※高城未来研究所【Future Report】Vol.605(1月20日)より
今週は、メルボルンにいます。
移民大国オーストラリアは、海外で生まれた者または両親のどちらかが海外で生まれた者(移民)が、現在、総人口に占める割合の5割を超え、両親いずれもオーストラリア出身かつオーストラリアで生まれた者の割合を上回った多民族国家になりました。
シドニーに次ぐ第二の都市メルボルンも他ではなく、この十年で移民が急増し、2031年にはシドニーを抜くオーストラリア最大の都市になると予測されています。
というのも、様々な指標から、メルボルンは世界で一番住みやすい街と評価を受けているからです。
そんなメルボルンを目指し、十年前のユーロ危機の際に欧州からオーストラリアへ移民した金融関係の友人と久しぶりに会う機会がありまして、以前はシドニーに住んで米国の大手投資銀行に勤めていましたが、コロナ禍でリモートになったこともあって、彼は念願だったメルボルンに引っ越しました。
しかし、今月リストラされたとのこと。
コロナ禍の間に、上層部は中期的なポストコロナ戦略をあらゆる角度からシミュレーションし、一定の落ち着きを見せた現在、次のフェーズに移るためリストラクチャーの実行に踏み切ったと話します。
今後、金融業界で確実視されているのは、「FRBの利上げによるリセッション間近」だということです。
これは、長い統計データからも明らかなだけでなく、FRBが利上げをするというのは、加熱した市場(つまりバブル)を抑え込むため、意図的にリセッションするということに他なりません。
現在、FRBの落とし所としては、できればソフトな不況にしたいのでしょうが、時にはハードランディングせざるを得ない場合も考えられます。
次に「グローバリゼーションの終焉」は、すでにはじまっています。
オバマ時代にG2と言われた米中関係ですが、その後、関係はすっかり悪くなり、世界は二分する勢いです。
特に米国が独占していた原油のドル決済支配が終わり、先月、習近平のサウジ訪問にあわせて中東30カ国の首脳陣が結集し、UAEやクウェートなどペルシャ湾岸のアラブ産油国の全体でドル建てで米国側(日本含む)に売る石油を減らし、人民元建てで中国やその他の非米諸国に売る石油を増やす方針が明らかになりました。
これにより、事実上米ドルの石油支配は終わりを告げ、基軸通貨の地位が徐々に揺らぐことが予測され、あわせてフランシス・フクヤマが唱えた「歴史の終わり」=アメリカナイゼーションが終焉を迎えます。
また、投資銀行のトレーダーは「人から機械」に移っており、かつて米証券会社大手ゴールドマン・サックスには500名のトレーダーが在籍していましたが、AIトレードの一般化により今では3名まで削減。量子コンピューティング企業QC Wareと共に新たな量子アルゴリズムを設計し(量子モンテカルロ法)、これを量子ハードウェア上で実行することで、重要な金融計算の効率が著しく向上すると発表しています。
この量子アルゴリズムの登場は、金融分野全般に破壊的影響があると思われます。
しかも現在、金融業界の主要プレイヤーは、ゴールドマン・サックスからブラックロックに移っており、そのブラックロックも今月大規模な人員削減を発表。
2008年の金融危機以来最大規模の人員削減とのことですが、この先数年で数万人単位の削減が予測され、まったく別の組織になると思われます。
このようにコロナが終息しつつある現在、もとの世界には戻らないことは明らかです。
友人は、この機に長年の夢だったコーヒー屋を出店する意向で、現在、コーヒーに関しての本を執筆中の僕に根掘り葉掘り聞いてきました。
スターバックスを追い出すことに成功したオーストラリアのコーヒー・ビジネスは有望なスタートアップで、わずか数年で数百人規模の企業に成長出来る可能性があります。
いち早く、世界の動向を量子コンピューティングによって予測する金融業界と、一足先に転身を試みる金融業界の猛者たち。
すでに世界はコロナ後のフェーズに入り、リーマンショックから長らく続いたサーキットの最終コーナーに突入した、と感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.605 1月20日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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