高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

ドーパミン中毒からの脱却をめざして

高城未来研究所【Future Report】Vol.620(5月5日)より

今週は、東京にいます。 

薫風香る(Sweetest days of May)日本ですが、中南米での劣悪な食事が続いたため、次の渡航までの数週間に食事を選べる東京で立て直ししなければなりません。

一見、デトックスに励み、正しい食事をする事がなにより大切のように思えますが、実はそれ以前に脳内を再構築する必要があります。
と申しますのも、劣悪な食事によって神経伝達物質のコントロールが甘くなってしまっているのを自覚しているからです。
癖になってしまったパターンを断ち切らねばなりません。

いままでも何度かお伝えしておりますように、荒れた食生活による糖中毒やついつい見てしまうソーシャル・メディア、過度な飲酒にギャンブル、そしてアルゴリズムによる課金ゲームに上がり下りの激しい仮想通貨やFXまで、これらは現代ビジネスの基本中の基本「人をドーパミン中毒にさせる」ことが本質にあります。

本来、人間は動物と違い、目の前の餌や美味しい話に飛びつかない「理性」を兼ね備える生き物です。
しかし、ちょっと気を揺るしてしまい、脳の側坐核が放出されたドーパミンを受け取る癖がついてしまうと(中南米で荒れた食事にかまけていると)、本来はブレーキの役割を果たすGABAを抑制します。
このパターンが海馬に記憶され、次に同じようなパターンを脳が少しでも認識すれば、いち早くドーパミンを放出するようになり、もっともっとと際限なく求めるようになってしまいます。
この結果、癖がついてしまったドーパミンが枯渇してしまうと、疲労や倦怠感に襲われ、解消のためにさらにドーパミンを求め興奮状態に陥ります。
その後、攻撃的になり、なにかの依存状態になって、冷静な判断が出来なくなってしまうのです。

この依存は、次のみっつに集約されます。
それが、物質的依存、プロセス的依存、人間関係的依存です。

物質的依存は糖をはじめ、合法非合法の薬物、酒などで、プロセス的依存はスマートフォンを通じた課金ゲームやパチンコ、FXに代表される賭け事全般に見られます。
そして、人間関係的依存は、恋愛やソーシャルだけでなく、過度な子供の教育(期待)なども含まれます。

これらに依存してしまうと、常にドーパミンを過剰に求めるようになり、結果、なにをしても満足できないことから不安症に陥り、妄想、時間と記憶の喪失、やがて幻覚や鬱などへと進むのです。

つまり、現代社会を上手に楽しく生きるコツは、ドーパミン・ビジネスのカモにならないかどうか(距離を置けるかどうか)にかかっていると言っても過言ではありません。
そこでひとつの手段として、計画を立てることで自分と向き合って冷静になるという「ドーパミンからの脱却法」を適宜オススメしている次第です。

しかし、「計画を立てられません!」というご質問を毎週のように頂戴します。
理由は、明らか。
前述したように目の前の餌や美味しい話に飛びついてばかりいて、脳がその癖を忘れられないからに他なりません。
また、ストレスから安易に逃げるためにも、ドーパミンを求める人が絶えません。

このようなドーパミン中毒がもう少し進むと、ご自身では気が付かないかもしれませんが、時間と記憶の喪失がはじまり、冷静な判断はもとより、報告することもままならなくなってしまいます。
なにしろ、目の前の餌を食べてドーパミンが出てしまえば、あとはどうでもよくなるからです。
そして、不安、妄想、鬱へと進みますが、当人に自覚はありません。

僕が様々な事例を見る限り、また自己の経験からも激しいドーパミン中毒から脱するのに2年はかかります。
この間、次々と襲ってくるストレスと戦いながら、糖を落とし、「マイクロ欲望」やそれをもたらす人間関係を整理し、読書や研究に勤しみながら、自らの使命を真摯に考える。
これを、「自分と向き合う」とよくお話しします。

結果、ある時から物事を俯瞰的に見られるようになって、まともな計画を立てられるようになるのです。
これが本当の意味でのスタートアップ!

さて、GAFAMをはじめとする大企業があなたの脳に仕組んだ「ドーパミン奴隷装置」の餌食になって一生を過ごすのか?
それとも、そこから脱却して自由を得るのか?

あなたの人生を幸せにするかどうかは、まだ今ならあなたが決められるのです、と考え、あらゆる刺激から距離を置く今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.620 5月5日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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