※高城未来研究所【Future Report】Vol.443(2019年12月13日発行)より
今週は、大阪にいます。
いよいよ明後日に迫った初の医療に関する講演会のため、現在慌ててプレゼンテーション・スライドを作成しておりまして、改めて「怪しい」「エビデンスがない」と言われる医療を、この機にリサーチし直しています。
最近も批判的な論調で取り上げられることの多い自家血オゾン療法、別名「血液クレンジング療法」は、もともと銀座オクトクリニックの故伊藤壱裕医師が名称をつけ、このネーミングから一気に広まりました。
ドイツで行われている標準的なオゾン療法では、3000~4000マイクロを入れるとインターフェロンやTGF-βが上がるエビデンスもあり、世界約70カ国、約5,000誌以上の文献を検索できる医学・生物学文献データベース「PubMed」でも、オゾン療法だけで3,000件、オゾントリートメントで6,000件以上の論文が出てきます。
ですが、最近炎上したのは、エビデンスの有無にないようです。
この件は、「空気」によって燃え盛ったのだろうと個人的にはみています。
名著「空気の研究」で知られる作家・山本七平は、日本の組織・共同体は「個人と自由」という概念を排除する、と指摘しています。
太平洋戦争の最中、戦艦大和の出撃を「無謀」とする人々には、それを無謀と断ずるに至る細かいデータ、いわゆるエンビデンスがありました。
しかし、軍令部次長だった小沢治三郎中将は、後日振り返り「全般の空気よりして、当時も今日も(大和の)特攻出撃は当然と思う」と述べています。
つまり、日本において国家の行方を決する際に最重要視されたのは、エビデンスではなく「空気」であり、統計も資料も分析も、またそれに類する科学的手段や論理的論証も一切は無駄で、どんなに合理的であっても最後にそれらが一切消しとんで、すべてが「空気」によって決定されるのです。
今日、この「空気」を醸し出し醸造するのがマスメディアで、その拡散装置がSNSです。
ただし、「空気」はマスメディアを実質的に支えるスポンサーや放送免許を握る為政者の意向によって風向きを変え、「真実」を煙に巻くことが可能です。
本来「空気」は、このような人工的操作によって作られるものでなく、自然発生的に醸成されるものですが、いまや権力と資金力によって「人工空気」の醸成および急速な拡散が可能となりました。
山本七平いわく、日本には「抗空気罪」という罪があり、これに反すると最も軽くて「村八分」刑に処せられる、とも述べています。
では、このような「スポンサードされた空気」のなかで、どのように生きて行けば良いのでしょうか?
その方法は、常に空気的判断の基準と論理的判断の基準という、二重人格のような「ふたつの個性」を持って当面は生きるのが良いだろうと、本メールマガジンで度々お伝えして参りました。
そしていつの日か、これこそ怪しい「人工空気」から離れた場所に、軸足をそっと移せば良いのです。
永遠にシェアされ続けるオンライン空間と、シェアされることがないオフライン空間の「ふたつの世界」を行き来し、掴み所がないほど高速移動しながら、こっそり軸足を移していく。
明後日から、いよいよ「人工空気」とは離れたフレッシュなオフライン空間が、東京と大阪で幕開けします。
どうぞお楽しみに。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.443 2019年12月13日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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