※高城未来研究所【Future Report】Vol.643(10月13日)より
今週は、バーリ、パレルモ、トラパニなどイタリア南部をまわっています。
13日の金曜日に磔にされたと言われるイエス・キリストを忍んで、その日が近づくとイタリア各地の教会では若いキリスト教徒でごった返しますが、史実には13日に磔になったという記載はどこにもありません。
しかし、キリスト教圏では「13」は凶数だと長年言われており、最後の晩餐に座った人数が13人で、13番目の席に座ったのがイスカリオテのユダだと考えられていることなどもありまして、ホテルの部屋番号にも忌み嫌われる「13」号室を設置しないのが欧米の商慣習です。
一方、「金曜日」が恐怖の対象となった謂れは、イヴがアダムに「リンゴ」をわけ与え、楽園から追放された曜日だと言われてきたことに端を発します。
同じくアダムとイヴが死んだ日も「金曜日」とされ、ソロモンの神殿が破壊されたのもイエス・キリストが十字架刑に処せられたのも金曜日です。
また、聖戦を繰り広げたテンプル騎士団が逮捕されたのが10月13日の金曜日だったこともあり、いつしか「13日の金曜日」、なかでも「10月13日金曜日」が最大の大凶日として考えられ、日にちが近づくと教会にはキリスト教徒が溢れるようになりました。
ところが、統計学から見ますと、13日の金曜日はもっとも交通事故が少ない日として知られており、この背景には多くの人たちが13日の金曜日に限っては特に意識して注意深く運転している心理的作用が大きいからだと言われています。
この感覚は、日本で言えば「仏滅」に近いのかもしれません。
さらには、ホラー映画「13日の金曜日」シリーズの影響も多大です。
米国のスラッシャー映画(ホラー映画のサブジャンルで、サイコパスの殺人鬼が集団をつけ狙い、刃物で殺害する映画)の監督兼プロデューサーであるショーン・S・カニンガムによって生み出された「13日の金曜日」シリーズは、米国で大成功したメディア・フランチャイズで、長年にわたり世界で最も高い興行収入を記録したホラー映画シリーズとして君臨してきました。
この映画の多大な影響により、「13日金曜日恐怖症(Triskaidekaphobia、もしくはfriggatriskaidekaphobia)」と呼ばれる疾病(一種のパニック障害)も存在し、その数は米国だけでも1000万人を超えていると言われます。
実は、欧米のなかでもイタリアだけが少し変わっており、この国では「13」よりも「17」こそが凶数だと言われています。
17は「不運」「不名誉」などと紐付けられており、イタリア人にとってはとても不吉な数字です。
世界的には(グローバル感覚的には)13日の金曜日がアンラッキーデーとされていますが、イタリア人にとってはイエス・キリストの亡くなった金曜日の中でも「17日の金曜日」が特に不吉な日とされており、迷信深い年配者だと、お祝いの場で椅子などが17脚しかなかったら 1脚足して調節したり、記念日や旅行の出発日が17日と重ならないように注意したりすることもあるほどです。
この結果、グローバル感覚を持つイタリアの若年層は「13日の金曜日」を目掛けて教会へと出向き、年配者は「17日の金曜日」に教会へ行って厄払いをする、不思議な世代間ギャップによる礼拝の違いが起きています。
カトリック系の雑誌「イエズス」に掲載された記事によれば、ここ数年間にイタリアで閉鎖された教会は数百にも上っており,ほかにも使われなくなろうとしている教会も増え、若い僧職者を養成する神学校の数も激減していると報じています。
スマートフォンの普及による世俗主義の進行は、中東に限りません。
近年、若年層のカトリック教徒が激減するなか、もしかしたら「13日の金曜日」とはカトリックが仕掛けたマーケティングなのではないか、とイタリア南部で考える今週です(それほど教会は盛況です)。
ちなみにイタリア南部の日中は、まだまだ夏の日差しです!
高城未来研究所「Future Report」
Vol.643 10月13日日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。