※高城未来研究所【Future Report】Vol.265(2016年7月15日発行)より
今週はマダガスカルにいます。
東アフリカのモザンビーク海峡とインド洋に挟まれた島国は、長さ約1,570km、最大幅約580kmで世界第4位の大きさを誇る島で、日本の1.6倍も国土があり、東西南北によって気候も人種も異なっています。
島の北から南にかけて大きな山脈があり、東は一年中雨が降りますが、東から離れれば離れるほど雨が少なくなり、特に南は雨が少なく年間降雨量は東の10分の1程度しかありません。
また、西はアフリカ大陸に近いサバンナの乾燥地帯で、北はより赤道に近くなりますので、熱帯気候に属します。
島国で、これほど気候がバラバラな国も珍しいと思います。
東は雨が多いだけあって、かつては木が多い「緑の国」とも言われていましたが、近年伐採率が80%を超え、とても「緑の国」と呼ばれるような場所ではなくなってしまいました。
というのも、水道に限らず、国家全般に電気やガスインフラが整備されていませんので、切った木を炭に使って生活しているからです。
また、電気は都市部の一部のみ、ガスは都市部でもプロパンしかありません。
最近は、空港に迎えに来ている人たちをみると、その国や街のことがなんとなくわかるようになりまして、意外なことに、首都アンタナリリボに暮らす人々は、マレーシアのボルネオを祖先に持つアジア系が多く、ここがアフリカとは思えません。
それゆえ、マダガスカルは「アフリカに最も近いアジア」と呼ばれており、一方、西や南の行けば行くほどアフリカ系が増え、北部はアラブ系も多く、結果、民族的にも国家としてまとまりがなくなってしまっています。
これが、発展が大幅に遅れ、世界でも下から数えられる最貧国のグループから抜け出せない理由だと言われています。
地元の人たちと話すと、その理由を英国が宗主国で英国式社会システムを取り入れた国は発展するが、フランスが宗主国の国々は、どこも発展せず、搾取だけして、あとはほったらかしだ、と言います。
確かにこの観点からみれば、そのように見えなくもありませんが、カリブ海や南太平洋のフランス系の島国を見ると、決してそうとも思えません。
それより、この話からわかるように、問題点を他人のせいにしていることが本質的な問題のように感じました。
東の人たちは、、、南の人たちは、、、とお互い牽制しあっており、一丸となって国際社会に参加する強い意志のようなものを感じません。
それゆえ、ここには世界がグローバル化する以前の懐かしい70年代のような雰囲気が残っています。
かつては、東西牽制しあうことが、善の時代もありました。
さて、そんな開発が遅れているマダガスカルの電気のない村でしばらく暮らしていましたが、週に一度は本メールマガジンの発行もありますので、電気のある、そして「たまに」インターネットがつながる村まで出てくる必要があります。
この「たまに」の意は、早い日ならば40kbps程度の速度、遅い日にはまったくつながらないわけで、Webサイトを見ることもSlackも不可能、1Mの添付がメールにあったら、それ以降のすべてのメールのダウンロードができなくなってしまいます。
この「たまに」しかメールなどが見れないと、はじめは困ったと感じますが、そのうちどうもよくなってきます。
実際、即返しなければならないことは、ほとんどないわけでして、でも、気がつくと現代社会に生きていると、意識せずに相互に即返を求めるようになっていくものです。
しかし、ここではインターネットどころか電気もないわけですから、考えても努力しても仕方がなく、段々どうでもよくなっていきます。
これが「圏外力」です。
ですが、メールサーバーの構造上、メールの送信はできますので、こちらから一方的にメールを送りつけることは可能なんです。
実に都合いいですよね、圏外は。
この夏は、もう少し「圏外力」を楽しみたいと思います。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.265 2016年7月15日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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