記事でも指摘してきたとおり無理筋なのだから順を追って適切にライドシェアを段階的に解禁していけばタクシー業界も新規参入事業者もハイヤー利用者もWINWINとなるべきところ、いきなり全面解禁だとやった河野太郎さんとそこにフルベットさせようとした官邸サイドも見切り発車が過ぎた面はあろうかと思います。
んで、元の振り出しはLINEヤフー社会長の川邊健太郎さんが、関係の深い小泉進次郎さん経由で菅義偉さんに依願をし、菅さんがよっしゃと外で昨年8月にライドシェア解禁論を講演でブチ上げたのが発端です。Uberにしても日本交通にしても、そういう事業環境の変化が起きるのであれば対応しなければならないのだから、日本交通川鍋さんは特に自分とこの株式上場も見込んで前のめりにならざるを得ません。その結果がライドシェア全面解禁の当面の棚上げなのですから、いいツラの皮にされてしまったとも言えます。
あまりにも「当然そうなりますよね」という流れですし、私としても声高らかに「ボク言いましたよね」とならざるを得ない案件ですが、ただ、タクシードライバーさんの給料引き上げ・賃上げや、タクシーとハイヤーの違いをきちんと定めて国民が使いたいときに使いたいところで配車されるような合理的サービスを実現することの大事さは当然念頭に置いていかなければなりません。規制緩和という掛け声だけで労働法制や交通行政のあり方をすっ飛ばして全面解禁するのは筋悪だけれども、最終的なサービス形態を考えて人口減少下でのモビリティを考えてICT技術を使ったサービスアプローチを検討する、というのは全然あり得ることでしょう。
さらには、いまや当たり前になってしまった中華製白タクが日本の域外で配車予約も支払いも完成させ、違法な白タク行為が横行している現状を考えれば、何かしらの法的担保、枠組みを用意する必要はどうしても出てきます。これを抜きにして規制緩和をしてはならないし、日本法でだけいくら厳しくしても海外でサービスが決済されてしまえば税金も取れません。このあたりの域外適用の問題についてもきちんと所見を考えたうえで適切な法規制を検討して行ければと思います。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.443 ライドシェア全面解禁見送りは当然の成り行きだろうと思いつつ、中国越境ECや生成AI業界のやらかし具合をあれこれ語る回
2024年6月3日発行号 目次
【0. 序文】暴風雨となるライドシェア全面解禁論議
【1. インシデント1】SHEINとTemuがもたらす中国越境ECの終焉
【2. インシデント2】続・AIサービスプロバイダを信用しても大丈夫なのかという問題
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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