やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

中国国家主席・習近平さん国賓来日を巡り、アメリカから猛烈なプレッシャーを受けるの巻


 どうも訪日そのものが見送りになるのではないかと懸念(期待)される、中国国家主席・習近平さんの来日問題ですが、国賓待遇であるかどうかは別として目下猛烈な押し引きの最中にあります。

 状況を整理しますと、要するに習近平さんが国賓での来日を行い天皇陛下にお会いされることが目標となっているのは過去の中国指導者が通ってきた道であり、日中の関係確立のためにはメンツのためにも避けて通れない「儀式」になっているということが背景にあります。

 これについては日中外交史で詳しいモノの本を読まれればかなりの精度で書かれておりますのでここで詳細を述べるのは避けますが(あまりにも込み入っていて1万字では済まない)、この問題の向こう側には米中対立が本格化するにあたり、アメリカとのパイプ役や利害調整の役割として日本のポジションに期待するとともに、貿易上、互恵関係にある日本との関係維持は超大国になっていく中国としても重要、という判断があるからではないかと思います。

 しかしながら、これらの問題というのは単に日本と中国の二国間で終わるものでは当然なく、アメリカをビッグブラザーとする日本が日米同盟を大前提とした安全保障を構築している以上はアメリカの利害をどこまで優先し、また東アジア、東南アジアにシーレーンを依存する地域大国日本のバックグラウンドや利害をどこまで超大国を目指す中国に認めてもらうのかという大問題が控えます。

 中国としては外交的な得点という意味でも安全保障外交、威信(プレステージ)を拡大するためにも日本との友好関係を確固たるものにする国賓来日は大変に重要であると言いつつも、日本としては中国を放っておくわけにもいかず、これ以上中国が経済的にも軍事的にも躍進を続け、諸外国への経済援助も含めた得点を重ねられると日本の重要度も必然的に下がっていきます。これはいかんともしがたく、良きところでうまくお互いが折り合うという意味でも今年の秋というのは大事な節目であるのは言うまでもありません。

 また、コロナウイルス起源問題も含めて中国はアメリカのみならず諸外国からの賠償請求を一番に怖れる立場にあります。一方で、一番最初にコロナウイルスを流行させてしまった中国は、一番最初に強権的な国民健康管理や外出禁止を強烈に敷き、コロナウイルス危機から脱しつつある国でもあります。つまり、最初に身軽になる中国は、感染者の拡大で四苦八苦しているアメリカや欧州に比べて、感染症対策において優越的な国家体制を持ち、国民の情報管理を徹底することで「国家として、中国共産党の指導部は優越した政治体制を具備している」と喧伝したいわけです。マスク外交が危険だとされる理由の一端はまさにここにあります。
 
【チャイナマネーリスク】「マスク外交」をゴリ押す中国が、オーストラリアやカナダと険悪ムードになっている背景について。

 
 さらに、28日に閉幕した全人代においても、中国は国家体制の盤石さについての自信を一層深め、非常に挑戦的で前向きに国家建設に向けた声明を多数発表しています。その中に、香港対策も出ていてさざめいておりますが、香港、台湾、南シナ海といった中国外縁の民族・主権問題というのは中国からすれば所詮は価値の低いもの、煙幕であり、実際にはAIIBや上海経済機構(SCO)などの一帯一路、弱小国へのベンダーファイナンスも含めた重商主義的な経済拡張によるプレゼンス強化が本筋であると見て間違いないと思います。

 そうであるからこそ、日本が中国に何を求め、アメリカと中国の対立が激化する中でポジションを見極めることが肝要です。しかしながら、中国が日本との関係改善に動いている以上は、日本はこれを好機としてどういう条件を中国に提示するのか、それをアメリカともうまく調整をしながら国益に繋げていくにはどうしたらいいのかという曲芸のような調整をしなければなりません。

 それをいまの外務大臣・茂木敏充さんに可能かといわれると微妙ですし、また、日中の政治家人脈の細り具合からするといざというときの調整が効かず、約束を取り付けても守られない怖れがあるとするならば、習近平さんの国賓来日自体を見送るのもまた日本の採るべき態度だろうか、と悩んだりもするところですね。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.298 習近平さん国賓来日を巡るあれこれを論じつつ、個人情報保護法制2000個問題やトラブルが止まらないSNSについて語る回
2020年5月29日発行号 目次
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【0. 序文】中国国家主席・習近平さん国賓来日を巡り、アメリカから猛烈なプレッシャーを受けるの巻
【1. インシデント1】個人情報利活用の障害であった地方自治体「2000個問題」は実は「3000個問題」だった件で
【2. インシデント2】世界中で曲がり角に直面しつつあるSNSの今日この頃
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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