やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

【疲弊】2021年衆議院選挙の総括【疲弊】


 今回は大変に疲れ果てた2021年衆議院選挙でありましたが、所属先のシンクタンクからの委託を受けて、某組織の選挙実務の中の人をほんのりやらせてもらい、投開票日が過ぎたいまも大反省会に駆り出され事後策を練る作業をしております。

 疲れはしましたが楽しかったなあというのが一番大きく、大変に充実した3週間ほどでありました。

 また、公示前調査から投開票日までずっと伴走していたのですが、結論としては「議席数予想は外れました」。思い返すといろんなことはありましたが、外れましたね、見事に。担当していたのは東京や南関東だったのですが、事情があって他の地域の得票予想もお手伝いしたりしましたが、これもやっぱり外れました。

 どう外れたのかと言えば、激戦区を見込んで、実力伯仲と思っていた選挙区は「2か所を除いて44か所で自民党が勝った」。つまり、激戦だぞ、与野党五分五分じゃねえのかなと思っていたところは、ほとんどが自民が勝ってしまったことになり、これは激戦でも何でもねえじゃんかと言われるとその通りです。

 で、いままさに「おい、これ何で外れたの」っていう話を猛烈にフィードバックしている最中なのですが、いくつか出ている話としては「基礎データを集めるための手法が変更になった」「投票所ごとのデータに厚みを付け直す『支局読み票』という調整機能がうまくいかなかった」というあたりでしょうか。とりわけ、某新聞が頑張って実施した選挙区ごとに区切ったネットパネル調査(郵便番号で振り分けるやつ)にすら出口調査が精度で負けるというのは画期的で、この大ハズレが常態化するようなら出口調査やらないでいいじゃんという極論も出かねない問題となります。

 生データを集計し直し、再度予測モデルで検証をし直してもやっぱり自民党は勝たない結果になるので、生データを収集する手法に問題があったことは間違いがないのですが、ではいままでの出口調査でここまで当日予想さえも外れるかと言われるとそんな経験はないので(過去のデータも検証して予測モデルを組んでいることもあり)、何か根本的なところで間違えていたのかあと反省することしきりです。

 他方、自民党苦戦、敗戦濃厚ということで落選判定をした選挙区はかろうじて全命中はしました。これで外れたら大変なことになるので、仕方がないと言われればそれまでなのですが。公示前に実施したオートコールで出た支持率などの数字が、実際のところ出口調査で期日前・投開票日の合算で出る内閣支持率・政党支持率は間違いなく傾向として出ていたので、その点ではオートコールやRDDと、ネットパネルに期日前出口調査を組み合わせて、なるだけ情勢取材などの数字を思い込みで足したり引いたりせず、そのまま解析したほうが正味の数字になるのでしょうか。

 その点で言いますと、メルマガ本編でも書きますが「全国・投票日時点での岸田文雄政権の支持率は概ね61%」で間違いないと思います。選挙戦を通じて自民党岸田政権のやろうとする方針や政策に関する認知が深まり、その浸透とともに支持率が上がってきたというのが実際のところではないかと思います。

 また、逆に公示前の調査ではまったく問題なかった東京8区石原伸晃さんや神奈川13区甘利明さんについては、途中の期日前出口調査で劣勢が判明し、加速度的に形成が悪くなっているということで早期に苦戦の評価を出せたというのは良かったかなとは思います。石原伸晃さんについては比例復活もできずに無事無職という流れでありまして、これはこれで民意であることは間違いありません。

 千葉神奈川山梨は事前予想がほぼ全的中だったものの、肝心の東京が抱える25選挙区で調査方大失敗とも言えるミスは残念でなりません。頑張ったんですがねえ。某候補者は激戦選挙区ということで当選保留にしておいたら当日得票が当日出口調査を遙かに超える得票をし、そのまま9時台に当選確実を打つことになったり、さすがにビックリしましたが。

 このように、どんなに頑張っても有権者の動きはなかなか簡単にはとらえられないよ、特に都市部の選挙は、という反省こそ前回の都議選で経験したことではあるのですが、そこから半年も経たない国政選挙でもう一回味わうことになるとは思いもよりませんでした。

 どうであれ、これが百発百中の情勢分析の決め手! というものはないのだ、ということが分かっただけ良かったなと思います。反省と決意を込めて、メルマガにもいまいまのホヤホヤの段階で思うことなど述べてみたいと思います。はい。
 

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Vol.348 おまたせしました! 2021年衆議院選挙の総括を語りつつ、これからの寒い冬の予感や某社社名変更の話題などに触れてみることに
2021年11月1日発行号 目次
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【0. 序文】【疲弊】2021年衆議院選挙の総括【疲弊】
【1. インシデント1】資源インフレとスタグフレーションが醸し出す寒い冬
【2. インシデント2】ネット時代も社名変更で禊を済ませることでできるようでなによりです
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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