城繁幸
@joshigeyuki

城繁幸×西田亮介特別対談(前編)

働かないのか? 働けないのか? 城繁幸×西田亮介特別対談(前編)

「採用のハードル」を上げているのは終身雇用制度?

5I2A4294sm西田:年功序列型賃金が基本とされている日本の会社では、年齢が上がっていくほど総合的に価値の高い仕事を担当できる、担当した経験を持っていることが期待されるわけですが、一方で、無業者の年齢もどんどん上の方にシフトしている現実があります。つまり、年齢が高いほど、より高度な価値生産の経験と実績を持っていないと採用してもらえないし、転職も困難です。

無業状態の人にスキルはまるで積み上がっていない。企業の求める人材像と、職を求める人の現実がどんどん離れていっているわけですね。これも無業者を苦しめている「社会の仕組み」の問題だと思うんです。現在の支援は、就職の入口への支援が中心ですが、高度なスキルや自己尊厳の修得にまでつなげていく連続的な支援が必要に思えます。

5I2A4441sm:無業の人たちは、言い換えれば、「若い時の苦労」をする機会がない人たちとも言えます。そういう人の受け皿をどうするのか。海外だとそこに教育がはさまりますね。「今はよい職が見つからないからMBAでも取りにいこう」という話になる。そして、そこで培った人脈を次の職で活用したりする。

でも、日本の場合は一度、会社組織からドロップアウトしてしまうと、たとえMBAを取ってきても、なかなか元には戻れない。

なぜかと言えば、終身雇用・年功序列のいわゆる日本型雇用が採用されているからです。この辺りは『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』でも解説しましたが、大企業や官公庁では、年齢が上がるにつれて賃金が上がっているので、年齢に相応しいスキルのない人は、悪なんです。30歳で職歴がない人は極悪です。だから、失業をしたり、無業の期間があって、履歴書にブランクがある人は採用されない。

まず、戦後日本の雇用システムの大きな問題は、国が社会保障を企業に丸投げしてしまっていたことです。大企業は、社会保障の一環として、従業員を「終身雇用」することを義務付けられてしまった。「終身雇用」をしなければならないという話になれば、企業はよほど能力のある人しか採らなくなります。ある程度の年齢に達した失業者がなかなか次の職を得ることができなかったり、病気やケガをした人が無業者になってしまう根本的な原因はここにあると私は思います。

労働者を長い期間を預からなければいけないわけですから、企業としては保守的になるのが当然です。最近は、採用の時にメンタルトラブルを出しやすい傾向の人を試験で把握してはじく人事サービスが売り出されたりしていますが、こうした行き過ぎたサービスも、終身雇用が原因ですよ。

ではどうすればいいのか。社会保障を企業から切り離して、ある程度労働者を流動化する。そうすると、企業にとっては「採用する人材のハードル」が下がるので、失業者・無業者にとっても、相対的に状況はよくなる。

(後編に続きます)

 

(撮影:今井康一)

 

 

2014年6月20日発売!

『「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話』

城 繁幸 著

 

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ある日、「サラリーマンなんて言われたことやってれば楽勝だろ」が信条の山田明男に、とんでもないミッションが与えられてしまう。史上初の”終身雇用”プロ野球球団「連合ユニオンズ」への出向! 山田が見た終身雇用システムの光と影とは!?

 

――衝撃のストーリーが教えてくれる、すべての働く人のための生き残り術!

 

眼を閉じて、10年後の自分を思い浮かべてみてください。

「責任ある仕事を任され、安定した収入を得ている」そんな自分を明確にイメージすることができますか?

「さすがに失業している……ってことはないだろう」と思ったあなたは、日本の雇用環境についての見通しが少し甘いかもしれません。

人事部門には、「人材は職場環境で作られる」という格言があります。確かに、環境は人を変えます。でも、その環境を変えるのもまた人であり、その人自身の心の持ちようです。

さて、あなたは10年後に仕事で困らないために、今、どんな心構えで、何を準備すればいいのでしょうか。

この本では、「もし日本労働組合総連合会(連合)がプロ野球チームを保有して、全選手を終身雇用にしたら何が起こるのか」を細かくシミュレーションしました。そこには多くの日本人が見落としている「雇用の真実」を見つめるヒントが詰まっています。

「ありえないこと」が普通に起こる激変の「10年後」の世界で力強く生き残る方法、お伝えします。

 

<目次より>

1主体性を持って仕事をする
2嘘と本当を見分ける方法
3年功序列に期待するな
4環境が人を変える
5流動性のない組織に成長はない
6”研修”ですべてを変えるのは無理
7自分の市場価値を高める
8世の中にただ飯はない
9きれい事しか言わない人を信用してはならない
10ローンは組まないほうがいい
11若手に仕事を任せる
12過去の成功体験は捨てる
13「人に優しい会社」などない
14会社の”社会保障”には期待しない
15ブラック企業の心配をする暇があったら勉強しろ
16未来の成功体験はこれから作られる

 

四六判並製1C・248頁
定価 本体1600円+税
ISBN978-4-906790-09-8

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城繁幸
人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。

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