やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

近頃人気があるらしいコンサルタントという仕事の現実とか


 コンサルタント業務は結構奥の深い仕事で、仕事柄、込み入った相談をされるにあたり、特定の企業の経営者や政府機関の枢要な人にお目にかかって、貴重なお話を承ったうえで抱えている問題について知ってしまうことがあります。

 もちろん、大手コンサル会社経由や金融機関経由で受け取る話は「この情報はこの人たちにしか渡されない」などとラベリングされたものなので、外部に漏らすことは禁忌です。出すと誰が出したか何となく分かる仕組みがありますから。なので、問題意識を持った場合は、当事者に指さし確認をしっかりと行ったうえで、あくまで大きな枠組みにおいてどうであるかという概要を披露することはあり得ます。逆に、例えば具体的な人物名や資料を開示して「こんなことになっています」というのは当事者からの依頼があったとしても困難なのは仕方のないことです。

 ただ、唯一例外があるのは、そういう高いポジションで重要な仕事に携わり、特定の秘密を持っている人たちが、何かの理由でその仕事を辞したり、他の部署に異動していってしまうときです。後任によっては、前任者が起用してきたコンサルを採ってきた方針ごと切り捨てる、ということは往々にしてあります。コンサルの仕事は炎上処理の傭兵仕事と同じく、どんなに思い入れのある業務であったとしても「情勢が変わったら笑って切られること」が重要だぞというのは間違いありません。

 そんななか、先般一件の「さようなら話」がありました。ある事業で経営陣がやらかして失脚したので、その経営陣に知恵をつけていたコンサル風情が後任経営陣に一斉に切られるという、良くある風物詩的な情景でありまして、私も大手コンサルの下でごそごそやっていたためについでに「いままでありがとうございました」と涙の別れをすることになりました。

 当然、引き継ぎなどしません。私たちが何を知っていて、どんな方針を提案したかは先方の組織に提出したもの以上の見解を披露する必要もなければ、要請があっても次の契約に繋がらない限り応じないのが普通です。私はまだ、人を見て付き合ったり付き合わなかったりする自由がありますが、他の職業コンサルと割り切っている人たちは、文字通り自分の知識を売り、時間あたり幾らという縛りの中でプロとしてのパフォーマンスを出している自負があるので、当然カネにならない時間は取らせないという常識があるのは仕方のないことです。

 しかしながら、今回の案件ではどういうわけか「余人をもって替えがたい」とかいう思い込みが理由で、私だけが再契約になるのならないのという話になり、そうなると面白くないのは元請けで多額の契約をしていた大手コンサルさんです。私の目から見ても、決して悪くない、他社と比べて引け目のある仕事はしていないようにも見えるのですが、いかんせん、余計なものが沢山くっついてきているので、後任からすれば「そこは要らない」となるのかもしれません。

 例えば、あまり知見のない、経験の浅いコンサルタントがあてがわれる、会議参加に関する報酬や、そこまで正確ではない会議議事録が成果物として納品されて対価を支払うこと。あるいは、事情の説明から業界・状況の周辺理解のための費用まで時間給でアマウントされてしまい、実際に具体的な話を聞く前捌きのところまで費用計上されてしまうこと。

 逆に言うと、外資系だろうが国内財閥系だろうが仕事の仕方は当然そうなるわけで、ただし知見が足りないとか、人脈がない業界・企業筋に対するコンサルが必要になると、私のような人間が案件ごとのショットで呼ばれて「彼らよりは安い時給で」呼び立てられ、ノウハウや情報を提供したり、分からないことを彼らの代わりに調べたりヒヤリングしてあげたりするという仕事をするのです。

 私などは、別にギャラで細かいことは言わないし、証券レポートでたとえ名前が出なくても分かっている人が「あ、あれは山本一郎だな」と思ってもらえればいいという仕事の仕方をするので付き合えてはいるんですけれども、本来は情勢が変わったり、依頼主が失脚したら切られるべきコンサルがギャラ保障と居残りをかけてパワープレイをして留任を取り付けようとするという事態がたまに発生します。

 いやなのは、単なる傭兵である私めまで巻き込まれることです。面倒くせえんだよ。信頼関係のあった人が失脚したのであれば、まだお互い良く知らない後任者や外から来た雇われ経営者に無理に食い込んでいって頑張って契約を確保しようというのは実に見苦しいことだと思ったりもします。だって、私たちのサービスがどこまで採用されたかは別にして、全体的にうまくいかなかったから前任者はクビになっているわけでしょ?

 とはいえ面白いのでフォローアップのための会議とかはなるだけ顔を出すのが通例なんですけれども、やっぱこう、餅は餅屋であって、幅広い知見を有するベテランコンサルタントがチーフとして入っている案件だったとしても、会議の場でいつも「おわ。何言ってんのこの人」と思うことは少なからずあります。まあ、静かにしておるわけですが。ただ、そこで臨席している先方担当者や事業責任者が「なるほど」とか言っているのを見ると、そもそも彼ら自身が然程深く考えていないか、一応納得したふりをして偉い人の顔は立てつつ出てきた資料は会議終了後に速やかにゴミ箱行きになるのかもしれないと想いながらフラワーロックのようになっています。

 最近はもっぱら調査方面でしか依頼がこなくなり、以前のように、例えば製作委員会で資金調達をしてほしいとか、次の投資に見合う事業・分野・技術を探してほしいという相談はめっきりと少なくなりました。そういう界隈から私が遠ざけられているのかなと思っていたら、実は周囲には日本国内での調査業務が減り過ぎてお品書きから削ったり、開店休業状態になって仕事を探しているリサーチャーが少なくないことを先日知りました。急に雇ってほしいとか、独立するので出資して欲しいとかいうので驚くわけなんですが。

 そして、私が強く思うのはそういう人たちは「看板で仕事をしてきた人たち」なんですよね。大手外資系にいました、監査法人系のサービスを担っていました、財閥系でした、まあ、みなさんとても優秀な方ですよ。でもですね、47歳の私が申し上げるのも何ですが、あなたがたの話が大手企業や官公庁、投資家界隈できちんと通っていたのは、その所属組織が掲げた金看板のチーフなんたらという肩書があったから、なんですよ。

 「時間当たりの所得が5分の1になる」とか自虐的に言いますが、そもそも金看板の下であなたがたが取っていた時給は請求ベースで150万円とかもあるんです。もちろん、移動中や風呂の中で考えたり、他の仕事で知り得た知見をうまくもじってこっちにもってくる手間とかは含みませんが。でも、そういう界隈の仕事に、元どこそこですといって、じゃあウチにきてください、時給30万で、となるかと言えば、ならない。当たり前ですよね。たぶん、プロジェクト単位の契約になって、半年契約とか一年契約とか、ぶいぶい言わせているコンサルタントであっても月間顧問料の形で安い定額にプロジェクト委託で数百万のレベルにまで報酬は墜ちます。

 それでいて、六本木や虎ノ門に事務所を構えたがり、広尾や田町のあたりに住むようなベースの生活は削らないから、思ったように稼げない現状にぶち当たってしまう。時折、変な版元から駄目な本や情報商材を出す。いつも下請けで傭兵仕事をしているという不変な存在である私からいたしますと、ああ、あれだけ偉い人でも立場がなくなると元職を出して営業本を書かないといけないぐらい落ちていくものなのだ、と思うのです。

 世の中そんなもんであって、知識や人脈を売りにして年収何千万といって勝ち組を気取っている人たちもまた、実は猛烈な競争の中に身を置いていることを忘れた瞬間に、ちょっとしたことで足元を崩されて普通のコンサル以下になってしまうことは、多いのです。思い返せば、55歳以上で業界で高給取りのままでお座敷だけやれば名前が通用する、という御仁は本当に少ない。そういう人になれるのかどうか、逆になれないとして、どういう人生の着地があるのか、他人に知識を売ってコンサルをしている人でも自分の人生に関する知識は錆ついているのかなあという風に思うことが増えてきた昨今です。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.286 コンサルタント業務について思うこと、遺伝子ドーピング、ファーウェイ問題などを語る回
2020年1月31日発行号 目次
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【0. 序文】近頃人気があるらしいコンサルタントという仕事の現実とか
【1. インシデント1】東京五輪を控えてスポーツ界でさざめく効果的な「遺伝子ドーピング」の世界
【2. インシデント2】国際政治におけるファーウェイの今後はいかに
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。サイバーインテリジェンス研究所統計技術主幹など歴任。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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