津田大介
@tsuda

『メディアの現場』特別号外より

「政治メディア」はコンテンツかプラットフォームか

コンテンツ作りは大前提だけど……

井之上:継続的なメディア運営のためにはビジネス的に「まわっている」ことが必要だと思いますので、ビジネスの側面から一つ質問させてください。津田さんは、どちらかと言うと「コンテンツ」を作って売っていくイメージなのでしょうか。ドワンゴの川上会長もツイートしていましたが、プラットフォームを作ってそれをビジネスとして成立させようとすると、ニュースサイトという側面から考えてもYahoo!のような大量のアクセス数が必要になりますし、システムレベルのプラットフォームで勝負をするなら世界的な規模のものを目指さないと難しいですよね。

津田:そうですね。AmazonやAppleあるいはGoogleがライバルになりますからね。

井之上:これは私見ですが、GoogleやAmazonやAppleでさえ、プラットフォーム業として儲けを出すのは、この先どんどん難しくなる可能性が高いと考えています。実際、世界一のIT企業であるAppleは、プラットフォーム業ではなくて、製造業から圧倒的な利益をあげているわけですよね。もちろんプラットフォーム業と製造業をリンクさせたアイデアが素晴らしいわけですが。とにかく、情報というよりむしろプラットフォーム利用料こそ、技術が進めば進むほど無料に近づいていくものだと思うんですね。もしそうだとすると、プラットフォーム業というのは、ビジネスとしては面白みが無いなあという気が私はしているんです。津田さんはこのあたりについてはどのようにお考えですか。

津田:それは僕がもう何年も考え続けている問題です。僕が立ち上げにかかわったエンタテインメント情報メディア「ナタリー」は、愚直にコンテンツを作ってビジネスにしている典型ですね。労働集約型ビジネスの典型とも言える。プラットフォーム業は、シェアを取るのも大変ですが、すぐに取って代わられる危険性もある。例えば、MySpaceの没落は、プラットフォームの脆弱性を露にした典型的な事例だと思います。Facebookの登場以前は、あれほど「わが世の春」を謳歌していたのに、今は見る影もありません。

コンテンツを作るという行為は、結局のところ労働集約であって、働いた分については高い確度でお金にすることができる。だから一定のニーズがあればビジネスとしては手堅い。津田マガの読者が来月から突然半分に減るというのは、ほぼあり得ないことですからね。発行し続ける限り、急激に減ることはない。これは、時代の変化に対して耐性があるという言い方もできる。だからコンテンツを作るのには良い面もたくさんあるんですよ。でも、コンテンツ型情報ビジネスは、一度仕組みを作れば、あとは勝手に成長してお金になる……ということがありません。あぶく銭が入ってこないんですね。これは仕事に大きなお金が必要になる僕の立場からすると辛い。ですから、「ナタリー」の時代から、どこかでアクセルをふかせないものか、ずっと考えていたんです。

政治メディアについて言えば、労働集約で良いコンテンツを作っていくのは大前提です。キュレーションも大事だけど、キュレーション以上に価値があるのは、キュレーションの対象になる根源的なコンテンツを作ることです。僕はこれまでずっとそれをやってきたわけだし、それができないようなら、たぶんその先にも行けない。ネットを使ってラクをしようというつもりはまったくありません。ただどこかでアクセルをふかすために、インターネットというツールを使って、プラットフォームというか、「場」としての機能を持たせていきたいとは思っています。

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津田大介
ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師。一般社団法人インターネットユーザー協会代表理事。J-WAVE『JAM THE WORLD』火曜日ナビゲーター。IT・ネットサービスやネットカルチャー、ネットジャーナリズム、著作権問題、コンテンツビジネス論などを専門分野に執筆活動を行う。ネットニュースメディア「ナタリー」の設立・運営にも携わる。主な著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中央公論新社)など。

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