切通理作
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切通理作メールマガジン「映画の友よ」(はないゆい)

狂気と愛に包まれた映画『華魂 幻影』佐藤寿保監督インタビュー

狂気の果てに向かう愛の成就で生まれた名シーン

 
――狂気の果てに愛の成就に向かうわけですが、錯乱した狂気の場を撮る時のこだわりを教えてください。前作ほど血しぶきのシーンはなかったように感じたのですが。

佐藤 映画館の中は大人数での芝居での描写にしたかったので、グロテスクな部分は劇中劇の中でたっぷり時間をかけて、(川瀬陽太と愛奏の)ふたりの世界の中で表現しました。

華魂の中央部(花粉)はトゲのイメージなんです。人によって、トゲが内側に向かう人間もいれば、外側に向かう人間もいる。実はトゲは長さが変えられるようになっているんです。華魂も光なのか花粉なのか、なんで憑依するのか分からない部分があるわけじゃないですか。ビジュアル的な部分もあるが、キーワードがあって、人さまに刃を隠しながらも刃を向けちゃうような、自ら刃をむいているような感覚を持ち得る人間もいる。

それがエロスの方に向かうのか、バイオレンスに向かうのかは、ベクトルの方向性の違いで、エロスとバイオレンスは隣り合わせ、鏡合わせという感覚で捉えている。

ロボットが持ち得ないものって愛じゃない? 言葉のうえでは表現できるかもしれないけど、愛は持ち得ない。人間もひとつの動物で温もりを求めるけど、それぞれの生き方の質によって、その求め方の方向性が違ってきてしまうんだよね。

映画館の錯乱した狂気のシーンは、男女がそれぞれ集まる場で、普段隠されたものが表出してしまうという「愛の激情」という激しい空間を見せたかった。テーマとして、それが届けられたら良いのではないかと思っています。
 
――暴力、肉欲、金欲、近親相姦、同性愛、いろんな欲望や愛の形が剥き出しにされ、映画館にすべてが集まっている。劇中劇でも残酷なシーンはあるけれど、そこでも愛を成就するという。

佐藤 愛を成就する、究極の愛だよね、あれは。
 
――劇中劇の映画の中で、川瀬さんが愛奏さんと性交しながら回転する、名シーンが出てきますね。

佐藤 回転するねぇ。あれは、愛するものに取り囲まれたいみたいなさ。少年少女の頃、カーテンの裾にぐるぐる巻きに包まって隠れたことない? そういう感覚に近くて、愛する者に表面的ではなくて、肉体も血も細胞も溶け込みたいみたいな。最後のシーンは、ひとつの肉体の融合なわけじゃない。血の融合。究極の愛としてそういう描写があってもいいんじゃないかって。半分遊びもあるんだけどさ。劇中劇って、ああいうアイデアがどんどん浮かんでくるんだよ。回りすぎたら、今度は逆回転しちゃったりとか(笑)
 
――回り過ぎてますよね(笑)

佐藤 いやいや、人間の愛の描写というのは他人様が見ると可笑しいものなんだよ。ああいう愛の形もあってもいいんじゃない。

俺も昔は血が出てくる映画なんて見たくないって思ってたんですよ。でも自分が作ったら必然的に血が出ちゃうんです。エロスをやろうとしたら血が必然的に出てきてしまうみたいな。あえてグロテスクに見せようとか、ここは残酷にやろうとかではなくて、愛の表現としての血、その延長線上で必然性があって作っている。
 
――残酷さやグロテスクさを見せるのではなくて、愛を突き詰めたら血に至ったということでしょうか。

佐藤 『激愛』で、男が女に耳打ちされて、「大丈夫だよ」と答える。何を耳打ちしたのかは、見る人によって捉え方が違うから、そこはあえて出していない。ただ、川瀬さんが演じた男は「骨まで愛する」じゃないけど肉体同士で究極の愛、肉体そのものまで融合したいという感受性を持つんじゃないかな。動物として。だから女もそれに融合してしまいたいと思う。

まぁ、あれも一つの妄想だけどね。妄想じゃなきゃ、あれを現実生活でやったら犯罪者だよ(笑)。だから人間っていうのはそういうことまで考えるわけで、映画というのは非日常で、そうした映画があるからこそ、幸せな日常生活を送れるんじゃないのかな。こういう映画を観たら、ある人間は爽快感を持つかもしれないし、ストレス発散的な部分もあるからさ。
 
――現実には起こりえないけれど、頭の中では考えているようなことが映画の世界で現実になって、ストレスが発散されるということですか?

佐藤 そう。だから残酷な描写でもちょっと笑いが起こっちゃうような、そういう場面も生まれてしまう。俺は真面目に撮ってるんだけどね(笑)。
 
――次回作の構想はもう練られていますか?

佐藤 今回は、映画館がなくなっていくというこの時代に対して、「今撮らなければ」という危機感があって撮ったんだけど、どこが舞台になるかはそのときによって変わってしまうかもしれない。大きなテーマ性は変わらないし、「華魂」というキーワードがあるんだけど、俺が一番疑問なり危機感なりを感じた世界が舞台になるかもしれない。何かのきっかけで、この世界に刃をむけなきゃいけないという危機感が生まれるかもしれないし。日常的な空間だけじゃなくて、巨大な権力とか某国に向かう可能性もある。どこにでも華魂は咲くからね。
 
――これから『華魂 幻影』を観られる方にメッセージをお願いします。

この映画は他の映画館では観られないような狂気と愛に包まれた映画です。肩肘を張らずに目をそらさずに観てください。
 
 
※以上の原稿はメルマガ「映画の友よ」第53号に掲載されたものから、一部をカットした再編集版です。完全版原稿に興味のある方は、ぜひメルマガの方もお読みくだされば幸いです。
 
『華魂 幻影』公開中!
新宿ケイズシネマを皮切りに全国順次公開
http://www.hanadama-movie.com/

<取材・構成者プロフィール>

はないゆい
映画と音楽と美術をこよなく愛するインタビュアー。俳優、ミュージシャン、経営者インタビューの他、オーラ、チャクラなどスピリチュアルに関するコラムや執筆、月星座や天体のパワーを活かしたエネルギーワークを行う。婚活ヒーリングやお財布ヒーリングが人気。
 
 
 

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31「新しい日本映画を全部見ます」。一週間以上の期間、昼から夜まで公開が予定されている実写の劇映画はすべて見て、批評します。アニメやドキュメンタリー、レイトショーで上映される作品なども「これは」と思ったら見に行きます。キネマ旬報ベストテン、映画秘宝ベストテン、日本映画プロフェッショナル大賞の現役審査員であり、過去には映画芸術ベストテン、毎日コンクールドキュメンタリー部門、大藤信郎賞(アニメ映画)、サンダンス映画祭アジア部門日本選考、東京財団アニメ批評コンテスト等で審査員を務めてきた筆者が、日々追いかける映画について本音で配信。基準のよくわからない星取り表などではなく、その映画が何を求める人に必要とされているかを明快に示します。「この映画に関わった人と会いたい」「この人と映画の話をしたい!」と思ったら、無鉄砲に出かけていきます。普段から特撮やピンク映画の連載を持ち、趣味としても大好きなので、古今東西の特撮映画の醍醐味をひもとく連載『特撮黙示録1954-2014』や、クールな美女子に会いに行っちゃう『セクシー・ダイナマイト』等の記事も強引に展開させていきます。

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切通理作
1964年東京都生まれ。文化批評。編集者を経て1993年『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』で著作デビュー。批評集として『お前がセカイを殺したいなら』『ある朝、セカイは死んでいた』『情緒論~セカイをそのまま見るということ』で映画、コミック、音楽、文学、社会問題とジャンルをクロスオーバーした<セカイ>三部作を成す。『宮崎駿の<世界>』でサントリー学芸賞受賞。続いて『山田洋次の〈世界〉 幻風景を追って』を刊行。「キネマ旬報」「映画秘宝」「映画芸術」等に映画・テレビドラマ評や映画人への取材記事、「文学界」「群像」等に文芸批評を執筆。「朝日新聞」「毎日新聞」「日本経済新聞」「産経新聞」「週刊朝日」「週刊文春」「中央公論」などで時評・書評・コラムを執筆。特撮・アニメについての執筆も多く「東映ヒーローMAX」「ハイパーホビー」「特撮ニュータイプ」等で執筆。『地球はウルトラマンの星』『特撮黙示録』『ぼくの命を救ってくれなかったエヴァへ』等の著書・編著もある。

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