高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

宗教や民主主義などのあらゆるイデオロギーを超えて消費主義が蔓延する時代

高城未来研究所【Future Report】Vol.288(2016年12月23日発行)より


今週は、ドバイにいます。

日本でイルミネーションが輝く年末のこの時期。
イスラム教徒が多い中東では、公共の場でクリスマスを祝うことは、なによりもご法度です。

中東では古くからイスラム教を信仰し、十字軍の遠征などキリスト教と対立してきた歴史的経緯がありまして、サウジアラビアではクリスマスを祝うこともバレンタインデーも絶対的に禁止です。

また、キリスト生誕の地イスラエルも、国民の大半がユダヤ人ですので、クリスマスを祝うことはありません。
その上、ユダヤ暦の新年は9月か10月で、また、イスラム暦においても1月1日は新年の始まりではありませんので、12月も1月も特別な月ではないのです。

しかし、ドバイは違います。
モールには大々的なクリスマスデコレーションとイルミネーションが施され、レストランでは特別ディナーが提供されています。
ここ数年でドバイは、街角のカフェでWHAM!の「ラストクリスマス」が流るほど、ベタベタさが鼻に付くクリスマス感が高い街へと変貌しました。

確かにドバイは、クリスチャンの欧米人が多い街なのかもしれませんが、見る限りには敬虔な衣装に身を包んだイスラム教徒が、巨大なクリスマスツリーの前でセルフィーに興じ、ここぞとばかりに楽しんでいる様は、少しだけ異様に映ります。
これをグローバリゼーションや「文明の融解」と言い切ってしまうこともできますが、もしかしたら、宗教や民主主義などのあらゆるイデオロギーを超えて、資本主義というか消費主義が世界中に蔓延していることの一遍のように感じるのです。

必要以上なモノを、お互い無理に笑いながら買う行為は、キリスト教の教えにはありません。
そう考えれば、ドバイのクリスマスツリーは、異教徒の祭典ではなく、ただのショッピングシーズンのデコレーションにしか過ぎないのです。
ですので、イスラム教徒が「セール!」に心ときめいても、なんら問題はない、と考えることにしますが、もし、世界が突如逆回転をはじめてしまったら、消費を中心にすべてが動くドバイの存在意義と失った宗教性は、大きく問われることになるでしょう。

ちなみに、日本にはキリスト教徒はおよそ300万人しかおらず、人口比率では世界でキリスト教がまったく普及しなかた国のひとつで、世界でもっとも「マーケティングに毒された国」と、クリスマスにKFCに並ぶ写真を見ながら(この記事)、BBCのキャスターが怪訝そうな顔をしてテレビで話していたのを、偶然見ました。

キリスト教国の人々は、ドバイのモールのクリスマスツリーや、日本のKFCに並ぶ人たちを、どのように思っているのでしょうか?

ハッピーホリデー!
みなさま、どうか良い消費を。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.288 2016年12月23日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. マクロビオティックのはじめかた
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

詳細・ご購読はこちらから
http://yakan-hiko.com/takashiro.html

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

その他の記事

もう少し、国内事業者を平等に or 利する法制はできないのだろうか(やまもといちろう)
「ルールを捨てる」とき、人は成長する 世界のトップビジネスパーソンが注目する「システマ」の効果(北川貴英)
主役のいない世界ーーCESの変遷が示すこと(本田雅一)
録音がそのままテキストに?!「Recoco」はライターの福音となるか(西田宗千佳)
人工知能の時代、働く人が考えるべきこと(やまもといちろう)
実態は魑魅魍魎、美味しいと正しいの間に揺れる飲食業界(高城剛)
残暑の中で日本だけに定着したマスク文化を考える(高城剛)
『犯る男』朝倉ことみさん、山内大輔監督インタビュー 「ピンク映画ってエロだけじゃない、こんなすごいんだ」(切通理作)
スマホVRの本命「Gear VR」製品版を試す(西田宗千佳)
米国政府の保護主義政策。実は数年来の不均衡揺り戻し(本田雅一)
辻元清美女史とリベラルの復権その他で対談をしたんですが、話が噛み合いませんでした(やまもといちろう)
戸田真琴の青春を黒い雨で染める~『コクウ』(『ほくろの女は夜濡れる』)監督榊英雄&主演戸田真琴ロング座談会(切通理作)
トレンドマイクロ社はどうなってしまったのか?(やまもといちろう)
パラリンピック「中止」の現実味と、五輪中止運動のこぶしの下ろし先(やまもといちろう)
週刊金融日記 第280号 <Instagramで女子と自然とつながる方法 〜旅行編、米朝核戦争に備えビットコインを保有するべきか他>(藤沢数希)
高城剛のメールマガジン
「高城未来研究所「Future Report」」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(第1~4金曜日配信予定。12月,1月は3回になる可能性あり)

ページのトップへ