3月7日「奏でる身体2」に向けて

「奏でる身体」を求めて

着物を着ると、響きがよくなる?

 

2001年12月、末期癌を患っていた母を看取りました。茶道を嗜んでいた母は着物が好きで、それまで着物には興味がなかった私ですが、在宅で介護をする中で、病床の母から着物の手入れや着方、立ち居振る舞い、決め事を教わりました。そして、母が亡くなった直後から、母の着物を着るようになったのです。

 

母を失った大きな喪失感でくじけそうになるときも、母の着物に包まれていると気持ちも落ち着き、心安らかに過すことができました。朝起きて、着物に着替え、割烹着を身につけて家事をする日々が一年ほど続きました。それは私にとって母の供養という意味合いがありました。

 

ところが、そんな日々を送る中で、私は自分の奏でる音に、変化が生じていることに気づきました。以前よりも、響きのある、いい音になってきている。演奏も伸びやかになり、何より吹いている私自身の身体も楽になっていました。

 

着物を着始めてからも、フルートのレッスンをするとき、アンサンブルの練習に行くときには洋服に着替えていたのですが、やはり、着物を来ているときのほうが音がよく、だんだんと、どこに行くときも着物で通すようになっていきました。クラシック音楽の世界ではあまり着物を日常的に着る人はいないのですが、周囲も私の着物姿に好意的で、私にとって着物で演奏することが、だんだんと普通のことになってきました。

 

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