やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

ユーグレナのミドリムシ量産でバイオジェットとかの話はインチキなのではないか


 長崎を拠点とするオリエンタルエアブリッジ社は、第三セクター方式による地域の足を航空機で提供する企業で、ユーグレナのバイオジェット燃料の供給を受ける代わりに、一部出資を受けるという報道がありました。

ユーグレナとオリエンタルエアブリッジ、バイオジェット燃料や崎県離島地域の振興などで資本業務提携

 ところが、その後さしたる続報はなし。

 むしろ、出てくるニュースは事故発生で引き返しましたとかいう話で、国土交通省に話を聞いてみても「バイオジェット燃料の話は具体的に進展があるとは聞いていない」と言われてしまう始末です。

対馬行きORC機 不具合で引き返す 出発10分後、気圧異常

 そのユーグレナ社は、なぜか史上最年少CFOとか言い始め、それどころじゃないだろうと思うんですよね。

ユーグレナが18歳以下の「CFO」を募集する理由

 そして、伊藤忠がなぜか海外でのミドリムシ培養で発表をしていました。どうも持続可能社会を実現するSDGs投資の一環として、バイオ燃料の育成には力を入れたいということのようなのですが、今度は南米でもやるとのことで、どんどん話がおかしくなっていきます。

ミドリムシ海外培養実証事業の開始について

[注目トピックス 日本株]ユーグレナ---大幅続伸、ミドリムシの量産化報道が伝わる

 石油から精製されるケロシンに比べて、バイオ由来の燃料抽出では約10倍もの価格差になるのは仕方のないところで、これは単純にミドリムシが真核生物であり、最良の環境であっても光合成で得たエネルギーを蓄積したうえで分裂するのは加速させられないことが理由です。

 ソラリス株など珪藻由来の単細胞生物であれば、温度や雑菌に影響されず日照量と水の中の光の浸透さえ確保できれば1日4回程度の分裂をしてくれますが、そもそもプラントや培養技術の問題ではなくミドリムシという生物固有の機能の問題で大型化も分裂促進も高エネルギー化も限界があるのではないか、と思われるのです。

 その結果として、2011年からユーグレナは2020年ごろまでに量産を終え実用化と出雲充さんは仰っておるようですが、まだ海外で試験プラントがどうだと発表しているのはうまくいかないからでしょう。2014年には、ネットでも沖縄でのプラントが非稼働なのではないかという嫌疑がかけられたままになっています。

ミドリムシで東証1部に上り詰めたユーグレナ、一部アウトロー系サイトから砲口を向けられる

 そして、なぜか東京大学発のベンチャー企業の一角としてユーグレナ社が持ち上げられているわけですが、真核生物であるミドリムシにこだわり、他のバイオ燃料に比べても圧倒的な効率の悪さ故に実用化試験など何年かけても無駄なのはユーグレナ社も分かっていることでしょう。

 だからこそ、いまや単なる健康食品事業や遺伝子検査事業でしょぼしょぼやっているだけでは事業価値が維持できないので、バイオジェット燃料や史上最年少18歳CFOなど話題づくりを積極に行い、伊藤忠や東京大学などのビッグネームをうまく借りながらどうにか頑張っているだけなのでは、という気にすらさせられます。

 そもそも、クロレラに代表される健康食品には、健康効果が乏しいものがあります。クロレラは東京都薬剤師会すらも効果がないと明言するほど、まったく健康に良い影響のない食品であることは言うまでもありません。

いわゆる健康食品について

 このような会社が、サステナブル社会で必要なバイオ燃料の提供を行えると標榜をし、一流の組織との交流があることを公開していながらも、その実態は効果がいまひとつ判然としない健康食品を売っているだけの事業しかもっていないのに、なんかこう凄く良い企業であるかのように喧伝されてしまうように見えるのはアベノミクス銘柄だからでしょうか。

 年末年始にかけてこのあたりの命題を鉢巻に書いて沈思黙考したいと思います。

 読者の皆様に置かれましても良い年の瀬をお迎えください。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.284 ユーグレナのミドリムシ量産への懸念と、ソフトバンクのARM社への懸念と、マルウェアEmotetへの懸念などを取り上げてみる回
2019年12月27日発行号 目次
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【0. 序文】ユーグレナのミドリムシ量産でバイオジェットとかの話はインチキなのではないか
【1. インシデント1】 「またソフトバンクか」って感じの、半導体ARM社と微妙なリスク
【2. インシデント2】対岸の火事だったはずがいつの間にか我が国でも深刻な事態のEmotet
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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