3月7日「奏でる身体2」に向けて

「奏でる身体」を求めて

2014年3月13日、武術研究者の甲野善紀先生を迎えての鼎談「奏でる身体2」を行うことになりました。ここで、フルーティストとしてのこの20年ほどの間の試行錯誤の日々を振り返ってみたいと思います。

「なぜ音楽家が、武術研究者に身体操法を学ぶ必要があるのか」という疑問にもある程度、答える内容を述べたつもりです。(白川真理 フルート奏者・音楽家)

 

・「奏でる身体2」の詳細はこちら

http://yakan-hiko.com/event.php?id=20140313

 

 

公開レッスンでの大失敗

 

今から20年ほど前、まだ私が30代だった頃のこと。フルートの公開レッスンを受ける機会がありました。受講生はほとんどが20代の若手ばかり。ドイツで学び、日本でプロのはしくれとして演奏活動を始めていた私は、受講生の中では年齢も、経験も頭ひとつ抜けていたはずでした。

 

しかし、私はその場で、大失敗をしてしまいました。若手に見られているということ、プロとして、恥ずかしい演奏はできないという緊張感があったのでしょう。通常のコンサート以上に上がってしまい、心臓はドキドキと聞こえる程の速い動悸を打ちました。一音出すだけでもブルブルと息が震え、まともな演奏ができず、大恥をかいてしまったのです。

 

しかしこの時私が痛感したことは、「なぜこんな失敗をしてしまったのだろう」という後悔というよりは、「これは、たまたまではない」ということでした。思い通りに行かない居心地の悪さ、失敗するかもしれないという恐怖心と背中合わせの中で演奏を続けてきた自分自身の演奏に、改めて気付かされたのです。

 

そのときまでの私は、本番のたびに無理矢理奮い立たせて「さあ、やるぞ! 私は大丈夫!」という過剰にテンションを上げることによってごまかしてきました。もちろん、それで乗りきれることもありましたが、常に身体には違和感が残り、次はどうなるか、その次はどうなるかと不安で、毎回、いわば「丁半博打」を打つような気持ちで本番を重ねてきていました。

 

後輩や、同僚に囲まれた中での「大失敗」は、私にとって、「このままじゃダメだ! 変わりたい」と真剣に考えるきっかけになったのです。

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