岩崎夏海
@huckleberry2008

岩崎夏海の競争考(その18)

夕陽的とは何か?(前編)

※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!

岩崎夏海の競争考(その18)夕陽的とは何か?(前編)

 

「絶対的な価値」

自然と怒れるようになるためには、物事の正誤の判断が必要だ。しかし、正誤の判断を誤ると、重大な禍を招く危険性がある。そこで、正しく正誤を判断しなければならないのだが、このとき、物差しとなるのは「絶対的な価値」だ。

では、「絶対的な価値」とは何か?――といえば、いくつかあるが、そのうちの重大な一つが「夕陽」である。夕陽の美しさは絶対的な価値なのだ。だから、夕陽の美しさに鑑みて正誤の正しさを判断すれば、誤りが少なくなる。ある事象を見て「夕陽的か否か」が分かれば、その判断がつくのである。

では、「夕陽的」とは何か? 今回は、そのことについて考えてみたい。

 

「夕陽的」とは何か?

「夕陽的」とは何か? それは、言い換えれば「夕陽はなぜ美しいのか?」ということになる。では、なぜ夕陽は美しいのか? なぜ、誰も夕陽の美しさを否定できないのか? その答えの一つは、夕陽が「昼」と「夜」の両方をはらんでいる――ということだろう。

夕陽は、昼と夜の両方をはらんでいる。そして昼と夜は、「ポジティブとネガティブ」といった二元論の象徴的存在でもある。人間は二元論が好きだ。だから、すぐ「昼と夜のどちらが好きか」といった話になる。多くの人は昼が好きだろうが、しかし夜が好きという人もけっして少なくない。このバランスが、どちらかに完全に傾くということは永遠にないだろう。人類が存続する限り、昼が好きな人と夜が好きな人は、両方存在し続ける。

夕陽は、そのどちらをもはらんでいるのである。夕陽は、昼でもあれば夜でもある。いやむしろ、昼より昼っぽい側面があり、夜より夜らしい側面がある。これは、昼好きも夜好きも否定できないのである。夕陽を否定すると、自分が好きな昼や夜までをも否定することになるからだ。はっきり言って、夕陽はずるい。両者のいいとこ取りだからだ。

しかしそれゆえ、夕陽は強い。二元論の両方をいいとこ取りしているところが、夕陽の美しさの一つの理由――つまり夕陽的であるということだ。

1 2
岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。

その他の記事

高城剛がSONYのα7をオススメする理由(高城剛)
準備なしに手が付けられる、ScanSnapの新作、「iX1500」(小寺信良)
「たぶん起きない」けど「万が一がある」ときにどう備えるか(やまもといちろう)
「アジカン」ゴッチと一緒に考える、3.11後の日本(津田大介)
9月は世界や各人の命運が分かれる特異月(高城剛)
「テレビに出ている若手ロシア専門家」が古典派ロシア研究者にDISられる件(やまもといちろう)
人はなぜ働くのか(岩崎夏海)
「50歳、食いしん坊、大酒飲み」の僕が40キロ以上の減量ができた理由(本田雅一)
ワタミ的企業との付き合い方(城繁幸)
言葉で言い表せない不思議ななにかが起きるとき(高城剛)
新宿が「世界一の屋内都市」になれない理由(高城剛)
人間は「道具を使う霊長類」(甲野善紀)
普遍的無意識を目指すあたらしい旅路(高城剛)
中部横断自動車道をめぐる国交省の不可解な動き(津田大介)
フレディー・マーキュリー生誕の地で南の島々の音楽と身体性の関係を考える(高城剛)
岩崎夏海のメールマガジン
「ハックルベリーに会いに行く」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 基本的に平日毎日

ページのトップへ