一昨年ぐらいからきな臭い話が流れていたものが、英首相のボリス・ジョンソンさんのBREXITから米前トランプ政権の米中対立路線で急速に話が不安定化していき、実際に中国のウイグル問題が炸裂しているのもあって一気に揉め事として拡大することになりました。
これがまず2月5日。イギリスが中華系放送局中国国際テレビ(CGTN)は実質的に中国共産党が運営しているものとして放送免許を取り上げてBAN。その後、2月12日にこのイギリスの措置への事実上の報復措置として、中国当局がイギリス国営放送BBCの放送を禁じる措置を取ります。
問題となったBBCのウイグル報道関連動画はYouTubeにアップされ、これを中国からVPNか何かで閲覧した中国人に対して監視と警告が発表、その後、いったんは中国側がBBCの放送を黙殺する対応があったものの結果としてBBCの放送BANが決定されたという流れです。
英通信庁(Ofcom)で公開された決定文書の内容はそっけないですが、イギリス政府いわく、本件では充分な対応の時間を与えたものの、中国共産党の影響力下にある機関からの編集に対する影響を排除できなかったCGTNはBANであるとはっきり明記しています。
Decision – China Global Television Network
This is because crucial information was missing from the application, and because we consider that CGTNC would be disqualified from holding a licence, as it is controlled by a body which is ultimately controlled by the Chinese Communist Party. We have given CGTN significant time to come into compliance with the statutory rules. Those efforts have now been exhausted.
逆に言うと、この認定において中国共産党から接続された影響力下の機関は名指しされていないものの、ライセンスホルダーではなかったStar China Media Limited社もまた、一連の嫌疑の中にあるとなれば、中華系メディア全体が問題視されるきっかけになります。
想像を逞しくするならば、ここで言われている機関ではなく、バイネームで個人の問題があるのだとすると、実は日本には多くの中華系メディア人脈が新聞社や通信社、テレビ局など各方面に食い込んでいることになります。最近では、広告代理業を営んでいる会社で執行役員を務める人物が日本の報道番組などへの「情報提供」を繰り返したり、日本政府が推進している経済政策においてむしろ反中国的な言動で焚き付けている人物こそが実は一連の問題の末端に関わっているのではないかと思われる部分もあります。
一連の議論で警戒感をもって受け止められた記事は2018年のこれで、もともとは抗日戦線の指導者であった頃の毛沢東さんが実際に論述したものを、いわゆるペンス演説(2019年)の呼び水となるような中国の各種政策の基本的背景を表したものとされます。
いやもうこれ、戦争前夜というか、1936年から始まるシナリオみたいなノリになっているわけですけれども、13億の人口とそれに支えられる巨大市場を擁する中国は必ずしも一枚岩とは言えない状況ながら、その圧迫を受ける周辺国やアメリカ側に与する各国の足並みをいかに揃えるのか、切り崩されないように日本のプレステージをいかに維持するべきかを考えるべきフェイズに差し掛かっているのではないかと思います。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.Vol.326 戦争前夜を思わせるな英中対立の深刻化を睨みつつ、高須克弥せんせの動向を憂えたり昨今の行き過ぎやすいAI万能論に警鐘を鳴らしてみる回
2021年2月28日発行号 目次
【0. 序文】イギリスと中国、お互いに国営メディアBANで見る価値観の衝突とプロパガンダ戦
【1. インシデント1】俺たちの高須克弥せんせ、リコール問題で盛大にハメられる一部始終
【2. インシデント2】AIにすべてお任せの時代が到来する前に考えておくべきこと
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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