やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

「都知事選圧勝」小池百合子は日本初の女性首相の夢を見るか?


 もう調べるまでもなく小池百合子さんは都知事選圧勝してしまうわけですよ。当メルマガでも、また各種連載記事でも都知事選の結果が如何にクソかということも踏まえて、ままならぬ現状について観測記事を上げさせていただいております。

1,400万東京都民に特大罰ゲーム『都知事選』のお時間がやってまいりましたまた50億円かけてハズレしか出ねえガチャやるのかよ

 で、石井妙子さんが著した『女帝 小池百合子』本ですが、20万部に届こうかという大変な盛り上がりを見せている割りにはアテクシの票はこれっぽっちも傷つきませんのよホホホ的な状況になっております。ただ、単に「都知事選にアテたスキャンダル本」と思ってはならないのは、この小池百合子さんには遠大な野望があると見受けられることです。

 家族に恵まれなかった小池百合子さんにとって、人生最大の野望というのはもちろん女性初の総理大臣に就任することであって、そのためには関わったすべての人を踏み台にしていっても何ら気にしないという冷酷なサイコパス的側面を持つ人物です。彼女の主義主張のほぼすべては自分が如何に目立ち、得をするかという点に集中しているのが特徴で、逆にそうであるがゆえに、風を読み、使える人とそうでない人を選別し、状況の中で最適な人間関係を構築する能力がある。そもそもの政治的キャリアの出発点が日本新党であり、時として小沢一郎さんとともに旧民主党を離党し、小沢さんの自由党が駄目とみるや二階俊博さんとくっついて保守党に合流して自民党に参画、いつの間にか自民党の保守議員よりも右派な立ち位置で女性初の防衛大臣の座を射止めていたりもします。
 


「都政」に興味のない都知事の小池百合子さん、安倍晋三さんの後釜を狙うにあたっての泣きどころは「側近」のあきらかな不在。 女帝/日本初の女性総理/音喜多駿/希望の党/隠れポピュリズム

 
 その後、前原誠司さんを抱き込んで民進党を事実上解党させて希望の党へと合流することになるのですが、これも雲行きが悪くなると前原さんは途中で使い捨てられ自身が名付けた希望の党すらも離党、都知事職に「引き籠もる」ことで時流を待ち、そして都知事選でコロナ禍が起きるや陣頭に立って都税の大盤振る舞いをし、最高に目立つところで都知事選圧勝という流れになるのは彼女の風を読む力の超一流なところの証左でしかありません。

 そして東京オリンピックはおそらく開催できないであろうことも分かったうえで、何らかのタイミングで都知事の座を投げ捨てて自民党に復党して国政に返り咲く算段を立てているからこそ、獅子身中の虫たる自民党都連と都議会で対立しても平気であり、また、都民ファーストの会は自民党復党のお土産になれば連れて行き、そうでなければ「これからはあなたたちは勝手にやりなさい」ということでこれまた使い捨てられる運命にあるのでしょう。

 必然的に、問題となるのは都知事の座を蹴とばすタイミングのみであります。権勢を失いつつある安倍政権に対して直談判できる大物政治家の一人として、小池百合子さんが突き付ける条件はワンクッション置いた後の総理後継の確約ではないかと思うのです。小池さんとの関係さえ築けていれば、幹事長のポストにしがみつきたい二階俊博さんとの利害も立ち、また、失脚目前で二階さんとの結合でどうにか難題を切り抜けた官房長官・菅義偉さんの政治的な命脈も保たれて、どちらも小池さんに頭が上がらなくなる。それもこれも、都知事選で馬鹿勝ちをする小池さんの政治的基盤の強さだけでなく、これといって後継者を育ててこなかった安倍晋三さんの欠落・残念なところなのかなとも思うわけです。おそらくは、ワンポイントリリーフで出てくるのは岸田文雄さんであり、彼が総理の座を射止めるのは有能で日本社会を率いるリーダーとして安倍さんからのお墨付きが出たというよりは、基盤が弱く安倍さんのいうことを聞くであろうという政治家としての弱さの足元を見られた結果だろうと思います。そんな新生岸田内閣がどこまで持つのかは分かりませんが、安倍さん的なレガシーがひとつの日本政治の価値判断になるのだとすれば、変な土地取引で失脚しない限り、あるタイミングで小池さんは石破茂さん、岸田文雄さん、河野太郎さんら並び立つ政治家と「総理に相応しい政治家」ランキングに名乗りを上げることになります。

 日本の不幸とは、これら指導者の政治的なつばぜり合いによって合理的な政策判断が行われることなく物事が決まっていくプロセスすべてにあります。専門家会議が政治的な都合で解散させられる事情ひとつとっても、政策よりも政争に力点がある政治が続く限り、改革は当然に進まないであろうし、安全保障も安倍さんの考えるレガシーも実現しないのではないかと思います。

 コロナウイルスのお陰で、むしろ世界全体が経済的に失調した結果、アベノミクスや社会保障改革、消費税などの財政問題などなどがすべて有耶無耶になったのも「安倍ちゃんの豪運ゆえに」と割り切るにはデカすぎる失態なのではないかと思わずにはいられません。結束こそが官邸の強みという話は理解できますが、もう少しちゃんと政策に取り組んで欲しいなあと。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.301 小池百合子という人物の行く末を考えつつ、都知事選における立憲民主党の残念さやZoomブームの危うさなどに触れる回
2020年6月29日発行号 目次
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【0. 序文】「都知事選圧勝」小池百合子は日本初の女性首相の夢を見るか?
【1. インシデント1】「不戦敗」自民党都連に続く、立憲民主党の枝野幸男さんの体たらく
【2. インシデント2】グローバルなネットサービスと国際政治の微妙な関係
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
【4. 近況のご報告】

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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