※高城未来研究所【Future Report】Vol.549(2021年12月24日発行)より
今週も、東京にいます。
毎年冬至を新年と考え、時間があれば三輪山に登るようにしていましたが、今年は思いのほか忙しく、久しぶりに大宮に出向きました。
一年で陽が一番短くなる冬至は、古来から「太陽が生まれ変わる日」=新年と考えられていました。
実は、イエス・キリストが生まれた日は不明でしたが、ローマ帝国で民衆に人気があった太陽神と為政者にとって都合のいいキリスト教を習合させる際、太陽が生まれ変わる日がキリスト生誕日に書き換えられます。
つまり、クリスマスとは冬至祭なのです。
また、冬至は「死に一番近い日」とも言われていました。
最も太陽の力が弱まり、生命の源ともいえる太陽の恵みを享受しにくいことから、人間の魂も一時的に仮死すると考えられていました。
この冬至を境に再生して運気が上昇すると考えた日本人は、運を呼びこむ前に体を清め、温めることで厄を払おうとしました。
そこで、邪気を払うと言われていた「ゆず湯」に入ったり、運がつくので「ん」が付く食べ物、例えば「南京」(かぼちゃ)を食べたりする習慣が根付きます。
また、メキシコにあるククルカン・ピラミッドと呼ばれる遺跡「チチェン・イッツァ」は、天文学の研究が盛んだったマヤの技術の粋が集められていて、4面の91段を合計すると364段に設計され、最上段の神殿の1段を足すと丁度365段になり、年間カレンダーの機能を持っていました。
別名「暦のピラミッド」。春分の日と秋分の日に太陽が沈む時、ピラミッドは真西から照らされ階段の西側にククルカンの胴体(蛇が身をくねらせた姿)が現れ、夏至と冬至には、ピラミッドの一面が太陽の光と影の部分にぴったり半々に分かれる現象が確認できます。
以前、僕もに見に行ったことがあり、マヤの天文学の正確性に驚いた事があります。
この「チチェン・イッツァ」より遥かに古く、日本にも天文学に基づいた信仰地がありました。
それが奈良県の三輪山です。奈良盆地に天文学を駆使して開山した三輪山は、古代から太陽神信仰の山として祀られ、ここを起点に大和三山のひとつ畝傍山と鏡作神社を結び、ほぼ正確に一辺9キロの正三角形、つまりフラットなピラミッドを作りました。
のち三輪山に、山そのものを御神体とする大神神社(おおみわ)が作られ、畝傍山の麓には橿原神宮が作られます。
太古の日本では、この地が太陽信仰の中心地だったのです。
そして、埼玉県大宮にある氷川神社も太陽神信仰の地です。
大宮という地名の由来にもなった氷川神社は、関東一円に約280社ある氷川神社の総本社で、のちに作られた中山神社、氷川女体神社を結ぶ線上に、冬至の日の出が現れます。
それゆえ、冬至の日の朝に「本当のご来光」を浴びながらお参りする参拝客が多くいるのです。
他ならぬ今年の僕もそのひとり。
かつて国庫が空になりかけた明治政府が、年末も近い11月になって、公務員の月給を減らすために急遽太陰太陽暦を廃止し、今日まで続くグレゴリオ歴に強制的に移行しました。
それゆえ、明治5年は12月3日から12月30日までの28日間が存在しません。
為政者によって書き換えられた暦。確かに社会はその暦によって動いていますが、それは自然の暦、つまり健康的な暦とはいえません。
ふたつ以上の職を持ち、ふたつ以上の国々を行き来するだけでなく、ふたつ以上の暦の中で暮らしていく。
なにより一足早い新年の参拝は、ガラガラです!
ライフスタイルを変えることは、暦を変えることなのではないか、と思う一足早く新年を迎えた今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.549 2021年12月24日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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