小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

ズルトラ難民が辿り着く先、HUAWEI P8max

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2015年10月9日 Vol.053 <コンセプトは1日にしてならず号>より

スマートフォン、タブレットと来て、その次はファブレットだなんて言われていたが、どうなんだろう。電車の中を見回してみても、あまり使っている人を見かけない。

ファブレットとは、スマートフォンとタブレットの間を埋めるものとして、だいたい5〜7インチぐらいのスマートフォンを指す。したがってiPhone 6/6s Plusあたりが、ファブレットの代表格と言えるだろう。

先日もレビューのためにiPhone 6s Plusをお借りして試したが、5.5インチというサイズは大きめではあるものの、十分かと言われるとそれほどでもない。何に対して十分かというと、老眼に対してである悪かったなジジイで。

実はこれまでファブレットとして、ソニーのXperia Z Ultra、通用「ズルトラ」を愛用してきた。6.4インチと、かなり大型のファブレットである。購入したのは昨年の暮れで、CES取材の時にSIMフリー端末のモバイルルータとして使うつもりだった。だが日常的に使ってみると、これがなかなかいい。7インチまで行ってしまうと、もはやNexus7に代表される小型タブレットと変わらないわけだが、この0.4インチの差が絶妙に片手で持って負担のない幅で、ちょうどよかったんである。

メインの用途は、ニュースチェックだ。朝と寝る前、それから移動時間に気になるニュースをEvernoteにクリッピングしていく。その結果が本メルマガのニュースクリップになっていくわけだ。防水防滴仕様ということで、Netflixなどの動画サービスのレビューでは、お風呂の中でチェックしたりした。

ワールドワイドモデルなのでOSのアップデートもそこそこ早く、パフォーマンス的にも問題なかった。だが、1年間本当に毎日ガチで使うと、ハードウェア的にガタがくる。まずUSB端子のフタがダメになって、開け閉めができなくなった。空いたままだと防水にならないので、フタを閉じたままではめ殺しにするしかない。幸いXperiaシリーズは側面に接触型の充電端子があるため、新たに充電端子アダプタを購入して使っていた。

だがこっちの端子も次第にダメになっていった。接触型充電端子は磁石でくっつくのだが、ある時ケーブル側の磁石に、端子がくっついたままパーツが外れてしまった。中を見ると両面テープで止めてあるだけで、端子を外す時に磁石で引っ張ると、その力に負けて抜けてしまったのである。

端子を元どおりに挿し直したのだが、一旦そういうことがあると充電のステータスがおかしくなった。充電ケーブルを外しても、表示上は充電されたままになって、元に戻らない。これでは充電している時に、本当に充電されているのかがわからない。接触型充電端子は、ちょっと斜めでも磁石でくっついてしまうので、きちんと充電状態にあるかはスマホ側の表示で確認するしかないのだ。一晩置いといて出かけようとしたら、充電されてなくて起動もしないということが何度もあったり、電源を切ったはずなのに永遠に再起動を繰り返したあげくバッテリーが空になるなど、ちょっとこれではダメだということになった。

これ以外に選択肢なし

そんなわけで急遽代わりになるファブレットを探したのだが、6インチ以上7インチ未満という絶妙なサイズのものがない。大抵は5.5インチか、それより大きくなるともう7インチのタブレットになる。

これでは通話はしないので、正直SIMが刺さればタブレットでもよかったのだが、これもまたSIMが刺さるとなると選択肢がない。そんな中、ようやく見つけた唯一の選択肢が、HUAWEIのP8maxであった。

他の候補としては、同じHUAWEIのMediaPad X2があった。今年のMobile World Congressで発表になった7インチタブレットだが、SIMも入る。ただ日本でまだ販売されていない。すでに中国では売られているようなので、日本でも間もなくではあるのだろうが、いつになるかわからないので待ちきれなかった。

一方P8maxは9月25日に発売されたばかりで、ディスプレイサイズは6.8インチ。実質もう7インチと言ってもいいのだが、ボディサイズがXperia Z Ultraとほとんど変わらないのがポイント。高さが3mm、幅1mm大きいだけだ。要するに枠が細いわけである。

・手に馴染むサイズ、HUAWEI P8max

一方ディスプレイ解像度は1920×1080で、Z Ultraと変わらない。画面だけ見れば、表示が少し大きくなるわけだ。多くの人にとっては、画面サイズが大きくなればそれだけ高解像度になり、多くの情報量を表示したいと思うだろうが、僕の用途的には文字が小さいのが問題なので、逆にこのスペックの方がメリットがある。

カメラは個人的にはあんまり使ってないので期待してなかったのだが、スペックを見るとソニー製で、メインカメラの方は光学手振れ補正まで付いている。iPhone 6s/6s Plusと違って4Kは撮影できないが、静止画の画素数は13000万画素で上である。

もう一つ期待してなかったが、意外にスピーカーの音がいい。モノラルなので映画などのコンテンツ鑑賞には向かないが、ちょっと気になった動画を見ると行った際には、十分なパフォーマンスを発揮する。HUAWEIの独自システムだそうだが、タブレットでも音の良さにこだわっており、そこをウリにしていくようだ。

・底部のスピーカーは意外に音がいい

一方でZ Ultraにかなわない部分もある。一つは防水防滴機能だ。これが求められるのは日本市場しかないようで、ワールドワイドモデルで防水防滴対応のものはほとんどない。ここに力を入れているのは、ソニーかhtcぐらいではないだろうか。本当はお風呂でNetflixを楽しみたかったのだが、そこは我慢である。

もう一つ実際に買ってみるまで全く眼中になかった問題が、NFC対応である。なんとP8maxは、これだけのフルスペックにもかかわらず、NFC非対応なのだ。これまで購入したAndroid端末でNFCが載ってないものは一つもなかったので、もうデフォルトで載っているものとばかり思い込んでいたが、P8maxには搭載されていない。

元々MVNOのSIMで運用する予定だったので、おサイフケータイ機能には期待してないが、毎日記録しているパナソニックの血圧計が、NFCでデータを転送できるタイプなのだ。これで血圧の変化をグラフ化して、お医者さんに薬を処方してもらうわけだが、これができなくなったのは地味に痛い。毎日やることだからこそ楽をしたいのに、手動入力に戻るのは辛いものがある。まあ事前にそこに気がつかなかった自分が悪いのだが。

というわけで全国何万人いるのかわからないが、Z Ultra使い込みすぎてもうダメだという人も多いと思う。P8maxは単純にディスプレイだけの問題であれば十分代わりになるのだが、微妙にかなわない点があることはご承知置きいただきたい。

ソニーとしては、Z Ultraは量産した割には全然売れなくて最後には投げ売り状態だったので、もう二度とやるかこんなもん、というモデルなのだろうが、確実に市場は切り開いたと思う。このサイズに再参入しないのは勿体無いと思うので、オッサンはPOSデータおかしいだろってレベルでP8maxを買うべき。

以上老眼スマホ組合からのお願いでした。

 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2015年10月9日 Vol.053 <コンセプトは1日にしてならず号> 目次

01 論壇【西田】
 シャープ「RoBoHoN」が示す新しい可能性
02 余談【小寺】
 ズルトラ難民が辿り着く先、HUAWEI P8max
03 対談【小寺・西田】
 Macプログラミングの歴史を紐解く (4)
04 過去記事【西田】
 ロボットを作るおしごと
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

 
12コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。   ご購読・詳細はこちらから!

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