名越康文
@nakoshiyasufumi

名越康文メールマガジン 生きるための対話(dialogue)より

「意識高い系」が「ホンモノ」に脱皮するために必要なこと

※名越康文メールマガジン 生きるための対話より




ここ数年、一般でも使われるようになった「意識高い系」という言葉。スキーム、エビデンスなどのビジネス英語を使いたがったり、セミナーへ参加して成長を実感したことをSNSにアップする人たちのことを指しますが、実態が伴わないことが少なくないため所謂「イタイ人」として揶揄されることが最近では多いように見受けられます。しかしなかには本当に意識が高く仕事で実績を上げたりスキルアップする人たちもいます。身になる人とポーズだけの人にはどのような違いがあると思われるでしょうか(編集部より)

違いは100日後に出る

やる気には、内発的なやる気と、集注欲求に基づくやる気の2つがあります。「集注欲求」というのは僕が心理学に応用した造語なのですが、「他人からの関心を引き寄せようとする欲求」と理解してください。赤ん坊や幼児は、泣き叫ぶことによって母親の関心を得ようとしますよね。これが集注欲求の原型です。

世間で揶揄される、いわゆる「意識高い系」というのは、集注欲求によるやる気が前面に出ている人だということが言えます。簡単に言えば、意識高い系の人は内発的なやる気に乏しく、「やる気があるように見せたい」だけの人だということができるでしょう。

実は、本当にやる気がある人と、やる気があるように見せたいだけの人は、簡単に区別することができます。両者の違いは「行動の変化」に現れます。

人間は習慣のなかで生きています。「やるぞ!」と口にすることは誰にもできますが、行動を変える人は滅多にいない。集注欲求によるやる気で動いている「意識高い系」の人が、実際に自分の行動を継続的に変えることはほとんどありません。

何かを口にした「100日後」に(場合によっては2週間後に)、その人の行動が変わっているかどうか。それを見れば、その人が内発的なやる気で動いているか、集注欲求で動いているか、ということは簡単に見分けがつくでしょう。

 

2つのやる気は同居する

内発的なやる気と、集注欲求によるやる気。実は、この2種類のやる気というのは多くの場合、一人の人間の中に同居しています。内発的なやる気だけ、あるいは集注欲求によるやる気だけの人というのは実際にはいない。ということは「意識高い系の人」はいつでも、「本当に行動する人」に変わる可能性を秘めている、ということです。

例えば「自分が尊敬している人から認められたい」という動機は、大きく分ければ「集注欲求によるやる気」ということになります。でも、「ほめられたい」と思って実際に行動をしているうちに、それがだんだんと内発的なやる気に転化していくことは少なくありません。

「意識高い系」の人の行動は、しばしば周囲に「うざい」「痛い」と感じさせてしまいます。それは、実際に行動しないのに、自己表現が稚拙かつ過大だからです。でも、長い期間でみれば、そういう人がだんだんと「内発的な動機」を育て、「口だけ」ではなく「行動」の人に変わっていくことは少なくない。

だから僕は、「意識高い系でも別にいいじゃないか」と思っています。若者が社会に出ると必ず、「驚くほどすごい人」に出会います。それを見て、自分も同じようになりたいと思う。その人に憧れて、言葉遣いや行動や服装を真似たりする。これはまさしく「意識高い系」そのものです。でも、人が成熟していく過程でその段階を踏むのは、むしろ当然ではないかと思うんです。

 

良い師を見つけるということ

若い頃というのは、多くの人が強い集注欲求を持ち、それをいわばエネルギー源として行動しています。誰かに認められたい、ほめられたいという思いは、若者を行動に駆り立てる「燃料庫」のようなものなのです。

しかし、継続的に行動を変えていこうと思うのであれば、人はいつか、それを内発的な「やる気」へと転化させていく必要があります。そして、その転化を引き起こしてくれるのは、優れた「師」の役割だと僕は考えています。

世の中には、自分に付き従ってくる人を、いつまでも自分の「子分」として従えようとする人がたくさんいます。耳障りの良いイエスマンを手元に置き続ける人にとっては、周囲の人間がいつまでも集注欲求に囚われているほうが、都合がいいのです。そういう人のそばにいると、その人にほめられること、その人に評価されることばかりを求める人間から脱皮することができなくなってしまう。

集注欲求によるやる気が、内発的なやる気へと転換していくというのは、それまで「師」に依存していた弟子が自立し、師から精神的に自立してゆくということでもあります。自分に付き従う人の自立を心から願える「師」というのは、それほど多くはありません。そういう意味で師は先生や上司や先輩でもあり同時に、親しい友人でもあるのです。

「いかにして良き師を見つけるか」ということ。それこそが、「意識高い系」から脱皮し、本当に社会で活躍できる人間に成長できるかどうかの分かれ目となるのです。

 

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名越康文
1960年、奈良県生まれ。精神科医。相愛大学、京都精華大学客員教授。 専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、1999年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。 著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSC新書、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『質問です。』(飛鳥新社、2013)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。 名越康文公式サイト「精神科医・名越康文の研究室」 http://nakoshiyasufumi.net/

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