川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」連載:アマゾンマナティを追いかけて 第4回より

アマゾンマナティを追いかけて〜赤ちゃんマナティに授乳する

川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」Vol.025より

m_6
<筆者撮影>

【おすすめ記事】
幻の絶滅鳥類ドードーが「17世紀の日本に来ていた」という説は本当なのか
ぼくがキガシラペンギンに出会った場所
「シマウマ、捕獲後に死ぬ」のニュースの裏側
動物園の新たな役割は「コミュニティ作り」かもしれない
 
 
 

ペルーのイキトスにある動物保護施設CREAにて、アマゾンマナティ野生復帰に立ち会ったときのリポートお届けする連載です。

バックナンバーはこちらから。「連載・アマゾンマナティーを追いかけて」はVol.022から掲載されています
http://yakan-hiko.com/kawabata.html

赤ちゃんマナティに授乳する

前回(メルマガ24号)は、若いアマゾンマナティにウォーターレタス(ボタンウキクサ)をあげる話だった。

今回は、もっと幼い「乳児」にはどうするか、という話。

ペルー領アマゾンのイキトスにある保護施設CREAでは、ぼくが訪ねた2016年4月の時点で、哺乳が必要な「乳児」のマナティが、5頭いた。

保護されるアマゾンマナティは基本的には小さな子なので、最初はミルクをあげる必要があるケースの方が多いそうだ。以前取材したブラジルのINPAでは、粉ミルクにカノーラオイルやオーツ麦やトウモロコシの粉、各種ミネラルを加えた濃厚ミルクを与えていたけれど、ここではどうか。

結論としては、通常の粉ミルクをあげている。Zoologic Milk Matrix のシリーズで、これはAmazonでも普通に売っているペット用の人工乳だ。ミネラルなどを足したりはするようだが、オイルや穀物粉などは入れていない。

ぼくも、お湯にといて一緒につくってみたが、まったくもって、普通だ。人間の赤ちゃんにあげる粉ミルクと変わらない。舐めてみても、変わらない。

m_1
〈ズーロジックは、ペットなどにはよく使われる銘柄。33/40は犬猫向け。水棲哺乳類としては鯨類向けというのも実はあるのだが、手に入りやすい犬猫用をベースにしていた〉
 
m_2
〈哺乳瓶は、コカコーラなどのペットボトルに「ちくび」をつけたもの〉
 

m_3
〈ぼくもお湯に溶かして作ってみたが、普通の人工乳である〉
 
 

しかし、乳児マナティにミルクをあげる時間は、やはり至福の雰囲気にあたりが満ちる。

コカ・コーラのペットボトルに簡易「ちくび」をつけた哺乳びんから、ごくごく元気よく飲む姿。

あるいは、まだここに来たばかりで、ちょっと緊張しており、なかなか飲まないのをなんとか栄養をつけてもらおうとがんばる飼育担当者。結果、ようやく飲みだす赤ちゃん。

授乳というシーンは、なぜかぼくたちにとって神々しく見えるものだ、と思う。

自然と、なにか光射すような印象がある。それは、人間の授乳であっても、ほかのほ乳類の授乳であっても、そうだ。

きっと、そう感じるように、我々はプログラムされている。

以下、写真で構成。

シアワセを感じてくだされば、ぼくもうれしい。

 
m_4
〈ミルク待機中〉
 
m_5
〈どの子にあげようかな〉
 

m_6
〈この子はあまり積極的に飲んでくれない〉
 
m_7
〈よし、飲んだ〉
 
m_8
〈ブラジル側のアマゾンマナティに比べて、ちょっと毛深いように思うのは気のせい?〉
 
m_9
〈授乳スタイルいろいろ〉
 
 

以上で、今回はおしまい。

このちっちゃい子たちが、元気に大きくなりますように。
 
(この記事は川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」Vol.025に掲載されています)

 
 
川端裕人メールマガジンの最新号・バックナンバーはこちらから。

 

川端裕人メールマガジン『秘密基地からハッシン!

2016年10月7日Vol.025
小説家・川端裕人のメールマガジン『秘密基地からハッシン!』Vol.025ミュンヘンのドイツ博物館に「史上初の液体燃料ロケット」を見にいく/赤ちゃんマナティ/旅ログ/マニラの動物園には「ゆるい」空気が流れていた/ドードー連載・佐賀編/再読企画・第四章>ほか

41

目次

01:アマゾンマナティを追いかけて(4)赤ちゃんマナティに授乳する
02:keep me posted~ニュースの時間/次の取材はこれだ!(未定)
03:旅ログ
04:宇宙通信: ミュンヘンのドイツ博物館に「史上初の液体燃料ロケット」を見にいく
05:どうすいはく:マニラの動物園には「ゆるい」空気が流れていた
06:連載・ドードーをめぐる堂々めぐり(25)これまでの追跡をおさらいしつつ、佐賀へ!
07:著書のご案内・予定など
08:特別付録「動物園にできること」を再読する(11)第四章「動物たちの豊かな暮らし」

※購読開始から1か月無料! まずはお試しから。
※kindle、epub版同時配信対応!

川端裕人
1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。普段は小説書き。生き物好きで、宇宙好きで、サイエンス好き。東京大学・教養学科卒業後、日本テレビに勤務して8年で退社。コロンビア大学ジャーナリズムスクールに籍を置いたりしつつ、文筆活動を本格化する。デビュー小説『夏のロケット』(文春文庫)は元祖民間ロケット開発物語として、ノンフィクション『動物園にできること』(文春文庫)は動物園入門書として、今も読まれている。目下、1年の3分の1は、旅の空。主な作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、アニメ化された『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)、動物小説集『星と半月の海』(講談社)など。最新刊は、天気を先行きを見る"空の一族"を描いた伝奇的科学ファンタジー『雲の王』(集英社文庫)『天空の約束』(集英社)のシリーズ。

その他の記事

苦手を克服する(岩崎夏海)
空港の無償wifiサービス速度が教えてくれるその国の未来(高城剛)
長寿国キューバの秘訣は予防医療(高城剛)
「朝三暮四」の猿はおろかなのか? 「自分の物語」を知ることの大切さ(福岡要)
テクノロジーの成熟がもたらす「あたらしいバランス」(高城剛)
コロナ後で勝ち負け鮮明になる不動産市況(やまもといちろう)
話題のスマホ「NuAns NEO」の完成度をチェック(西田宗千佳)
なぜゲーム機だけが日本発のプラットフォーム作りに成功したのか(西田宗千佳)
週刊金融日記 第295号【ビットコインで儲けたお金をベンチャー企業につっこもう、米国法人税率20%が実現すれば空前の好景気が到来する他】(藤沢数希)
高城剛さん、ビットコインなどの仮想通貨についてどう思いますか?(高城剛)
人間にとって、いったい何が真実なのか(甲野善紀)
タロット、ルノルマン……人はなぜ「カード占い」にはまるのか(鏡リュウジ)
深まる韓国経済のモヤ(高城剛)
コーヒー立国エチオピアで知るコーヒーの事実(高城剛)
起業家は思想家でありアーティストである(家入一真)
川端裕人のメールマガジン
「秘密基地からハッシン!」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回以上

ページのトップへ