津田大介
@tsuda

津田大介の『メディアの現場』vol37より

中部横断自動車道をめぐる国交省の不可解な動き

私はヤラセだと思っています

津田:アンケートをすることになったはいいものの、そのやり方に問題があったと――。

米田:このアンケートは、3種類の方法で実施されたんですね。まず、それぞれの家にアンケート用紙をダイレクトに郵送する「戸別配布」。そして、高速道路のサービスエリアや道の駅、県や市の出先機関なんかに置いておいて、自由に持っていってもらう「留置配布」。それから、ウェブによるアンケートです。このうち問題があったのは、「戸別配布」と「留置配布」です。

津田:具体的には、どのような問題があったのですか?

米田:まず、戸別配布から。山梨県北杜市では、アンケート用紙を受け取れなかった人が大変多いんです。まず、別荘にはほとんどアンケート用紙が送られていませんでした。別荘の数は、私が調べた限りでは8000戸ぐらいあるようです。2012年4月12日開催の委員会で配られた「第2回コミュニケーション活動の結果について」という資料によると、山梨県北杜市で戸別配布された枚数は、最終的には21,866枚でした。[*15] この配布の仕方にまず問題があります。

津田:長野県側ではどうでしたか?

米田:長野県側を見ると、前回同様、すでに中部横断自動車道が開通済みだったり、整備中だったりするエリアでもアンケート用紙が配られていました。佐久市では18,730枚、小諸市で43,933枚が配布されています。しかも、第2回アンケートには「本アンケートの対象区間」としてアンケートを取るエリアが明記されています。これらのエリアは、その対象区間外となっているんです。ちょっとおかしくありませんか。本来の対象エリアは、小さな村ばかりで、あまり人口がありません。ですから、佐久市や小諸市のような住民数の多いエリアの人たちがアンケートに回答したら、地元の声はかき消されてしまいます。まあ、私たちは、長野県側のことについては、あまり言及するつもりはありませんが。

津田:なるほど。国交省は「中部横断自動車道を開通させよう」という自分たちにとって都合のいい結果を誘導したい。だから、本来であれば対象外のエリアにもアンケートを配布した――そんな見方もできるわけですね。

米田:そうですね。

津田:先ほどのお話では、アンケート用紙をいろいろな場所に置いておく「留置配布」にも問題があった、ということですよね。具体的にはどんな問題があったのでしょう?

米田:このアンケートは、1人1票、投票できるんです。つまり、家族が4人いれば、4票持っているということになります。でも、山梨県の留置先では「各世帯につき1枚しか渡さないよう、国から指導を受けています」と言っていたんです。僕が文句を言ったら、状況は少し改善したんですけど――。ところが長野県側の留置先には、どんどん持って行ってくださいと言わんばかりに、アンケートがバーンと積んであるわけですよ。

津田:(「第2回コミュニケーション活動の結果について」を見て)各留置所に置かれたアンケートの枚数も、資料にまとまっているんですね。[*16] ただ、場所によってその数には、だいぶバラつきがあるようですが……。

米田:はい。今回は45個所に置かれたんですね。このリストを見ていると、一部に例外はあるものの、次のような傾向があることがわかります。地元住民が行きやすい市役所やその支所では置かれている枚数があまり多くない、道の駅やサービスエリアでも同様――と。少し変わった留置先は、県などにある国交省の出先機関です。こういうところで配布枚数が多いんですね。

津田:だいたいどこも数十枚から数百枚程度の配布。なのに「山梨県県土整備部道路整備課」のような国土交通省の出先機関には、1,912枚とすごくたくさん置いてある――。回答数も602枚と高めです。県庁の道路整備課なんて、普通行かないですよね。

米田:行く人間は、役人か出入りの業者みたいな関係者でしょう。

津田:建築関係の役場に留置されているアンケートの枚数が多い――端的に言えば、「ヤラセの可能性がある」ってことですよね。

米田:はい。私はヤラセだと思っています。統計学的に見ても明らかに不自然です。

津田:つまり、国交省が自分たちにとって有利な方向に話を進めるため、ヤラセとは言わないまでも、結果に影響を与えるため、動員をかけた可能性があると。

米田:そういうことだと思います。私たちは、アンケート用紙が手に入らないので、まわりに呼び掛けてウェブからたくさん回答を行ったんですよ。最終的な回収件数は戸別配布で11,752件、留置配布で4,619件、ウェブ方式で3,521件となりました。

1 2 3 4 5
津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

その他の記事

東大卒のポーカープロに聞く「場を支配する力」(家入一真)
フィンテックとしての仮想通貨とイノベーションをどう培い社会を良くしていくべきか(やまもといちろう)
元は取れるのか!? 定額衣装レンタル「bemool」を試してみた(小寺信良)
「どうでもいいじゃん」と言えない社会は息苦しい(紀里谷和明)
『STAR SAND-星砂物語-』ロジャー・パルバース監督インタビュー (切通理作)
萌えセックス描写溢れる秋葉原をどうするべきか(やまもといちろう)
北朝鮮危機の背後にある金正恩の怯えとアメリカのメッセージを読み解く(小川和久)
対人関係の9割は「自分の頭の中」で起きている(名越康文)
依存から祈りへ(名越康文)
オランウータンの森を訪ねて~ボルネオ島ダナムバレイ(1)(川端裕人)
京成線を愛でながら聴きたいジャズアルバム(福島剛)
「文章を売る」ということ(茂木健一郎)
「苦しまずに死にたい」あなたが知っておくべき3つのこと(若林理砂)
光がさせば影ができるのは世の常であり影を恐れる必要はない(高城剛)
音声で原稿を書くとき「頭」で起きていること(西田宗千佳)
津田大介のメールマガジン
「メディアの現場」

[料金(税込)] 660円(税込)/ 月
[発行周期] 月1回以上配信(不定期)

ページのトップへ