紀里谷和明
@kazuaki_kiriya

紀里谷和明のメールマガジン「PASSENGER」より

自分の「生き方」を職業から独立させるということ


 

「不自然」な生き方をやめれば幸せになれるんじゃないか

俺は、すごくわかりやすく言うと「みんなが自然と調和して生きていければ、それが一番幸せなんじゃないか」と思うんですよね。この「自然」という言葉は、必ずしもエコロジー的な思想に偏って言っているわけじゃないんです。

たとえば、朝起きて、普通にごはんを食べて、みんなと一緒に仕事して、夜になれば寝る。生き物として、ごく普通の暮らしの営みです。これが守れれば十分だと思うんですよ。けれど、これだけの成長を進化を遂げた上で、そうした普通の暮らしを(地球レベルで)守ることができるのか。そういう岐路に立たされている。

有名だろうが、セレブだろうが。「それがどうしたの?」とみんなが思う時代がきてほしいと思う。

そういう時代が来ない限り、この世は地獄ですよ。非常に生きづらい世界になっていくだろうなあと思います。

「不自然」という言葉があるように、自然でない。

自分の仕事にも、「不自然」な部分はあります。クリエイティブというよりは、ファイナンスの面で。「美しくないな」と感じる。そこは考えなおさなきゃいけないなと思っています。

これからの希望について

今までの技術革新を見ても、人間が「工夫」する能力ってものすごいですよね。おそらく人類全ての能力をもってして「工夫」をすれば原発もいらないし、エネルギーが行き渡るし、きっと戦争もなくなるんじゃないかと思うんです。

でも、そういう「工夫」を別にしたくないという人たちがいるから、実現しないんじゃないか。

「分類するのをやめよう」と言っている俺がこんなことを言うのはなんだけど、今、世の中の人は、「みんなでシェアしたい人」と「ひとりじめしたい人」の2種類に大別される気がします。

過去の経済論も、結局はそこに集約される。
希望はもちろん「シェア」派が、工夫を生み出すことにある。
けれど、「ひとりじめ」派は、そういう工夫を是としない。

俺自身、若い頃は「ひとりじめ」派でした。「能力がある人間が、それだけいい思いができるのは当然だろう」と。

けれど、実際自分がそういう世界に片足を突っ込んでみたら、「こういう場所にはいたくないし、ここにいる人たちともつきあいたくないな」と思ってしまったんですよね。僕はすごく貧乏なのも嫌だけど、すごくお金持ちなのも嫌なんですよ。

「ひとりじめ」派の数は、おそらく絶対数としては少ないはずなんです。けれど、能力を持った人の割合が多いから、ものすごく工夫を重ねる。一方、「シェア」派は、それほど工夫を必要としない。現状維持でも困らなかったりするので、革命を起こそうと思わないんじゃないかな。これは、感覚的にそう思うんですが。

世界はどちらかというと「ひとりが全員を奴隷にする世界」の方向に進んでいる。でも、みんなが意識を「シェア」のほうにシフトしていくことができれば、それが希望になるんじゃないでしょうか。

――紀里谷さんは「すごく貧乏なのも嫌だけど、すごくお金持ちなのも嫌」ということでしたが、一方でサラリーマンはとりあえず「お金持ち」を目指して頑張ってるんじゃないかと思うんです。たとえば、堀江貴文さんみたいに「自分の能力でビジネスを立ち上げて、ラグジュアリーな生活をしている成功者」に憧れている人も多いのでは。

どうなんでしょうね。堀江さんも、重要なのはお金ではないというか、「自分がやりたいことができればいい」というスタンスなんじゃないかと思います。

「憧れ」がわけのわからない車輪を動かして、その車輪が暴走することによって人の血が流れている。

そのとき抱いている「憧れ」がそもそも間違っているんじゃないか? と。

こういう状況の中でも、希望はあると思います。けれど、みんなの意識が、今と違う方向にいかない限り、その先には絶望しかないような気がする。

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紀里谷和明
映画監督・写真家紀里谷和明。生まれ育った熊本から15歳で単身渡米、全米屈指のアートスクールで建築・デザイン・音楽・絵画・写真などを学ぶ。世界中を旅しながら、PVやCMなど表現の場を広げ、2016年には初のハリウッド長編映画を公開予定。 紀里谷和明公式サイト:Kiriya.com/クリエーターSNSサイト:freeworld.tv

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