高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

ポスト・パンデミックのキューバはどこに向かうのか

高城未来研究所【Future Report】Vol.567(2022年4月29日発行)より

今週は、ハバナにいます。

およそ二年半ぶりに訪れたキューバは、入国に関してワクチン接種の義務もPCR検査の提出もなにもありませんでした。
冬が終わり、ハリケーン前のこの時期が年間を通じて渡航に最高なシーズンということもありまして、今回はハバナ以外にも久しぶりにキューバ国内あちこち出向いてみようと思います。
ええ、心地よい気候に早速ハマったんです。

しかし現在、キューバは国家財政破綻に直面しています。

一昨年2020年3月、コロナウィルス感染拡大で国境が閉鎖されました。
島国キューバらしい緊急措置だと思いますが、これにより唯一の外貨獲得手段とも言える観光収入がいきなりゼロ。
この状況が半年以上続き、パンデミックとあわせて国中大混乱に陥ります。

そして2020年11月、米トランプ大統領がバイデンに選挙で負けた直後、次回の大統領選に備えフロリダの亡命キューバ人の信頼を勝ち得ようと、急遽トランプがキューバをテロ国家に認定しました。
これにより、世界中からキューバへ送金出来なくなる厳しい経済制裁が課せられ、この措置は現在も続くため、日本をはじめほとんどの国々からキューバへの送金はできません。
米国がでテロ支援国家に指定しているのは北朝鮮、イラン、シリアだけです。

その後、2021年1月にキューバ政府による金融改革(通貨整理改革)が行われます。
ソ連崩壊後の1994年に、米ドルと1対1の等価で固定されたCUCを導入し、これ以降、国内に一般的に流通するペソ=CUPと二重通過制度がはじまりましたが、観光業に従事する人々や外国に住む親族から送金を受ける人々と外貨が入手しにくい国民との間で経済格差が広がり、社会主義国のキューバで二極化が広がっていました。
これを是正するため、CUCを廃止し、CUPに一本化される金融改革が行われました。
ですが、大きな社会的混乱をきたし、国内にドルがないため実際の換金レートは地下銀行を通じて4倍まで膨れ上がります。
つまり、輸入モノが突然4倍以上になってしまったのです。

また、キューバ国内の銀行に外貨口座を持っていた人たちは、自分の口座なのに、ある日を境に引きだせなくなってしまいました。

その上、世界的なロジスティックス問題とインフレーションがキューバを襲い、モノが手に入りません。ガソリンからミネラルウォーターまで、入手するのは困難を極めます。
二年半前に訪れた際に、このメールマガジンでガソリンを給油するのに3〜4時間かかることをお伝えしましたが、その列は現在4〜5倍まで長くなっています。

このような社会的混乱を受け、若年層を中心に続々と海外へ移住する者が後を絶ちません。
その数、2022年3月の1ヶ月間だけでも数万人規模まで膨れ上がりました。

社会主義の実情と問題や、独自のワクチン政策によって感染者を大幅に減らした医療まで、これから数週間かけてキューバの深部に迫ります。

果たしてキューバは、どこに向かうのでしょうか?

ポスト・パンデミックの世界を垣間見たいと思います。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.567 2022年4月29日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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