やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

自民党「カジノ収賄」の前後事情に見る「なんでこんな話に引っかかるのか」感


 というわけで、留寿都でやらかしていた中華500ドットコム社がらみで、自民党の秋元司さんと、ブローカーをしていた紺野昌彦さんらが贈収賄を目指す外為法違反で摘発されてしまいました。

 また、周辺でうろうろしていた自民党の白須賀貴樹せんせのとこと、勝沼さんもガサ入れがあって、これはこれで引っ張られそうな雰囲気です。現状では起訴されて有罪判決が出ているわけでもありませんので、今後どうなるのかはよく分からんところではありますし、紺野さんはちょっと派手めではあるけどしっかりした人でもあるように見受けられるので、今後延焼をするにしてもどうなるのかちょっと予想がつかない部分ではあります。

 言われてみれば、一年ちょっとほど前に、私も某会員制月刊誌からご取材を受けていた経緯のある本件ですが、留寿都やニセコにささやかながら投資をしてきた人間からしますと、何でそういうのに引っかかるんだろうな、と感じるような案件であります。ぶっちゃけ、可能性がほぼゼロと言ってもおかしくないような、小樽や留寿都のカジノ投資話になぜ中華ファンドが乗っかったのかさっぱり分からんのです。

 特に、小樽の話は私もよく知っていますが、仮に議員さんや議員秘書さんが繰り出してきて信用付けをしたのだとしても、小樽にカジノが認可され大型施設を呼び込むような話は推進派の市長やその周辺が選挙で完敗してから可能性は無くなったのです。苫小牧、ニセコ、留寿都然り、ある意味で、政治ゴロにも近しい一件に騙されたのはむしろ中華側であって、夢を見た紺野さん側がそれならということで資金を提供したり、深圳に皆さんをお呼びして云々という流れであったようにも見受けられます。

 なぜかの議員さんが羽振り良くやっていられたのかと言えば、つまりはそういう「無い話」を議員の肩書で箔付けをして集金の具にしていた側面があるのだとするならば、むしろ北海道のカジノ話で延焼するというよりは、他の議員さんの営業話――例えば、絶対にありえないプロジェクトを「国が手がけることが内々で決定した」などと称して議員秘書さんやブローカーさん経由で資金を巻き上げる事案などで積極的に斡旋利得(収賄したいと賄賂を求める)を狙っていったという副業のほうの問題が大きいのかもしれません。

 また、カジノ話で言うならば、それこそ似たような話は大阪であれ他の地域であれあるのかもしれませんが、私の見聞きする限りにおいて、いきなり「あっ、これは違法だな」と思うような話はそう多くは転がっていません。

 唯一、最近気にしているのは古賀誠さんの系譜を踏むR社のNさん周辺あたりはおかしいぞと思ってちらほら見物するぐらいのところで、それでさえも、古き良き政治ゴロ行為を繰り返している人が、高齢の同業者の引退に伴ってにわかに商売繁盛し、あたかも政界のフィクサー然として振る舞おうとするネタは聞き及びます。

 共通する手口というのは、政治家を篭絡する方法であって、それは落選した議員さんを支援する代わりに派閥の長に食い込むのが常道で、いまでも本来は陣笠ではないはずの議員さんがこれらの人たちに顎で使われているのは凄く気になります。ついでに言えば、第五の文書と言われる日中共同ドクトリンを来春の習近平さん来日のタイミングで安倍晋三総理が自らの花道の一つとして準備している下支えをやっていると豪語するに至る話は良く聞きます。それが理由で高級官僚が飛ばされる遠因になったり、アメリカ大使館筋が激怒したりという事情もあるようですが、一事が万事、やはり長期政権ゆえの「緩み」がこのような問題を引き起こす原因になったのではないか、と言えば言いすぎでしょうか。

 どちらにせよ、本来であれば11月解散、12月中旬選挙で、さらなる地盤固めを改憲に向けて行えたはずの安倍政権が、どういうわけか解散に億劫になりタイミングを完全に失し、支持率下落と景気低迷の状況で次の政権に禅譲せざるを得なくなったのではないか、と私なんかは思います。ハッキリ言って、来月の景気が良い保証はどこにもありませんし、外交面でこれ以上中国と接近したときに他の国から何をされるか分かったものではありません。

 やはり気になることは多々あるのですが、そういう大状況はありつつも本件特捜部の着手は実に優れた手腕によるもので、まあ良かったんじゃないのと思います。まだどう転ぶか分からないうちから評価を下すのは早計だとは思いますが。東京地検特捜部には更なる奮励を期待したいと思いますし、適切な形で起訴するかしないかの判断を下していただければと存じます。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.282 カジノ収賄、インド経済減速、顔認証導入ブームのあれこれについていろいろと思うことを語る回
2019年12月26日発行号 目次
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【0. 序文】自民党「カジノ収賄」の前後事情に見る「なんでこんな話に引っかかるのか」感
【1. インシデント1】インド経済「大減速」と中華経済圏に取り込まれる瀬戸際の課題
【2. インシデント2】顔認証が駅の改札に導入されるらしいということで思うこと
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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