本田雅一
@rokuzouhonda

本田雅一メールマガジン「続・モバイル通信リターンズ」より

中国バブルと山口組分裂の類似性

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経済のことをよく知っている人には釈迦に説法になってしまうが、バブル経済というのは日本でも中国でも、同じようなプロセスで発生する。投資対象の価値が上がり続けている状況では、より大きな投資を続けたほうが資産を増やすことができる。投資物件の価値が増えたところで、その物件を担保に別の物件に投資する。この動きが熱を帯びてくると、実際には物件に需要がないにもかかわらず、投資家どうしが物件購入で競合するようになるため、さらにその価値が(名目上は)上がっていく。

しかし、投資家どうしの競合というのは、実際には市場で需要が高まって価格が高くなっているわけではないから、実際の価格と需給バランスの関係がおかしくなってしまう。つまり、本来はそんなに高い価値がないのに、さも価値があるような価格がついてしまうわけで、だからこそ実態のない“バブル”というわけだ。

中国の場合、日本と同じように不動産投資をきっかけにバブルが始まり、不動産投資の行き詰まり感が株式投資へと流れたものの、時間差で顕在化してきている不動産バブル崩壊、ほぼ同時期に起きているギリシャ危機などの複合的な要因が中国株式市場を急落させている。表面から見えているのは一連の動きだけだが、実は構造的に中国のバブルは(かつての日本よりも)かなりヤバイ……脆い状況にある。

 

なぜ中国のバブルは“必ず”はじけるのか

中国のバブルは必ずはじける。というよりも、既にはじけた状態と言ってもいい。一党独裁共産主義国の中国だからこそ、それが表出しないよう中央政府系の銀行(中央銀行だけではなく中国の銀行はどこも国有企業)を操って景気をコントロールしようとしているが、それも限界になってきた。なぜなら、もともと存在しない需要を作り出していたからだ。

中国に行くと、本当にこんなにたくさんの人がマンションに住むのか? と思うほど、高層の集合住宅がたくさん建ち並んでいる。これは北京や上海といった大都市だけではなく地方都市でも普通に見られる風景で、それらを見るだけであれば「中国の発展速度はスゴイ」ということになる。

実際、中国は世界の工場として急速に発展し豊かになっていたが、リーマンショックを機に変化が訪れた。世界的に需要が落ち込んだこの時期、中国中央政府は金融引き締めに向かった。それと同時に、中国はオリンピック前後の勢いを失いたくなかったため、何が何でも経済成長率8%を守るという方針も打ち出している。

まるで東芝の“チャレンジ”のようだが、中央政府はこの成長目標を地方政府にそのまま押しつける。ところがオリンピック特需も終わった中国で、国民の生活も豊かになり、世界でもっとも安かった労働コストもベトナムの2倍となってきた現在、なかなかこの目標は達成できない。

本来ならば輸出中心の経済構造から、内需中心の経済構造へと切り替えて行かねばならない。ところが性急に結果を出さねば目標を守ることはできないため、地方政府は不動産開発を強力に推し進めるようになった。

中国では生産在庫もGDPに算入されるため、とにかく不動産を開発すればGDPは上がっていく。折しも中国人が豊かになって不動産需要が高まっている中、不動産投資が集まってバブルになっていたころだったため、このやり方は当初はうまく行っていた。

ところが、過剰な供給をしても、いずれ不動産価格の上昇は止まる。なぜなら不動産の家賃収入は価格ほどに上がらないからだ。不動産に投資しても、家賃収入の利回りが悪くなる。その結果、不動産価格の上昇は止まり、さらに反転して下がってきてしまう。すると、投資のために手持ち不動産を担保に入れていた投資家は、次の投資ができないばかりか、担保価値が下がって追加の担保を要求されるようになる。

実際、数年前から中国の不動産価格は以前のような上昇をしなくなっている。日本の土地やマンションを購入している中国人が急増しているというニュースを聞いたことがあるだろうが、これは中国で行っていた不動産投資が行き詰まり、そのお金の行き場がなくなって日本に流れていたものだ。

この状況で中国の中央政府が取った策は、繰り返しの金利引き下げだった。これにより中国のお金は株式投資に回ったが、さらに不動産投資に向かっていたマネーが、一気に株式市場になだれ込んで、株高が生まれた。こうなると不動産になっていた中国マネーが、次々に株式投資へと向かい、さらに不動産価格の下落を招くというスパイラルに入り、止まらなくなってしまっている。

一方で株高は凄まじいものがあり、2014年から2015年にかけて、ピーク時には2.5倍も株価が上昇。ところが、それが7月になって一気に30%も下がってしまった。その後、中国中央政府が株取引に制限を加えた上で、さらに国の金を使って株式を買うと宣言して下落が止まったが、さらにその後、下落が始まっている。

なぜなら、地方政府が経済成長の目標達成が不動産では難しくなってきた時期に開発した「理財商品」と言われる金融商品に破綻が広がってきているからだ。理財商品とは地方政府が発行しており、年利で10〜25%の高利回りを打ち出してお金を集めている。ただし、元金保証はない。

この理財商品を地方政府が販売し、またもや名目上の経済成長をさせるために人が住まないゴーストタウンを生み出している。地方政府の役人は、良い数字を上げ続けていれば、いずれ中央へと進出のチャンスが生まれるため、後に残された地元のことなど考えずに、次々に理財商品でマネーの先食いをして名目上の数字を向上させていた。

この理財商品は償還期間が5〜10年で途中解約ができない。個人投資家の多くがこの理財商品を買っているため、株式急落で信用取引の追い証を入れようにも手元に現金がないという人が増えている。理財商品を転売しようと思っても、地価下落が始まっているため、買い取ってくれる人もいない。

実は他にもいくつも破綻のパターンがあるそうだが、名目上の数字を追いかけて破綻するのはよくある話だ。企業などでもシェアや売り上げの必達目標を強く求め、その結果、売り上げは出たものの赤字が拡大したといった話はよく耳にする。

実体のないバブルを発生させなければ回らないジレンマに陥った中国経済が、その繰り返しの限界に達してはじけてしまうのは極当然のことだと言える。30%以上の株価下落は、信用取引をしてきた投資家を破綻させ、投資家の破綻は“強制決済”という名の“売り”を生じさせる。この流れはもう止まらない。

 

中央からの圧力が“膨張”を生み出す

山口組に限った話ではないが、暴力団は中央の執行部に所属の組が上納金を納めることで成り立っている。その金額は小さな組織でも100万円以上とのことだが、以前ならばそれほど問題となる金額ではなかった。大きな暴力団組織に所属していれば、それだけで“シノギ”を得るチャンスはいくらでも転がっていたからだ。

ところが暴力団対策法が施行され、さらに各都道府県で暴力団排除条例が施行されるようになると、これまでのようにシノギを得ることができなくなった。“シノギを削る”という言葉があるが、削るほどにもシノギが出せないという状況の組も少なくなく、支払いができないがために組が解散になることが少なくないそうだ。実際のところ、ピークに比べると山口組の構成組織は70%以下にまで下がっているという。

上納金が減ってくると、シノギをきちんと出すよう必達目標を掲げるのは、中国中央政府が地方政府に貸した成長率目標と同じだ。しかし、法的にがんじがらめになっている中で、必達目標を簡単に達成できるわけではない。

では不法行為に走るのか? というと、そう簡単な話でもない。……

※この続きは、本田雅一メールマガジン「続・モバイル通信リターンズ」2015年9月2日 Vol.021<中国経済危機の構造と広域暴力団分裂の相関性>をご購読ください!

 

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IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

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本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

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