やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

終わらない「レオパレス騒動」の着地点はどこにあるのか



 先日、テレビ東京がレオパレス21社の提供する主力マンション・アパートで間仕切りが行われていない違法建築が繰り返し行われていた可能性を示唆する番組を放送していました。

レオパレス21が3.7万棟調査へ 建築基準法違反疑い

テレ東に刺されたレオパレス21、火消しの力及ばず株に延焼

 放送そのものはリアルタイムでは観ていなかったのですが、昨年2017年12月に同じくテレビ東京で放送された番組では「三重県の僻地にレオパレス銀座と呼ばれる集合住宅が軒を連ねる一角」が報じられ、30年一括借り上げを謳うサブリース商法で急成長するにあたって、年度当たりの建築負担額を抑えるために安普請を敢えて行い建物のグレードを下げる、どころか事実上の違法建築にまで手を染めてしまうというのはかなりの問題であろうと思います。

 単に土地のオーナーを騙してサブリース契約をしたはずが10年程度で逆ザヤ状態となっている契約をいきなり解除していく商法は、それこそかぼちゃの馬車を運営していたスマートデイズ社と裏書となったスルガ銀行のような図式は数多く、同じくサブリース契約を主力事業に組み込んで成長してきた大東建託や、途中から参入組の旭化成などさまざまな会社で問題が勃発しているというのが実情です。遅れ馳せながら、国土交通省も沢山の告発を経て問題に気づいて注意喚起のアナウンスが始まりました。

サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!〜トラブルの防止に向けて消費者庁と連携〜

 すでにレオパレス21社に対しては、不動産オーナ―同士が連携を取り集団訴訟になっていますが、何しろ既存の建築戸数だけでいえばすでに3万7853棟もあるわけでして、違法建築の疑いのある戸数が200棟レベルで収まるはずもなく、レオパレス21社のいう「1年かけてすべての建物を点検」というのんびりとした対処では許されないだけでなく、社内の連絡体制はどうだったのか、企業としてどのレベルまで問題を認識し違法建築を繰り返してきたのかという別の大きな問題の入り口になっていく可能性が高くなります。正直、耐震偽装で問題となった姉歯事件どころではないレベルの話が全国3万7千棟以上で発生していると考えれば、物事の深刻さも理解できようと思います。行政も過去にどのような告発があったのか、それに対して適切に指導・対処してきたのかを問われるでしょうし、民間的にも行政的にも刑事的にも着地の非常にむつかしい事件に発展していくのではないかと思われます。

 それにしても、2000年代以降行われてきた違法建築、という文言から察するに、15年近くずっと行われてきた違法建築においてオーナーと監理者との間でどのような話し合いがもたれていたのか、また少なくとも200棟あるという違法建築に対して会社がどのレベルまで関わってきたのかは、文字通り根幹の部分をかなり問われることになるでしょう。

 売上至上主義で成長路線を確保してきた咎、と一言で言えば終わる話ではありますが、それでもレオパレス21社は同様のサブリース会社同様高収益の不動産事業者大手として定着してきただけに、同じく経理がチャレンジしてしまった東芝や、検査結果偽造で信頼が地に落ちてしまった神戸製鋼、あるいはユーザーの無知に付け込んで法外なサポート契約を強制してきたPCデポなど、ある意味で不祥事の発生形態においては「経営陣が成長ストーリーを捨てきれない」「問題を知っても経営陣が責任を取らない」という同根に位置するものだと感じられます。

 おそらくは、人間が集まってできるのが組織である以上、どこまでもこの類の問題は起きるのでしょうが、せめて何万棟も建てる前に歯止めが効かせられるだけの仕組みを企業組織内や行政、メディアとして構築できないものなのでしょうか。さっさと告発して、行政が臨店調査して… って動きがスムーズにいけば、かなりの程度すぐ処分できるぐらいのネタだと思うのですが。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.226 レオパレス騒動の件につっこみを入れつつ、某仮想通貨周辺のあれこれや自動運転車の今後をぼんやりと考えてみる回
2018年5月31日発行号 目次
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【0. 序文】終わらない「レオパレス騒動」の着地点はどこにあるのか
【1. インシデント1】そろそろ仮想通貨周りで大物大臣に飛び火の様相
【2. インシデント2】社会は自動運転車の事故をどう受け入れていくのかという問題
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
【4. おっさんの育児事情】(メルマガ内不定期連載気味)

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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