岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海のメールマガジン「ハックルベリーに会いに行く」より

多くの若者がホリエモンを誤解している

堀江貴文さんつくった「755」というトークアプリで堀江貴文さんとトークした。

岩崎夏海 vs ホリエモン座談会
http://7gogo.jp/lp/GGAohuCEUEhWkVIvojdMdG==
zadankai

今日は、この対談で思ったことを書いてみたい。
この対談で思ったことは、「やっぱり多くの日本人(特に若者)が、問題の本質を認識していないのではないか?」という疑いだった。この疑いはかねてから抱いていたが、それが強化された形だ。

堀江さんには若者のファンが多いが、ぼくははっきりいって彼らのほとんどが堀江さんを誤解していると思う。どう誤解しているかというと、「堀江さんが新しい道を切り拓いて実力主義の社会を作ることで、今、老害世代に虐げられている自分たちにもチャンスが巡ってくるのではないか」というふうにだ。

はっきりいって、そういう事態は起こらない。堀江さんが志向し、切り拓こうとしているのは、バングラデシュやパキスタン、インドネシアやベトナムなどの第三世界から、能力があってガッツもある若いエンジニアやアントレプレナーがたくさん現れ、世界の経済地図を書き換えるような世の中である。そういう地域格差が是正され、世界中のあらゆる場所から有為な才能が花開く未来だ。そして、そういう第三世界にチャンスの芽が増えれば、相対的にこれまで既得権益を受けていた日本のチャンスの芽は減っていくのである。

堀江さんは、世界中の人々と張り合っても負けないくらいの能力とガッツがあるから、むしろそういう未来にわくわくし、楽しみに思ってそれを志向している。彼は革新派だ。たとえ自分に不利になることでも、風通しが良くフェアな世界を望んでいる。なるべく純粋な競争社会を志向している。

それは、一つには堀江さんに競争力があるからでもある。競争が好きというのもあるだろう。だから、競争社会はどんとこいなのだが、しかし日本の多くの若者は、競争力もないし競争が好きではない。これは、堀江さんにいわせれば「誰でも普通に努力すれば競争力など簡単に身につく」ということになり、ぼくもそう思うのだが、しかし日本の多くの若者は、その普通のことができない。なにしろ競争が嫌いなのだから、競争力を身につけようとすることさえ大きな抵抗を感じてしまうのだ。

そういう競争力のない若者が、不思議と堀江さんの言動を見て「自分たちのような日本の老害に苦しんでいる若者に有利な世界が来るのではないか」と勘違いしている。しかし、老害に苦しめられるような競争力のない若者が、世界中がライバルとなる本当の競争社会に放り込まれたとき、そこで勝てる見込みは万に一つもない。フェアな競争社会になればなるほど、どうしたってガッツのある第三世界の若者の方が有利だからだ。

その意味では、堀江さんに反発する「老害」の方が、まだ堀江さんの本質を分かっているといえるだろう。今の既得権益を失うと困るから、競争社会を切り拓かれては困るというわけである。

ではなぜ、若者は堀江さんを見て勘違いするのか?

その理由はほとんど一つだろう。彼らは、自分たちが既得権益を受けている側——ということが理解できていないのである。自分たちが、自身が最も嫌う老害と一緒のカテゴリーに所属している人種だと想像できないのだ。

例えば、堀江さんに定期的にアクセスできる若者は、スマホを所持してインターネットにストレスなくアクセスできる環境にあるだろう。それが、そもそも既得権益であり、チャンスの芽だということを理解できていない。

インターネットには、本当に信じられないくらいの量の情報が転がっている。インターネットの最大の利点といえば、その膨大な情報にストレスなくアクセスできることだ。そして、その情報を活かして何かを調べたり、学んだりできることである。勉強の道具になるのだ。教科書になるのである。

例えば、今ぼくはカメラや撮影の勉強をしているが、20年前は専門の学校か企業に入らないとアクセスできなかった知識や技術というものを、ほとんどただで、ほとんど移動せず、ものすごい勢いで吸収している。そうして、今ではお金を稼げるレベルにまで到達する道筋も見えてきた。プロとしての勘所がつかめてきたのだ。

その習得に費やした期間は1年にも満たない。それも、他に仕事をしながら、空き時間に勉強しただけでそこまで来た。それもこれも、インターネットの信じられないくらいの情報量の為せる技だ。チャンスというのは、多くの日本人が持っているスマホの中に、無限といってもいいほど大きく広がっているのだ。

ただ、インターネットの使い方を、多くの若者は知らないということがあるだろう。彼らはただ、自分たちを慰めるようなコミュニケーションに使うことに終始し、ちょっとも勉強の道具にしていない。

ぼくは、インターネットをどう勉強に役立てるか、その方法を知っている。しかし多くの若者は、インターネットにアクセスできる環境にあるにもかかわらず、そこから情報を引き出したり、勉強をしたりする方法を知らないのである。

その意味で、これからの人類にとって最も重要となるのは「勉強をする能力」となるのではないだろうか。これをどう身につけるか、あるいはどう磨いていくかというのが、人生の大きな分かれ道になる。
※この記事はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」に掲載されたものです。

 

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岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

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