※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!
岩崎夏海の競争考(その28)努力することの本当の意味
努力とは何か?
競争に勝つためには努力が必要である。ところが、この努力が難しい。なぜかといえば、ほとんどの人が「努力の本質」を分かっていないからだ。「努力とは何か?」を分かっていない。
何かを分かっていないこと、をするのは難しい。方法論を確立していないから、本能や勘を頼りにするしかない。それでも、人間にはすぐれた本能や勘が備わっているから、誰でも何度か努力に成功した経験がある。ところが、それは長続きしない。方法論が確立していないから、くり返すことができないのだ。
そのため、努力を継続的にするには、まずは努力の本質を理解する必要がある。そこで今回は、「努力とは何か?」ということについて述べていく。
「努力は裏切らない」という格言の本当の意味
ところで、努力にまつわる有名な格言の一つに「努力は裏切らない」というものがある。努力というものは、すればするだけ身になるし、ムダではない――ということだ。これは、何を意味しているのだろうか?実はこれも、人間かいかに心理的なバイアスに影響されるか――ということを表している。
前回も述べたように、人間には負の心理的バイアスがかかりやすい。「自分はこれが苦手なんだ」と、つい思ってしまう。そうやって敗北する理由を探している。そのため、勝利するにはそうした負のバイアスを取り除く必要があるのだが、それを可能にしてくれるのが「努力」なのである。
「努力」というのは、人間を「負の心理的バイアス」から解き放つ効果がある。想像してみてほしい。あなたが何かの勝負に臨んだ際――それについて世界中の誰にも負けないくらい努力を積んできたという自負があるなら、負けることの「言い訳」を探すだろうか?逆に、「勝てる」ということを素直に信じるはずである。自分はこの道に習熟している、という自信を持てるはずだ。そういう「正のバイアス」を持つことこそ、実は努力が持つ大きな効用なのだ。それがまた「努力は裏切らない」という格言の指し示す意味でもある。つまり、弱気になりそうな自分を「努力した」という気持ちが鼓舞してくれる。そしてそれは、いつまでも継続するので「裏切らない」というわけだ。
このように、努力というのはそもそも「正のバイアス」を得るためにするものなのである。だから、もともと「正のバイアス」を持っている人にとっては、努力は必要ないともいえる。しかし、人間はそこまで単純に「正のバイアス」を持つことができないので、ほとんどの場合で「努力」というものがだいじになってくる。

その他の記事
![]() |
沖縄の長寿県からの転落で考える日本の未来(高城剛) |
![]() |
東芝「粉飾」はなぜきちんと「粉飾」と報じられないか(やまもといちろう) |
![]() |
地域マネージメントのセンスに左右される観光地の将来(高城剛) |
![]() |
原色豊かな南米で歴史はすべてカラーなのだということをあらためて思い知る(高城剛) |
![]() |
週刊金融日記 第280号 <Instagramで女子と自然とつながる方法 〜旅行編、米朝核戦争に備えビットコインを保有するべきか他>(藤沢数希) |
![]() |
週刊金融日記 第310号【教育工学も基本は恋愛工学と同じ、米中貿易戦争勃発、目黒駅の安くて美味しい立ち飲みビストロ他】(藤沢数希) |
![]() |
ソフトバンク・Pepperの価格設定から見る「売り切り時代」の終わり(西田宗千佳) |
![]() |
フェイクニュースか業界の病理か、ネットニュースの収益構造に変化(やまもといちろう) |
![]() |
「支持政党なし」の急増が示す政治不信の本質(やまもといちろう) |
![]() |
大国の世相変化に翻弄される香港の今(高城剛) |
![]() |
ピダハンとの衝撃の出会い(甲野善紀) |
![]() |
なぜ今? 音楽ストリーミングサービスの戦々恐々(小寺信良) |
![]() |
ぼくがキガシラペンギンに出会った場所(川端裕人) |
![]() |
古舘伊知郎降板『報道ステーション』の意味(やまもといちろう) |
![]() |
池上彰とは何者なのか 「自分の意見を言わないジャーナリズム」というありかた(津田大介) |