※高城未来研究所【Future Report】Vol.264(2016年7月8日発行)より
今週はモーリシャスにいます。
東アフリカのインド洋沖に浮かぶ小国は、先月突如として大きな岐路に立たされることになりました。
この国は英連邦の一員で、英国を通じてEUと大きなビジネスを行っていたのですが、国民投票により英国がEUから離脱したことにより、モーリシャスは大きな方向転換を強いられることになったのです。
まず、この国の住民の7割近くは、インド系です。
国土面積は東京都とほぼ同じで、いくつかの島がありますが、主島のモーリシャス島に人口130万人のうち95%以上が暮らしています。
歴史を振り返ると、1600年代はオランダ領、1700年代はフランス領、1800年代はイギリス領と、100年周期で宗主国が変わっており、1968年に英連邦王国の一員として独立を達成しました。
その後、イギリス植民地時代から続くサトウキビと紅茶の第一次産業から、独立後は繊維産業へとシフトすることに成功し、一人当たりのGDPでは、アフリカで第5位にまで大躍進。
考えてみれば、僕も「モーリシャス製のLevi'sコーデュロイ」を持っていたことがありました。
また、金融サービスも盛んで、いわゆるこの国はタックスヘイブンです。
なかでもインドとの関係が深いことから、モーリシャス人の会社からインド本国への投資リターンに関しては、基本的に課税されません。
それゆえ、ロンドン・シティに集められた資金がモーリシャス経由でインド本国に投資される「迂回投資」が大きなビジネスとなり、2000年代に海外からインドへ投資された半分近くが、モーリシャス経由となっていたのです。
しかし、繊維産業もインド投資も、ロンドンを中心に取りまとめられており、契約は英国ポンドだったために、先月、英国が欧州から離脱後ポンドが著しく下落し、また、欧州からロンドン経由で発注されていた繊維ビジネスも、次々と見直しが行われるようになって、財政危機が囁かれるようになりました。
この英国が欧州から離脱する可能性は数年前から大きな問題になっており、英国がEUから離脱した時のことを考え、モーリシャスは英国から離脱する可能性を検討するようになっていたのです。
また、今年の5月には、インドとモーリシャスの両政府が締結した既存の二重課税回避のための租税条約に免税措置を終わらす与件が入っており、租税メリットに陰りが見え始め、モーリシャスとしては、脱インドも同時に考えなくてはならなくなりました。
そこで、次の中心的ビジネスが、観光業です。
英国および欧州、その上インドとまで関係性が見直されたモーリシャスが、この数年で急接近したのは中国でした。
2013年秋、中国とモーリシャスはビザ相互免除協定を交わし、この2年半で中国人が急増。
現在、年率200%以上の勢いで、中国人観光客がこの国を訪れています。
実は、今年初頭の時点で、一般の中国人旅行者に対してビザ免除措置を取っているのはバハマ、フィジー、グレナダ、モーリシャス、セーシェル、サンマリノの6カ国だけしかありませんでした。
それゆえ、中国人なら誰でも自由に入国できるこれらの国々、中でも直行便が飛んでいるモーリシャスに中国人観光客が殺到。
今回、僕も北京経由でやってきましたが、オフシーズンなのに機内はパンパンでした。
事実、有名観光地も高級リゾートも中国人だらけで、いまや国家をあげて服装等の「マナー」注意マニュアルを配布しているのが、モーリシャスの現状です。
この状況は、もし、モーリシャスが、意図してか偶然かわかりませんが、100年おきに宗主国を変えるとしたら、独立も含め2シーズン続いていたイギリスを見限って、2000年代から宗主国を中国に変えたとも僕には見えます。
現在、この国の人たちは、英語、フランス語、ヒンドゥー語、そしてクレオールを話しますが、おそらく半世紀もしないうちに、中国語話者が国民の半数近くになるでしょう。
なぜなら、ほとんどのホテルやレストランのメニューが、すでにそうなっているからです。
100年後には、クレオールと中国が混じった独自の東アフリカ言語が、このあたりを席巻することになるかもしれません。
もしかしたら、早ければ25年後ぐらいに。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.264 2016年7月8日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
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