やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

コタツ記事問題


 江川紹子さんがブチ切れてた本件ですが、ぶっちゃけコタツ記事問題なんて昔からありましたよね。

江川紹子さん、コタツ記事を量産するスポーツ紙に苦言「ほとんどドロボーじゃないか」「この発言もコタツにしてみろよ」

 なんでコタツ記事なんてやるかって言うと、当然ですがヤフー配信され、サイトに検索エンジン経由で客が来て広告を踏んで儲かるからです。儲からなかったらコタツ記事なんてやらんわけじゃないですか。

 で、江川紹子さんであれ芸能人であれコタツ記事で他の媒体に使われる著名人は「おいしい」と判断され、いろんなPR会社が使うようになるというエコシステムがありますが、結局は、最終的にヤフーニュースに配信されるから儲かるんでやるってだけだと思うわけです。

 そして、これらのコタツ記事は、スポーツ紙のような、大手全国紙の傘下にある各媒体がそれなりにちゃんとしたメディアとウェブ側が捉えているところほど生き残っている。昔は、文春や新潮が報じる早刷りをサイゾーやJ-CASTが「文春がこれこれを報じると分かった」と誌面先取りで記事にするのでこれまたブチ切れてそのような記事は出なくなりました。

 コタツ記事の場合は同じ手法で限りなくやる専門部隊まで用意している編集部もおりますので、今回はコタツをやられた江川紹子さんがブチ切れたところで「すいませんでした」と記事を降ろして終わりです。そして、しばらく江川紹子さんのネタは使わない。ほとぼりが冷めたところでまた使う。どこまでが引用、どこからが盗用かすらはっきりしないところでやるからたちが悪いんですよね。

 これって、ヤフーニュースは特に、親会社の大手全国紙との付き合いがあるから雑魚ウェブ媒体は選別の対象としながらも大手全国紙の下にいるスポーツ紙は温存してるだけでしょう。要するに、積極的に使ってるわけですよ。透明性も公平性もなく、似たようなコタツ記事が大量に流れてくる中で、どこぞの新聞社OBがヤフーニュースのトピックスやトップの選別整理をやってるところでつるんでるんじゃないかと思われてもおかしくない。

 これでフェイクニュース対策頑張っていますとか、公平なニュース配信のために公共事業と同じレベルで対応を行っていますなどと言われても、でもまあそれもビジネスですよねってことで終わってるんじゃないかと思うんですよ。だって、あなたのところでコタツ記事が配信され、広告が載せられ、収益として回っているから質の低いコタツ記事がなくならないんじゃないですか。

 その横で、アドフラウドがどうだとか、プラットフォーム事業者としての責任がなんだと議論している人たちはいい面の皮だと思いますよ、だって大元の事業者が改善するつもりが無さそうなんだもの。ヤフコメにしてもYouTubeのコメント欄にしてもフィードで配信される広告にしても、そろそろ真面目に品質について考える必要があるんじゃないかと思います。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.423 コタツ記事が生まれる根源などを考えつつ、診療報酬改定という超難題を論じながら世に蔓延る陰謀論をどうしたものかと憂える回
2023年11月27日発行号 目次
187A8796sm

【0. 序文】コタツ記事問題
【1. インシデント1】診療報酬改定の問題で
【2. インシデント2】あきたこまちRと似非科学と陰謀論的野党
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

グローバリゼーション時代のレンズ日独同盟(高城剛)
高2だった僕はその文章に感情を強く揺さぶられた〜石牟礼道子さんの「ゆき女聞き書き」(川端裕人)
戸田真琴の青春を黒い雨で染める~『コクウ』(『ほくろの女は夜濡れる』)監督榊英雄&主演戸田真琴ロング座談会(切通理作)
山岡鉄舟との出会い(甲野善紀)
可視化されているネットでの珍説や陰謀論に対するエトセトラ(やまもといちろう)
【ダイジェスト動画】名越式仏教心理学を語る(名越康文)
猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉 第6回:椅子に固定されない「身体の知性」とは何か(宇野常寛)
「交際最長記録は10カ月。どうしても恋人と長続きしません」(石田衣良)
「犯罪者を許さない社会」っておかしいんじゃないの?(家入一真)
迷う40代には『仮面ライダー』が効く(名越康文)
「病む田舎」の象徴となるような事件が多いなあという話(やまもといちろう)
ドラッカーはなぜ『イノベーションと企業家精神』を書いたか(岩崎夏海)
アーユルヴェーダで本格的デトックスに取り組む(高城剛)
メディアの死、死とメディア(その1/全3回)(内田樹)
「ノマド」ってなんであんなに叩かれてんの?(小寺信良)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ