※高城未来研究所【Future Report】Vol.564(2022年4月8日発行)より
今週は、バルセロナにいます。
久しぶりにバルセロナに訪れましたが、空港で検査もなく、以前と変わらず入国できて少し拍子抜けしました。
日本を立つ前に、スペイン政府が発行する健康チェック・アプリケーション「Spain Travel Health」というフォームの問いに答えると、QRコードがメールに届き、それを預け入れ荷物をピックアップする前に設けられたカウンターで、2回以上接種証明があるワクチンパスポートと共に提示するだけ。
並ぶことも長時間待つことも検査もなく、入国は以前とほとんど変わりません。
現在、街中などの屋外ではマスク無しでもOKで、公共交通機関やレストラン、スーパーマーケットなど屋内に入る際には要着用と一応決まりがありますが、これも来週には撤廃される予定で、すでになし崩しになっている状態です。
カフェ等でも「グリーンパス」のチェックは、一度もありませんでした。
しかし、あれほどいた観光客の姿は、ほとんど見当たりません(体感85%減)。
街全体が閑散としていて、以前は人口160万人の20倍にあたる年間観光客3200万人超のオーバーツーリズムが大問題になっていた同じ場所とは思えません。
当時は面白いことに、バルセロナを訪れる観光客の不満60%を占める第1位が「観光客が多すぎること」。
なにしろ、ボケリア市場を擁するランブラス通りは、平日で1日に20万人、1年間に直すと延べ1億人が通行し、そのうち21%が地元の住人で、残り79%は観光客が占めていたほど毎日がラッシュ状態でした。
現在、この観光客がほとんど訪れていませんので、街が閑散としていると感じるのも無理はありません。
日系の旅行代理店にお話しを伺うと、以前は1日50名以上アテンドする日もあったそうですが、いまではひと月に1〜2組程度とのこと。
街を歩いても、特にアジア人観光客が少なくなっている印象です。
数年前までバルセロナの観光収入はGDPの14%を担い、12万人の雇用を生み出していました。
現在、観光業者にたいし政府補償があるとは言っても、チップをはじめとする「裏の観光収入」は補償されません。
バルセロナ随一の観光名所サグラダファミリアは、コロナ禍のなか建設が止まってしまい、当初予定されていたガウディの没後100年にあたる2026年に完成は厳しい状況だと見られています。
また昨年、市民の「元気の素」だったバルサで汚職が発覚し、高額で契約していたメッシを放出しなければならないほど財務状況が悪化。
カンプノウ・スタジアムも命名権をはじめて売りに出し、今年から「Spotifyカンプノウ・スタジアム」になることが決まりました。
あわせて、ユニフォームも「Spotify」が獲得。
これにより「楽天」とのパートナーシップは、本年6月30日までで終了となります。
その上、「テレトラバハール」(リモートワーク)が常態化したこともあって、住人たちは以前のように街に出ていません。
ですが、気候だけは変わらず、いまも晴れた日はTシャツで街を闊歩する人も少なくありません(大抵は、北欧かドイツの移住者か旅行者ですが)。
世界随一の観光都市だったバルセロナ。
この夏、果たしてどこまで街に人が戻ってくるのか。
バルセロナの行方が、ポスト・パンデミックの未来を示すように思える今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.564 2022年4月8日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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