あさま山荘事件にはどんな意味があったのか
あさま山荘事件とは、一言でいえば「政治闘争の敗北」である。「革命の敗北」といった方がいいかもしれない。ある革命を起こそうとした若者グループが、警察の手によって鎮圧され、敗北した事件があさま山荘事件だ。
そして肝心なのは、その模様がテレビで1週間にわたり放映されたことだった。それも、1日24時間、ずっとその模様を放送し続けたのだ。それが、日本中で大きな話題となった。信じられないくらいの視聴率を獲得したのである。多くの人が、それを伝えるテレビの画面に夢中になった。数多くの国民が、一週間、それを伝えるテレビ放送を見続けたのだ。
テレビといっても、今のすっかり影響力を失ってしまったテレビではない。紅白歌合戦が80パーセントもの視聴率を獲得するような、それが日本文化の中心に位置していた頃のテレビだ。その影響力は計り知れないほど大きかった。特に、子供にとって大きかった。当時の子供たちは、テレビというと夢中になってみていた。そのため、この時代にはウルトラマンや仮面ライダー、戦隊ヒーローといった子供向けの番組がいくつも生まれた。それらのコンテンツがいまだに続いていることを考えると、この頃のテレビの子供に対する影響力がいかに凄まじかったが想像できるだろう。
その凄まじい影響力を持ったテレビが、一週間の長きにわたって、革命の敗北を放映し続けたのである。それは、当時の子供たちに巨大な影響を与えた。彼らの心には、決定的に「ああいう政治闘争をしてはいけない」という意識が植えつけられたのだ。「ああいうふうに熱くなって戦うのはバカだ」という概念が埋め込まれたのである。そういう考えは、特に小学校高学年から高校生に至るまでの、思春期の若者たちを直撃した。そうして彼らは、一気に「闘争」というものへの嫌悪感をふくらませた。戦わなくなったのである。熱くなるのを拒否しだしたのだ。
そんな彼らは、当時「しらけ世代」と呼ばれて話題になった。
そういう「世代の特徴」を作ってしまうほど、この事件の影響は大きかった。そうして、そんなシラケ世代がやがてもう一つの歴史的な出来事「バブル経済」と遭遇し、やがてそれが、今の若者に奴隷根性を植えつけていくこととなるのだが、それらは次回以降にお伝えしていく。なお、この項は「前編、中編、後編」と、3回にわたってお送りする予定である。
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岩崎夏海
1968年生。東京都日野市出身。 東京芸術大学建築科卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、主にバラエティ番組の制作に参加。その後AKB48のプロデュースなどにも携わる。 2009年12月、初めての出版作品となる『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(累計273万部)を著す。近著に自身が代表を務める「部屋を考える会」著「部屋を活かせば人生が変わる」(累計3万部)などがある。
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