茂木健一郎
@kenichiromogi

メルマガ『樹下の微睡み』より

僕が今大学生(就活生)だったら何を勉強するか

悩む学生たち

僕は今、週に一回、都内のある私立大学の国際教養学部というところで授業をしています。また先日、九州にあるやはり国際的に学生が集まることで知られている大学で学生たちと交流してきました。さらに別件で上杉隆さんの母校の学生たちとも話し合ったり、このところ、たくさんの学生たちの本音を聞く機会があったんですね。

それで日本の学生たちが抱える問題には、いくつか要素があることに気が付きました。一つは「就職活動」が大きな足枷になっているということですね。そこには新卒一括採用など制度的な問題があると思います。

ただ彼らの直面している問題はそれだけではないんです。僕が感じたもう一つの大きな問題は、今の日本の大学生は「何を勉強すればいいのか」についてすごく迷ってしまっていることなんです。

それが学生たちと話すことでひしひしと伝わってくるんです。例えば、英語の勉強はどの程度やるべきなのか。すべて英語で発信して、日本なんか捨てて世界に打って出るんだという人もいる一方では、「私は外国に行くなんて無理だから」と日本の中で生きていくんだから英語なんていらないという人もいる。英語の学習一つを取っても、「こうすればいい」ということになっていないですね。

一番、興味深いと思ったのは、学力観がすごく揺らいでいることです。「偏差値」や「センター試験の合格ライン」などで大学を選んだ人もいる一方で、多くの大学でAO入試が採用され始めたことで、いわゆる普通のペーパーテストを受けずに大学に入学する人も今はたくさんいます。それで「何をもって学力とするか」ということについて、コンセンサスが取れなくなってきている。

そんな彼らと話していて、僕が頭の中でずっと考えていたのは、「僕が今、大学生だったら、就活生だったら、あるいは高校生だったら、いったい何を勉強するだろうな」ということだったんです。

1 2 3
茂木健一郎
脳科学者。1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文藝評論、美術評論などにも取り組む。2006年1月~2010年3月、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』キャスター。『脳と仮想』(小林秀雄賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫学芸賞)、『脳とクオリア』、『生きて死ぬ私』など著書多数。

その他の記事

カビ毒(マイコトキシン)についての話(高城剛)
旅を快適に続けられるための食事とトレーニングマシン(高城剛)
ジェームズ・ダイソンのイノベーション魂(本田雅一)
NAB2017でわかったHDRのインパクト(小寺信良)
「こんな死に方もありますよ」と、そっと差し出す映画です ~『痛くない死に方』監督高橋伴明×出演下元史朗インタビュー(切通理作)
『寄生獣・完結編』の思わぬ副産物/『幕が上がる』は和製インターステラーだ!ほか(切通理作)
身近な人に耳の痛いアドバイスをするときには「世界一愛情深い家政婦」になろう(名越康文)
競争社会が生み出した「ガキとジジイしかいない国」(平川克美×小田嶋隆)
一寸先は、光。自分しかない未来を恐れなければ道は開けるものです(高城剛)
問題企業「DHC社」が開く、新時代のネットポリコレの憂鬱(やまもといちろう)
「すぐやる自分」になるために必要なこと(名越康文)
「本当かどうかわからない数字」に左右され責任を押し付けあう日本社会(高城剛)
衆院選2017 公示前情勢がすでにカオス(やまもといちろう)
古市憲寿さんの「牛丼福祉論」は意外に深いテーマではないか(やまもといちろう)
ここまで使ってこなくてごめんなさい! 意外なほど実用的だった「TransferJet」(西田宗千佳)
茂木健一郎のメールマガジン
「樹下の微睡み」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第1,第3月曜日配信予定) 「英語塾」を原則毎日発行

ページのトップへ