西田宗千佳×小寺信良対談 その4(全5回)

PCがいらなくなる世界

PCレスで失うもの

小寺 もしかしたら、ちゃんとやる人のパーセンテージって、いつの時代もあんまり変わらないのかもしれない、っていう仮定もできますね。昔は、きちんとしてる層というのがものすごくアクティブで目立ってたので、そこで産業が回ってた。

そこが仮に30%だとすると、7割の、わりとどうでもいいや的な人たちがそれにぶら下がってると。今は、その30%は変わらないんだけど、それがものすごくいろんなことに分散しちゃった。

西田 あっ、あと、“きちんとさん”がお金を使わなくてよくなった、ってのはあるかもしれない。昔は、きれいな文字を打とうと思ったら、インレタを買いこんでこなきゃいけなかった。でも今は“きちんとさん”じゃなくても、プリンタとパソコンがあれば、それ以上お金かける必然性がないわけですよね。

小寺 ああ、でもその点では、僕は逆のデータ持ってるんですよ。今……小学校の子を持ってるようなお母さん方って、パソコンが家にないの。

西田 ああー。

小寺 昔はあったんでしょう、きっと。パソコンがブームだったWindows XPの時代はあったんだけど、そこから買ってない。そうなると、サークルとかの名簿作る、みたいなことができないの。

西田 そうか。うん、なるほど。それは昔、携帯メールも何もなかったから“きちんとさん”が付くってプリントアウトして、みんなに回すって形をしなきゃいけなかったわけだけど、もう極論するとそれも要らない、携帯電話の上でみんな登録しあって、タグつけて、電話帳わけておけば終わり、みたいな世界になってきて。

告知もデコメでOK、って話になっちゃえば、PCを使って“きちんと”する必要性がなくなってるんだ。

小寺 そうなの。だから、きちんとしたものを作らなきゃいけなくなった時に、誰もできないんだよ。会費を集めるのに名簿が要るね、って話になった時に、紙の名簿が誰も作れないわけ。

普通ああいうのはほら、紙で、この人はもらった、とかマークをつけたり。

西田 当然やりますね。

小寺 そういうのがない、できない。

西田 うん。それは、わかるな……

小寺 まだまだ要る技術なんだけど、もう自分たちではできなくなっちゃってるというところがあるんじゃないか。これは大変なことですよ。本当に名簿がいる時に、手書きに戻っちゃってるんですよね。

西田 あ、それはあるかもしれない。タイプで何でもする人と、携帯じゃなかったら手書きっていう人の比率が、昔に比べると変わってる印象がたしかにする。

これだけIT機器が普及してるんだから、みんなタイプするようになってくのかと思ったらそうじゃなくて。

小寺 そうじゃないんですよ。あれはなんなんだろうね?

西田 ああ、そういう──そうか。パソコンにおけるWord/Excelモデルの、出荷比率の低下、というのもありますね。

小寺 そこか。

西田 昔は、別に家庭モデルでも、Word/Excelバンドルモデルというのが当然、圧倒的にシェアが多かったわけですよ。ところが今は必ずしもそうじゃなくて。

それは僕らが、「いや、一般家庭ではWord/Excel使うタイミングは意外と少ないですよ」って言い始めたってこともあるんだけど。要は極論すると、IEしか使ってない、っていう使い方の人が増えてんですよね。

で、特に低価格モデルって入ってないわけですよ。本当にいるの? って言われた時に、昔は「そういうきちんとしたこともあるから」って思ったんだけど、買う時に「ま、なくていいか」ってなって。で「なくていいか」ってなると「覚えなくていいか」ってなるわけでしょ。

そこで僕らだったら、たしかにGoogleDocsとかそんなんでいいや、って別の発想をするけど、そういうことじゃなくて。

小寺 使わなくなっちゃうんですね。

西田 使わなくてよくなっちゃうんです。だから、MS Officeの新しいのが出ます、っていうニュースに対するインパクトが、一般メディアで圧倒的に低くなってる。

小寺 アップデートもしなくなってるね。

西田 うん、たしかに。もうほとんどの人には関係ないんだもん。

 

<第五回に続く>
第一回の「ノマド」ってなんであんなに叩かれてんの?はこちらから
第二回のIT野郎が考える「節電」はこちらから
第三回の人は何をもってその商品を選ぶのかはこちらから

 

小寺信良のメルマガ『金曜ランチボックス』vol.44「対談:Small Talk」より>

 

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