高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

kindle unlimitedへの対応で作家の考え方を知る時代

高城未来研究所【Future Report】Vol.271(2016年8月26日発行)より


今週は、東京にいます。

ここ近年の東京の夏を振り返りますと、もはや亜熱帯気候になったことは事実のようで、通年を見ても、四季というより雨季と乾季の二季になったと実感しています。
これだけ天候が不順で予報も当たらないと、予定通りにドローンが飛ばせないことが悩みの種でして、法律に抵触しない250g以下の機体でも、さすがに天候には勝てません。
特に小型機は風に弱いので、本当に困ります。
そんな折には、台風でガラガラな地下街での買い物が、東京の楽しみのひとつになりました。

さて、都内をウロウロしておりますと、読者の方々にお声をかけていただき、「あたらしいLIFE PACKING読みました! いきなりアンリミテッドはすごいですねー!」とよく言われるのですが、「アンリミテッド!? そんなの紹介してたかな?」と思ったら、amazonのkindle unlimitedという読み放題サービスのこと。

このメールマガジンをお読みの方はご存知だと思いますが、リリース直前にはアフリカの通信環境の悪い地域におりまして、確か出版社からショートメールでアンリミテッドに関する問い合わせがあった際に、「なんか格闘技みたいな名前ですね。よくわからないけど、新しいほう!」と返事をしたことを思い出しました。

なるほど、と事情がわかった今週です。

それゆえ、出版の未来に関する取材依頼が多い自分の状況がやっと理解できた次第です。
「LIFE PACKING2.1」の出版タイミングは昨年から決めてましたので、kindle unlimitedのタイミングを狙ったわけでも何でもなく、キラーコンテンツと言われましても、悪いのは(良かったのは)アフリカの通信事情なんです。
通信速度が9.6kbpsで、とてもWebは見れませんでしたから、ショートメール程度の説明じゃ、なんのこっちゃで、日々、周囲の危険動物と格闘してまして、それどころじゃありませんでした。

さて、出版の未来を考える前に、作者ではなく読者としての自分を考えると、読み放題のサービスはとても魅力的で、だったら、作者としても賛同しなければならないと、改めて思います。
出版社の意向もあるのでしょうが、このあたりが十年後に活躍する人とそうでない人の別れ道になるかもしれません。
内容や発言がどんなに面白く画期的でも、読者に届ける姿勢ひとつで、作家の考え方がわかる時代なんだと思います。

先行する音楽業界を世界的に見ますと、聞き放題のサービスはもはや中心的存在に躍り出て、本年2016年は、はじめてデジタルがフィジカルの音源を抜き去り、その功績は、数年で4倍に成長したストリーミングにあります。
すでにストリーミングからの収益は、全体の収益源の19%を獲得し(前年の14%から更に成長)、売上は前年から45.2%と大きく増えました。
結果、音楽産業全体の売り上げが著しく増加した牽引力になっているのは間違いありません。

当然、このようなデータは、今週ハタと気がついた後に調べた「僕なりの辻褄あわせ」に過ぎませんが、読み放題サービスは、大手出版社は困るというか理解不能でしょうから、そこに新参者がチャンスを見出すことができるのは確かだと思います。
読み放題のようなあたらしい試みは、出版不況と呼ばれる雨続きのなかの、パッと光がさす、ちょっとした晴れ間なのかもしれません(←ポエム的言い訳)。

ええ、amazonのkindle unlimitedが何なのか、やっとわかったのが今週なのは、内緒です。
当分対外的には「日本でのunlimited開始時期に狙ったキラーコンテンツなんです!」と、言うつもりなんですよ、勿論(笑)。

かくある理由で、「出版の未来」に関する取材はお引き受けできませんが、「よくわからないけど、新しいほう!」で、いいじゃないですか。
間違っていたら、即座に進路を再変更するフットワークさえあれば。
ホテルのビュッフェバイキングもそうですが、音楽聴き放題も書籍読み放題も、人間の「腹」には、限界があるものです。
「放題!」は耳障りがいいですが、人間の耳や目の数も、時間も増えるわけではありません。

みなさま、もう少しだけ良い夏を過ごしましょう!
晴れ間をぬって。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.271 2016年8月26日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

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高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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